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比するものがないこのラップは何なんだ!ファルコはひときわ輝き、そして逝った...(オススメMV #21)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の21回目です。(連載のマガジンはこちら)

前回に続いて昔の洋楽黄金期からオススメMVを紹介します。
今回は早逝したアーティスト、ファルコ(Falco)の、1980年代に一世を風靡したMVと、私のお気に入りのMVの2つです。

まず最初のMVは、一世を風靡したファルコの「Rock Me Amadeus」です。

「アマデウス」の大合唱が印象的に残るMVです。
映像的にはちょっと古さもありますが、クラッシックの大作曲家を大胆にアレンジして扱ったMVって他にはないんじゃないでしょうか。
それぐらい斬新、かつ新鮮なMVです。

ファルコは、オーストリアのアーティストというかシンガーソングライターで、1981年にデビューし、1985年リリースの3rdアルバム「Falco 3(邦題:ロック・ミー・アマデウス)」で世界的な大ヒットを飛ばします。
その3rdアルバムに含まれているこのシングル「Rock Me Amadeus」がUK・USチャート共に1位となるのですが、これはドイツ語圏の楽曲ではFalcoのみではないかと思います。(それ以外だとネーナの「99 Luftballons(邦題:ロックバルーンは99)」のUS2位が最高と思うので...)

また、「Rock Me Amadeus」がリリースされた同じ年の1985年に映画「アマデウス」が封切られ大ヒットとなりました。(この映画の「アマデウス」もオススメです!)
「Rock Me Amadeus」の大ヒットには、この映画との相乗効果もあったのではないかと考えられます。

この「Rock Me Amadeus」との出会いは、小林克也さんがMCをされていた旧ベストヒットUSAです。
「このMV、この楽曲、なんなんだ!!!」と驚き、レコードを買いに走った記憶があります。
私のいつものパターンですが、イイと思った楽曲はその源流を遡ります。
2nd、1stと次々アルバムを購入し、最終的に「やっぱり3rdアルバムが一番いいな」となりました。

なお、Run-DMCの大ヒットアルバム「Raising Hell」のリリースが1986年なので、ファルコはその1年前に「Falco 3」でラップとロックの融合を世に広く提示したことになります。
こう書くと、「いやいや、このアーティストが先だ!」などの意見をいただきそうですが、新しい潮流は不思議と同時多発的に発生することが多く、要はファルコはラップを世に広めた中の一人だ、ということです。

私的には、1980年代後半から盛り上がったHIPHOPブームにはイマイチ乗り切れず、HIPHOPになじんだのは後年なのですが、最初にファルコのラップに出会えてよかったと思っています。
(ギャングスタなどUSのHIPHOPはちょっとコワイという先入観があり、なかなか入っていきづらかったのが実状です)

ファルコのラップについては後ほど詳しく書くので割愛させてもらうとして、MVの映像面について解説しましょう。

このMVは大きく3つのパターンに分かれます。
ひとつ目は、中世の貴族の中にスーツ姿のファルコが歌う映像。
ふたつ目は、現代のライダーたちの中で、中世の(モーツァルトの姿を模した)ファルコが歌う映像。
みっつ目は、中世の貴族と現代のライダーが混在する中で、スーツ姿のファルコが歌う映像。
これは映像に変化を持たせ印象付けるためでもありますが、音楽の持つ普遍性を表していると考えています。
モーツァルトとは音楽そのものを意味しており、素晴らしい音楽は時代を超え、階級や思想を超えて輝き続ける。そして時代や階級や思想を超えてつながりを生むことができる...と表現していると考えられます。

それにせよ、このMVの映像の画質は悪すぎます。
特にオープニングはテープノイズが乗りまくっている映像で、どうにかならないものかと思います。
しかも、そのオープニングが無駄に長く、25秒も無音が続きます。
楽曲が始まる前に無音の時間があったほうが良いことは認めますが、それにせよ25秒は長すぎます。(MTV等で放映されているMVは冒頭の無音時間がほとんどなく、いくつかのバージョンがあるのかもしれません)
このMVで私が唯一イマイチな点はこれぐらいで、それ以外はすばらしく、特にファルコの登場の仕方(最初も途中も)が最高です。

そして、このMVは終わり方がメチャクチャ素晴らしく、もう脱帽です。
ファルコの顔が画面にアップで映り、手を合わせながらこちらを向いて「アマデウス」と唄ったあと、最後にちょっと微笑んでMVが終わります。
数あるオススメMVの中でも、このMVの終わり方が最もいいのではないかとも思えます。

続いて、2つ目のMVは私のオススメ、ファルコの「Vienna Calling」です。

オシャレなMVですよね。
「Rock Me Amadeus」のMVと同様、時代を感じさせる古さがあり、ちょっとチャッチイ部分もありますが、映像センスが抜群です。

このセンスの良さは楽曲も同様、というか映像以上です。
何よりラップが素晴らしく、このラップを1980年代半ばに完成させていることが驚きです。
今でも十分通用するというか、今でも類するものがない独自かつ完成度の高いラップで、リリースすれば驚愕と称賛をもって迎えられるでしょう。
それぐらいファルコのラップは素晴らしく、中でもこの「Vienna Calling」のラップの出来は秀逸です。

ドイツ語と英語が混じり、それにより韻の踏み方も英語だけのラップとは違う語感とリズム感を生んでおり、まさしく「唯一無二」です。
今では複数言語でのラップはいくつかありますが、この完成度のラップは(私が聴いた中では)ファルコだけではないかと考えています。
(前回「唯一無二」をテーマにお送りしましたが、実はそこに入れるかどうか迷った結果、ファルコは単独回で紹介しよう!となり、今回の紹介になっています)

映像についても解説しましょう。
この「Vienna Calling」のMVは楽曲だけではなく映像も素晴らしく、様々な工夫が見て取れます。

今ではまずやらないような映像表現、例えば様々な電話で電話を掛ける映像を繰り返し表示させる、というような分かりやすい表現も今では逆に新鮮に映ります。
そして、色使いにも工夫が見えます。
ファルコは赤のシャツを着ていますが、他に赤の衣装を着ている出演者はおらず、ファルコを際立たせています。
大勢のダンスシーン以外の登場人物は女性がメインで、その点でもファイルを際立たせています。

また、このMVで私が好きなのは、ファルコの顔芸です。
MVの冒頭部分、電話ボックスから出てきたファルコのアップのシーンがあるのですが、様々な表情のファルコを観ることができます。
結構コミカルなのですが、冒頭に差し込まれていることでMV全体の雰囲気作りに役立っています。
しかし、この顔芸は普通のイケメンアーティストはまずやらないと思うので、かっこいい男性がコミカルに振舞える...というところもファルコの魅力でもあります。

この唯一無二のラップを持ち、コミカルを演じることができるファルコは、もうこの世には存在しません。
40歳というまだまだこれからという年齢で交通事故で亡くなられました。
しかし、ファルコの作品は今もなお新鮮で色あせず生き続けています。
ぜひ多くの方に観ていただき、楽しんでもらえればと思っています。

さて、今回はファルコのオススメMVを2つ紹介しました。
まだ見られたことのない方はぜひ観てみてください。
「このラップが35年前??」と驚くこと確実です。

ではまた次回に。

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