Viva La Vidaには余計なものは不要だ!コールドプレイの名作MVは、映像の向こうに人生が見える(オススメMV #49)
こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の49回目です。(連載のマガジンはこちら)
前回コールドプレイのSF系MVを紹介しましたが、どうしても紹介したい素晴らしいMVがあるので、2回連続となりますが今回もコールドプレイのMVを中心に紹介させてもらいます。
素晴らしい楽曲、特に傑作と呼ばれる楽曲のMVというのは、楽曲のイメージが強いがゆえに「ちょっと違うな」や場合によっては「楽曲の良さが台無しだ」ということも往々にして起こります。
そのほとんどがMVの映像が決して悪いわけではなく、バランスの問題がほとんどです。
そんな中、傑作と呼んで間違いない楽曲をベースにしつつ、まごうことなき名作MVとして仕上げられた作品があります。
それがこの、コールドプレイの「Viva La Vida」です。どうぞ!
この映像、このMVはなんでしょうか?
絵画のような趣があり、重厚感の中にも躍動感があり、感動を覚えます。
素晴らしい楽曲を打ち消すことなく、さらにその世界観を押し広げ際立たせています。
こんなMV、なかなかありません!
コールドプレイの略歴は前のSF系MVの回をご覧いただくとして、この「Viva La Vida」は2008年にリリースされた4thアルバム「Viva la Vida or Death and All His Friends」に収録されているコールドプレイを代表する楽曲です。
楽曲の邦題は「美しき生命」ですが、これはチョット変な邦題です。
本当の意味は「人生万歳」ですが、多分ゴロが悪いというかカッコよくないので、「美しき生命」としたんでしょう。
しかし、歌詞を見ると、凋落した王様が過去の栄光を振り返るような内容となっています。
それを考えると、やっぱり「美しき生命」ではなく「人生万歳」のほうが正しい意図を伝えることができるかと思います。
なお、凋落した王様は決して落胆しているのではなく、自身が存在した意味をある種誇らしげに思っているかと考えられます。(これは、MVの最後の表現にもつながっているので、後ほど解説します)
さて、MVの話に移りましょう。
最初にMVを見てしまうとMVが素晴らしいかのように錯覚しますが、ぜひ楽曲だけを聴いてみてください。
「Viva La Vida」が傑作と呼べる素晴らしい楽曲であることが体感できます。
そのうえでMVを観てもらえれば、この素晴らしい楽曲をこれほどまでにうまく活かしてMV化したな...と感心せずにはおれないでしょう。
このMVの監督は、ハイプ・ウィリアムズ(Hype Williams)という売れっ子であり一流のMV監督が務めています。
ハイプ・ウィリアムズは、てんこ盛りで押し出しが強い映像のMVが得意で、楽曲のジャンルとしてはHIPHOP系を多く手掛けています。
「Viva La Vida」のMVのクレジットを見て監督がハイプ・ウィリアムズと知ったとき、2つの驚きがありました。
1つは、彼の作風とは全く違う作品であることの驚き。
もう1つは、彼の作風をわかっていながら、よく彼にオファーしたな...という驚きです。
しかし、ハイプ・ウィリアムズに制作を依頼したことが間違いでなかったことは、このMVを観ればわかります。
しかし、本当にこのMVはよくできています。
素晴らしい楽曲に対して、モノや光や色などを加えることで映像を強くしバランスをとるのではなく、あえてそれらを加えずバンドメンバーと楽器のみとし、映像効果も油絵風の映像にはしていますが抑えた色調と光量となっています。
視聴者はその抑えた映像の向こう側に自身それぞれの人生模様を重ねて観るのではないでしょうか。
そして、最後は各メンバーが崩れて消えてゆく様が映し出されます。
しかし、その時のメンバーの表情は悲しんではおらず、淡々としています。
形あるもはいつかは崩れ去る。命あるものはいつかは死を迎える。
だが、死は悲しむことではなく、存在したことそのものに意味があり、また何かを残すことができればなお多くの意味がある...と語っているようです。
ちなみに、「Viva La Vida」にはもう1つ別バージョンのMVが存在します。
それがこちら、アントン・コービン監督版の「Viva La Vida」です。
アントン・コービンは、前のSF系MVの回で紹介した「Talk」のMVの監督でもありましたが、なぜこんなヘンテコなMVを作ったのでしょうか?
実は、それには2つの理由があります。
理由を説明する前に、もう1つのMVをご覧ください。
デペッシュ・モードの「Enjoy The Silence」です。
アントン・コービン監督版の「Viva La Vida」のシチュエーションと同じですよね。
実はコールドプレイは複数のアーティストに影響を受けたと公言しており、その中の代表がデペッシュ・モードです。
「Viva La Vida」の別バージョンのMVを作ったのは、コールドプレイが影響を受けたデペッシュ・モードに敬意を表するため、というのが1つ目の理由です。
2つ目の理由は、デペッシュ・モードの「Enjoy The Silence」のMVの監督もアントン・コービンで、コールドプレイから依頼を受け自身でリメイクした...ということです。
アーティストと映像作家が複雑に絡み合いつながっていく...不思議な縁というか広がりを感じます。
なお、デペッシュ・モードは日本での人気はイマイチなのですが、素晴らしいアーティストであり優れたMVもたくさんありますので、また紹介できればと考えています。
さて、今回のMVはいかがでしたでしょうか。
コールドプレイの「Viva La Vida」は、まごうことなき名作MVです。
ご覧になっていない方がおられたら、まずはご覧ください。
その映像の向こうに、皆さんの人生を見ることができるかもしれません。
ではまた次回に。
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