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モノクロの先には何が見える?ロイクソップ&ロビンの強烈コラボに色彩は不要だ!(オススメMV #31)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の31回目です。(連載のマガジンはこちら)

前々回にスティーヴアオキとラヴフォックスのコラボを紹介しましたが、読んでいただいた方はおられるでしょうか。
このコンビは北米&ブラジルのちょっとヤンチャな二人組でしたが、遠く離れた北欧の地にも強烈なコンビが存在します。
それは、ロイクソップとロビンです。

まずは、このMVをご覧ください。
ロイクソップ&ロビンの「Do It Again」です。

まず、名作映画を思わせる本格的かつ美しい映像に驚かされます。
しかし、それを上回るロイクソップとロビンの力強い楽曲が、この映像がMVであることを明確に意識させてくれます。

これだけ映像が強いにもかかわらずMVとして成立しているのは、楽曲の強さがあってこそですが、映像自体もそれを狙って作られているからです。

MVの説明の前に、簡単にアーティストの紹介をしましょう。
ロイクソップ(Röyksopp)は、以前に単調なMV紹介の回でも登場しましたが、エレクトロミュージックを手掛けるノルウェーのアーティストで、1998年結成ですので今や大御所です。
日本でのなじみはあまりありませんが、世界的な知名度は高く、EDMが台頭する以前よりエレクトロダンスミュージックを手掛けている中のひと組みでもあります。
かたやロビン(Robyn)は、同じ北欧スウェーデンのシンガーソングライターで、1994年デビューとこちらも歴が長いアーティストです。
ロイクソップとロビンはこの楽曲がリリースされた2014年以前にも何度か組んでおり、よほど相性が良かったのか「Röyksopp&Robyn」名義でこの楽曲が収録されているEP「Do It Again」をリリースしました。

アーティスト紹介はこれぐらいにして、肝心なMVの解説にまいりましょう。

強い映像にもかかわらずMVとして成立しているのは、楽曲の強さだけでなく、映像自体がそれを狙って作られているからです。
まずモノクロとすることで映像の印象付けを弱くしつつ、逆に重厚感を持たせ、同様に重厚な楽曲とうまくシンクロし、楽曲を引き立てています。
しかし、映像の工夫はそんな単純なものだけではありません。

一見映画のように見えますが、その場その場では意味を持っているような映像ではあるものの、最後まで見ても「結局、どんなストーリーなの?」と分からないまま終わります。
しかし、これでいいのです。
もし、分かりやすく明確なストーリーがあったなら、これだけ美しくしっかり作りこんである映像ゆえに視聴者は映像に引き込まれ、意識は完全に映像に行ってしまいます。
これでは完全に「映画」ですよね。
しかし、全体でのストーリーを薄くし、映像に引き込まれながらもギリギリのところで楽曲に引き戻すことができています。
これは、途中にロビンの映像が差し込まれることでも見て取れます。
ロビンが映ることで楽曲に引き戻されるのです。

再度最初から観てみてください。
まず、イントロの部分では美しい映像に心をつかまれ、そのあと様々な演者による物語風の映像にどんどん引き込まれます。
しかし、ロビンの映像が映し出されるとともに楽曲が強く押し出され、この映像がMVであることを意識づけられ、楽曲に意識が移ります。
そしてまた映像に引き込まれているとロビンが画面に映り強い楽曲に引き戻されるという繰り返しです。
そして、場面間でのストーリー性が明確でないために必要以上に映像に引き込まれず、容易に楽曲のほうに引き戻される。
まるで楽曲と映像の両方に交互に引っ張り上げながら空中に舞い上がり昇天するかのような体験です。

たまに逆のパターンのMVがあります。
楽曲と映像がうまくバランスを取って独自の世界観を醸成しているのに、その楽曲が使われている映画の映像が途中で何度か差し込まれているようなMVです。
映画の映像が差し込まれるたびにせっかく醸成された独自の世界から弾き飛ばされ、冷めてしまいます。
制作側と出資者側のパワーバランスもあるのでしょうが、これではマイナス効果以外の何物でもありません。
やめてもらいたいものです。

話がそれてしまいましたが、元に戻しましょう。
ロイクソップとロビンにはもうひとつモノクロの秀逸なMVがあります。
それが、この「Monument」です。

強烈なインパクトのあるライブ映像です。
しかし、こちらのMVも強い映像にもかかわらず楽曲が全く負けておらず、見終わってすぐ再度見たくなるほどの中毒性のあるMVとなっています。

まず、ロイクソップとロビンの楽曲が素晴らしすぎます。
重厚でありつつ華やかさと艶もあり、なかなかこんな楽曲ありません。
そして、映像はライブおよび移動やリハーサルの風景などを組み合わせたドキュメンタリーともいえる内容ですが、ライブ感もありつつ、独自の映像作品としても仕上がっており、これまたこんな映像なかなかありません。

ライブ映像を中心にして、リハーサルや移動途中の映像を組み合わせたMVは多々ありますが、このMVでは単なるライブ映像ではなく、それが分解、再構成され、独自の映像作品として(かつ、楽曲を引き立てるMVのための映像作品として)仕上がっている...という点がスゴイところです。

皆さん、キュービズムって知っていますか?
ピカソらによって取り組まれた絵画の手法ですが、ひとつの物体を多方向から見た映像に分解し再構成して二次元の絵の中に収める手法です。

このMVは、それをライブ映像を題材にMVとして仕上げています。
つまり、ライブおよびそのプロセスの映像を分解し、エフェクトを掛けたうえで楽曲に合わせて再構成して作り上げた、ひとつの新たな映像作品となっています。

ちなみに、この「Monument」のMVは、アルバム「The Inevitable End」に収録されているほうの楽曲のMVとなっています。

EP「Do It Again」に収録されているほうの「Monument」には別のMVがあり、それもおまけで紹介しましょう。

これまたお金がかかってそうな映像ですよね。
SF映画ばりの映像で、大画面のTVで見ると迫力があります。

しかし...
私としては、先に紹介したモノクロのライブ版の「Monument」のMVのほうがお気に入りです。(アルバム版のほうです)

なぜか?
まず、スゴイ映像ですが、そんなに工夫が無いというか、新な取り組みが見られない点が残念です。
そして、ロビンが歌う口の動きと楽曲とがシンクロしていないのです。
これが気になって気になって仕方がない...

何事も細部に魂が宿る。
これは、細かなところまで神経を行き届かせてこそホンモノだ、という意味かと思うのですが、その点でこのMVは魂が宿っているのか微妙です。
昔、大友克洋さんのAKIRAが映像の口の動きと声優さんの音声をシンクロさせる取り組みをしましたが、アニメでやっていることを実写の映像でできていないとは悲しい話です。

と、色々書きましたが、こちらのMVも実はちょくちょくYoutubeで見ます。
大画面液晶TVで少し近い距離で見ると迫力がすごくて楽しめます。
まあ、SF映画の迫力のあるシーンを見るような感じですね。

今回は北欧の2組のアーティストのコラボ、ロイクソップ&ロビンのモノクロの素晴らしいMVを2つ紹介しました。
日本での知名度は低いですが、素晴らしいアーティストですので、今回を機にぜひ観てそして聴いてみてください。

ではまた次回に。

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