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天久聖一が手掛けた電気グルーヴのMVは、我々の既成概念をぶっ壊す!(オススメMV #70)
こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の70回目です。(連載のマガジンはこちら)
今回は、MVの概念を超えたMVを紹介します。
それは電気グルーヴのMVなのですが、数ある電気グルーヴのMVの中でも飛びぬけて異質な3作品となります。
なにはともあれ、まず最初のMVをご覧ください。
電気グルーヴの「Cafe de 鬼(顔と科学)」です。どうぞ!
もうワケが分かりません...
強烈なインパクトがあり、我々の脳裏にトラウマにもなりうる爪痕を残しますが、ある種の快感すら生じてきます。
まず電気グルーヴの紹介をしたいところですが、以前の連載で紹介済みですので、未見の方はそちらをご覧ください。→以前の連載はコチラ
さっそくMVの話に参りましょう。
このMVを制作されたのは天久聖一さんという漫画家ですが、漫画をちらっと拝見したものの、私との相性が良くなかったのか再見は無い感じでした。
しかし、このMVは違います!
何度繰り返し観ても飽きることが無いばかりか、この独自の世界に引き込まれてしまいます。
類まれなる唯一無二の世界観がここにはあります。
天久聖一さんだけではなしえない、もちろん電気グルーヴだけでも作れない、電気グルーヴと天久聖一さんがコラボしたからこそ出来上がった独自の世界観と言わざるを得ません。
MV自体を見てみると、1970年代のテレビアニメをオマージュした映像が多用されているもののオリジナリティが強く加味されており、いわゆるパクリ感は全くありません。
私はオマージュ系のMVが苦手なのですが、このMVは全く違和感なく受け入れることが出来ました。
次は楽曲のほうに目を向けてみましょう。
この「Cafe de 鬼(顔と化学)」は、2004年にリリースされた「ベスト SINGLES and STRIKES」に収録されていますが、実はその前にもいくつかのバージョンが存在しています。
オリジナルというか最初のリリースは1991年に「カフェ・ド・鬼」という曲名でアルバム「FLASH PAPA」に収録されています。
「カフェ・ド・鬼」と「Cafe de 鬼(顔と化学)」を聴き比べると面白いことが分かります。
楽曲単体で聴く限りでは「カフェ・ド・鬼」のほうが完成度が高く、「Cafe de 鬼(顔と化学)」は物足りなさが残るというか、中途半端な出来とすら思ってしまいます。
つまり、「Cafe de 鬼(顔と化学)」はMVの映像と組み合させてこそ、楽曲の良さが際立っているのです。
もしかしたら(いや、かなり高い確度で)「Cafe de 鬼(顔と化学)」は天久聖一さんのMVと並行して制作されたのか、あるいはMVのために制作されたのではないかと推測されます。
このままいくとこのMVの話だけで終わりそうなので、そろそろ話を切り上げて次のMVに参りましょう。
続いてのMVはこちらです。
電気グルーヴの「人間大統領」です。
これはMVなんでしょうか?
既にMVの概念を超えた、電気グルーヴと天久聖一が作った異次元の劇を見ているようです。いや、異次元の劇に違いありません!
先ほどの「Cafe de 鬼(顔と化学)」のMVはアニメーションでしたが、この「人間大統領」は実写のMVとなっています。
しかし、アニメと実写という表現方法の違いこそあれ、そこに展開されるのは、まぎれもなく「Cafe de 鬼(顔と化学)」と同じ唯一無二の世界です。
この2つのMVは、チープなようで考え抜かれた重厚さもあります。
タモリさんの「狂気を演ずることが出来るのは知性だけだ!」という名言にも通じる、表面上は狂気に見えるもののその根底には知性が脈々と流れているとすら思わせられます。
しかし、電気グルーヴは鬼才とも呼べるMV監督との相性が良いというか、鬼才を引き付けるオーラのようなものがあるとしか思えません。
以前の連載(なんでもアリの鬼才、田中秀幸の「こんなアイデア、なんで思いつくの?」)でも紹介しましたが、天久聖一さんだけではなく田中秀幸さんという鬼才とのコラボでも秀逸なMVを世に送り出しています。
天久聖一さんはMVの概念を超えたMVをリリースされていますが、田中秀幸さんはMVの枠の中で究極ともいえる作品をリリースされています。
お二人のMV監督の作品を見比べていただければ、全く違ったアプローチでも素晴らしいMVの制作が可能であることを理解いただけるかと思います。
さて、そろそろ最後のMVに参りましょう。
最後のMVは、インパクトとしては上の2つのMVよりは弱いものの、味わいとしては負けず劣らずの良作MVです。
電気グルーヴの「電気グルーヴ20周年のうた」です。
これまたヘンテコなMVですね。
これもMVと呼んでいいのか微妙ではありますが、良いものは良い!ということで紹介します。
この「電気グルーヴ20周年のうた」は電気グルーヴらしい楽曲なので、普通のMV監督に依頼すればそれなりのMVとして仕上がったとは思いますが、それをあえて天久聖一さんに制作を依頼したところに電気グルーヴの普通ではない感性が見て取れ、結果としてそれが成功していることはこのMVをご覧いただければ明らかです。
今回は3つのMVを紹介しましたが、天久聖一さんは電気グルーヴのMVを6作品も手掛けておられます。
その中でも最も有名な作品は今回紹介したMVではありません。
一番有名な作品は「モノノケダンス」なのですが、よくできてはいるものの普通っぽくて、私としては繰り返し観ることはほとんどありません。
決して悪いわけではなく、良くできたMVですので、未見の方はぜひ一度ご覧ください。コチラ→「モノノケダンス」
今回は天久聖一さんが手掛けた電気グルーヴの3つのMVを紹介しました。
いずれもMVの概念をぶち破る作品であり、かつ素晴らしいMVです。
特に「Cafe de 鬼(顔と化学)」と「人間大統領」は中毒性のあるMVですので、視聴のし過ぎには気を付けてください!
ではまた次回に。