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ケイトラナダの定点撮影MVは、新作アルバム全曲をコンプリートしてほしい!(オススメMV #144)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の144回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回は、勝手に命名シリーズとして「定点撮影MV」を紹介します。
「定点撮影MVってなんやねん?」ということですが、ズームやアングルの変化が無くカット割りも無いという、カメラが完全に固定された状態で撮影された映像をそのまま使っているMVのことを言います。(もちろん、勝手に命名しているので、専門用語等ではなく、いわゆる造語となります)

本来の「定点撮影」は、例えば固定されたカメラで渋谷のスクランブル交差点を撮影している映像から、時間や曜日あるいは季節ごとに渋谷スクランブル交差点の人の流れの変化を見る...という用途で使われる映像を撮影することを言います。
しかし、今回の「定点撮影MV」は、ひとつの部屋を同じアングルで撮影した映像をベースに作られたMusicVideoのことを指しており、本来の定点撮影の意味とは違いますが、その辺はニュアンスとしてご容赦ください。

そして、「ひとつの部屋を同じアングルで撮影した映像をベースに作られたMusicVideo」という要素に加えて、もうひとつ重要な要素があります。
それは、同じアングルで同じ部屋を撮影した映像で、同じアルバムの楽曲のMusicVideoを連作としてリリースしている...という点です。

同じアルバムの楽曲のMVをシリーズ化した作品としてリリースすることはたまにありますが、この手法のMusicVideoは(私吉田調べとしては)初の試みではないかと思います。

今回は冒頭の話が長くなってしまいましたが、まず最初の「定点撮影MV」をご覧いただきましょう。
ケイトラナダの「Witchy
ft. Childish Gambino」です。どうぞ!

左右にドアのある部屋の真ん中でプカプカと浮かんだヒト(この方がケイトラナダ)が、ドアの向こうから延びるヘッドホンケーブルを引っ張るというだけのMVですが、不思議と心地よく最後まで観れるMVです。
印象付けが弱い映像ですが、それゆえビートが弱めの楽曲とのマッチングがよく、サラッと観れる良作MVとして仕上がっています。

ケイトラナダ(KAYTRANADA)は、2010年より活動を開始したカナダのアーティストで、2013年にオリジナル1stシングルを、2016年にオリジナル1stアルバムをリリースしています。
新進気鋭のプロデューサー&DJとして界隈では有名なようですが、このMVを観るまでは全く存じ上げず、この機に過去の楽曲を含めて聴いてみたのですが、残念ながら私とのマッチングはそんなに良くなく、楽曲だけでのリピートはなさそうです。(決して悪いというワケではなく、今風のサウンドというのでしょうか、よく出来てはいると思うのですが...)

そして、この「Witchy」のMVからケイトラナダの怒涛の定点撮影MVのリリースが始まるのです。
ちなみに、この「Witchy」含めて今回紹介するすべてのMVの楽曲は、最新作となる3rdアルバム「TIMELESS」に収録されている獲れたてホヤホヤの楽曲でありMusicVideoとなり、「Witchy」のMVはその3rdアルバムがリリースされた2024年6月7日当日にYouTubeにアップされています。

では、続いて2つ目の定点撮影MV。
ケイトラナダの「Snap My Finger ft. PinkPantheress」です。

上の「Witchy」よりも、照明の色の変化や紙吹雪などで視覚的な印象付けがより強くなったMVですが、バランスは「Witchy」のほうが良いように思うのは私だけでしょうか。
なにより、歌っているピンク・パンサレスが遠目でしか見れないのが、定点撮影だから仕方ないとはいえ、残念極まりないところです。

しかし、カメラワークが固定されている中で、良い印象付けを与えようと様々な視覚効果にチャレンジしている様(さま)は、決して悪いことではなく、逆に拍手を送りたいほどです。

この「Snap My Finger」で客演として歌っているピンク・パンサレスもそうですが、上の「Witchy」のチャイルディッシュ・ガンビーノやこのあとに続く客演のシンガーの顔ぶれが多様かつケイトラナダと同世代の若手が多いことも特徴です。
ちなみに、チャイルディッシュ・ガンビーノは俳優としても有名ですが、それよりも「This Is America」という楽曲のショッキングなMVの印象が強く、楽しいMVではないため視聴には注意が必要ですが(銃による殺人の場面もあります)、一度は視聴されても良いかもしれません。

今回はたくさんMVを紹介しますので、どんどん行きましょう。
次の定点撮影MVは、これまたシンプルなMV。
ケイトラナダ「Seemingly」です。

これぞ「ザ・定点撮影MV」とでも呼べるような、照明の変化などの視覚効果が全くなく、ただ単に定点カメラで撮影しているだけのMVです。
しかし、次元のゆがみなのか何なのかわかりませんが、左右のドアがつながっていて、ケイトラナダが『どうなってるんだ!』と言わんばかりに右往左往する様子が楽しいMVです。
しかし、このネタだけで最初から最後まで貫き通したことには敬意を表さざるを得ません。(他のネタも盛り込みたくなるのが心情ですが、それをグッと我慢されたのがスゴイ!)

どんどん次に行きましょう。
続いての定点撮影MVは、シンガーとの掛け合いが楽しいMVです。
ケイトラナダの「Call U Up ft. Lou Phelps」となります。

この「Call U Up」のMVは、照明やエフェクトなどの映像効果はありませんが、電話機(スマホ全盛なので、なぜか懐かしいですね)が小道具として出てくるのがいいアクセントになっています。
しかし、残念なことに、このMVは完全な定点撮影MVではありません。
途中4回、それぞれ数秒ではありますが、アングルの違う二人のアップの映像が差し込まれているのです。
このアングルの違うアップ映像は不要な気もしますし、定点カメラの映像のみで貫き通してほしかったという気持ちもあるため残念ではありますが、制作側も色々考えたうえでの判断だと思いますし、致し方ないところですね。

まだまだ定点撮影MVは続きます。
続いては、またまたシンプルな「ザ・定点撮影MV」となります。
ケイトラナダの「Pressure」です。

この「Pressure」も照明やエフェクトなどの視覚効果はなく、完全な定点撮影MVとなっていますが、登場するケイトラナダが様々な年齢で登場するというネタとなっています。
途中、子供のケイトラナダが歩きながら特殊効果で大きくなったりしますが、特殊な処理はそれぐらいです。
他の定点撮影MVと比べると、若干のイマイチ感もありますが、定点撮影という縛り故(ゆえ)、やむなしですね。

話は変わりますが、今回紹介するMVはすべて「Visualizer」という表記になっていますが、この「Visualizer」って何のことか分かりますか?
もともとは、楽曲にあわせてカラフルな幾何学模様が変化したりする映像効果のことですが、最近では一部が動く静止画によるMusicVideoや、比較的シンプルな動画によるMusicVideoを「Visualizer」と表現しているようです。
それからすると、このケイトラナダの3rdアルバムからの定点撮影の連作MVは、「Visualizer」ではなく一般のMusicVideoとして十分な内容かなと思うのですが、皆さんはどう思われますか?

さて、続いては私が一番好きな定点撮影MV。
ケイトラナダの「Video ft. Ravyn Lenae」です。どうぞ!

定点撮影MVの特徴であるシンプルさを損なわず、良質な印象付けを実現した、画期的な定点撮影MVです。
映像と楽曲とのバランスもよく、かつシンプルな映像のため高いクオリティを実現している手腕には脱帽です。

上の「Snap My Finger」の解説でもお伝えしましたが、定点撮影MVの弱点は、部屋全体の俯瞰映像のためアップの映像が使えないところです。
しかし、このMVではその弱点を克服しているのです。

その克服方法を説明しましょう。
MVの中でテレビモニターが出てくるのですが、その画面に映っているのが歌っているレイヴン・レネーで、テレビモニターに顔を中心としてアップで映っています。
そして、部屋の俯瞰映像がメインとして流れる中、途中でテレビモニターの映像に切り替わるという感じでレイヴン・レネーのアップ画像が表示されるのです。
俯瞰の定点撮影の映像では、様々な工夫をして変化や印象付けはできますが、シンプルさを損ねて逆にクオリティを下げてしまうことにもつながり、また、アップが使えないためシンガーの表情を伝えることができないのが致命的といえます。
そこで、このMVでは、「あくまでもテレビモニターの映像と切り替えてるだけですよ!」という理屈で、無理矢理ですがシンガーのアップの映像を流すことにより、シンガーの表情を伝えることに成功しています。
この効果は絶大で、シンガーの表情まで把握できるアップの映像と楽曲の歌との関連付けがなされることにより、通常の定点撮影MVに比べて歌を意識した視聴を促すことができているのです。

「しかし、これじゃあ定点撮影MVと言えないんじゃないの?」という声も聞こえてきそうですが、確かに俯瞰して部屋を撮影した映像のみではありませんが、MV全体として視聴者に何を感じてもらいたいのか?という点が重要と考えると、この決断は正しい判断ではないかと思っています。
とはいえ、このテレビモニターのアップ画像はMV全体にわたって9回も流れており、少し回数が多いように思います。(半分の4~5回でも、十分効果は見込めたように思います)
また、画面全体が切り替わってテレビモニターの映像(レイヴン・レネーの顔のアップの映像)が画面いっぱいに表示されるのではなく、台に乗せて運ばれるテレビモニターをカメラに近づける(手前に移動させる)ことで、部屋の俯瞰映像はそのままにレイヴン・レネーの顔を表情を読み取れるほどにアップさせれば、画面の切り替えも無くなるため、よりクオリティの高いMVになったようにも思えますが、こればっかりはやってみないと分からないため何とも言えませんね。

なお、台に乗せたテレビモニターを動かすスタッフですが、途中、歌っているレイヴン・レネー本人が動かすスタッフとして登場するのも、小技(こわざ)が効いていて好きだったりします。

さて、次が最後のオススメの定点撮影MVとなります。
ケイトラナダの「Spit It Out ft. Rochelle Jordan」です。

これまたシンプルな定点撮影MVです。
シンガーを務めるロシェル・ジョーダンが奥の壁際中央で歌い、ケイトラナダが右のドアから左のドアに流れるだけですが、不思議と単調さは感じられず、『次はどんな格好でケイトラナダが登場するんだろう』とワクワクしながら観ることができます。(途中でロシェル・ジョーダンが出てくるのもいいですね)

この「Spit It Out」のMVでのケイトラナダの動き(自分は動かず床が動く)を見て、ある名作MVを思い出しました。
それは、ジャミロクワイの「Virtual Insanity」という名作MVなのですが、「Virtual Insanity」では床が動いているように見えて実はセットのほうを動かしていると何かで読んだ記憶があります。
この「Spit It Out」は、セットを動かしているのではなく、床を動かしているのでもなく、多分映像合成で動かしているのでしょう。
「Virtual Insanity」は1996年リリースのため約30年も前ですから、デジタル映像技術の進歩はスゴイですね。
なお、「Virtual Insanity」は、以前に本連載でも紹介していますので、ご興味ある方はご覧ください。(以前の連載はコチラ⇒「これぞ唯一無二。ジャミロクワイとデッドオアアライブのMVは...」

以上が、今回オススメMVとして紹介する6つの定点撮影MVとなります。
しかし、実はまだ2つ定点撮影MVがあるのです。

その2つの定点撮影MVは、私的(わたしてき)には定点撮影MVとして微妙であり、オススメMVとしても『うーん...』というMVとなっています。
しかし、ケイトラナダの3rdアルバムからの定点撮影の連作MVではあるため、オマケとして以下に紹介させてもらいます。

1つ目のオマケ定点撮影MVはコチラ。
ケイトラナダの「Drip Sweat ft. Channel Tres」です。

定点撮影MVの良さが活かされておらず、ゴチャゴチャした印象のみが残るMVとなっています。
カメラの視点も何度も切り替わり、照明などの視覚効果もモリモリで、正直再見することはなさそうです。(映像がフラッシュライトのようにずーっと明暗を繰り返すのはいかがなものかと思います)

この「Drip Sweat」のMVは、楽曲が収録されているアルバム「TIMELESS」が発売される6月7日の2日前である6月5日にYouTubeで公開されており、なぜこのMVを先行リリースされたのか理解に苦しみます。(印象付けが強いMVのほうが宣伝になると思たんでしょうかね)

そして、もう1つのオマケ定点撮影MVはコチラになります。
ケイトラナダの「Please Babe」です。

カメラアングルの切り替えが複数回あるだけでなく、そもそも映像そのものが見ていて不快になるのは私だけではないでしょう。
首の後ろの機械っぽい飾りから見てロボットを模しているであろう出演者の奇妙な動きは、出演しているケイトラナダ本人もMVの映像中で不快さを表現して逃げ回っていますが、視聴者も不快にさせています。
また、上の「Drip Sweat」ほどではないにせよ、この「Please Babe」のMVもライトの点滅が激しく、その点でもゲンナリです。(楽曲の歌詞もゲンナリです...)

最後の2つについてはチョット残念なところもありますが、全体でなんと9つのMVを定点撮影MVとしてリリースしているのには驚きつつ、そのチャレンジには賞賛しかありません。

なお、オススメ7作品の最後に紹介した「Spit It Out」のMVが最新作となっており、7月2日にYouTubeにアップされたのですが、それ以降は3rdアルバムからのMVはリリースされておらず、『早く次の定点撮影MVが観たい!』と思う日々が続いています。
ぜひぜひ次の定点撮影MVをリリースいただければと切に願う次第です。

さて、今回の定点撮影MVはいかがでしたでしょうか。
ぜんぶで9つのMVがありますので(オススメは7つですが)、ぜひ見比べて楽しんでいただければ幸いです。

ではまた次回に。

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