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KING&QUEEN展(@上野の森美術館)で読み解く、英国王室の歴史

※本文はあくまでも個人的見解に基づくものです。ここに改めて、英国王室、歴代国王/女王、そしてエリザベス2世に敬意を表します。

2020年12月26日(土)、この日はかねてより楽しみにしていたKING&QUEEN展へ行ってきました!「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展―名画で読み解く 英国王室物語―(2020年10月10日(土)~2021年1月11日(月・祝))(既終了)。」

私は王室マニアでもなんでもありませんが、数年前まで英国院生だったこともあり、在英中はイギリスの美術館やライブなどに足を運んでいました。帰国して、どっぷりイギリスにかかわるようなイベントもないので、この日は終始ワクワク(´▽`*)

私の持つ英国王室のイメージ

・エリザベス2世のお召し物が上品だけど、とってもファッショナブル。

・メーガン妃とヘンリー王子の暴露本で目が点

・お騒がせ度は世界一!

などなど、まぁ規律を重んじて、面子もあるし大変そうだよなぁ....(それは日本の皇室も変わりませんが)という印象だったものの、そのイメージは鑑賞後には変化しました。

本展では、テューダー朝から現在のウィンザー朝までの約500年を、それぞれの王朝ごとに、肖像画を展示。王室の歴史はもちろん、イギリスの時代背景も理解しながら鑑賞を進められたので、単純な"王室ファン"以外の人も訪れるきっかけになっていたのではないかと思いました!

肖像画制作が本格的に始まった「テューダー朝」

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6人の妻を持ち、うち2人の妻と延臣を処刑したことで知られるヘンリー8世。当時の肖像画はビジュアルを利用して、自分の権力を強固にするため、描かれていたそう。華麗な装飾品を身に着けるなど、外見だけではなく、国王としての威厳や理想を表情や背景などにも表されています。

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私だけでしょうか?この英風能面のようなエリザベス1世の肖像画を見て「怖い.....!」と思うのは。真っ白な肌、漆黒の目、あるのか分からない薄い眉毛のせいではないかな?と思う(disってません)。彼女はテューダー朝5代目にして最後の国王。スペインの無敵艦隊を撃破したり、宗教問題解決のため、重商主義政策をとって文化を花開かせたことから、大英帝国の礎を築いた女王として知られています。

イギリスがジェンダー先進国の理由の一つに、何百年も前から、女性が国を統治してきた歴史があるのも理由の一つかな?と思った瞬間でした。

異国間交流と芸術活動が盛んになった「ステュアート朝」と「ハノーヴァー朝」

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ジェームズ2世、二番目の王妃メアリー・オブ・モデナ(お麗しい....)の右隣に描かれた犬はグレイハウンドで、イタリア原産の犬。実際飼っていたかどうかなのは別として、彼女がイタリア人ということを表しているそうです。

日本の皇室だと信じられないかもしれませんが、ヨーロッパ王室では他の国との婚姻がしばしば認められているそう。今や移民大国で、混血は当たり前のイギリス。多種多様な国籍の人が行き交うようになったベースもこの時が起点なのかもしれませんね!

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ハノーヴァー朝では産業革命がおこり、大英帝国が繁栄していった時代。痛烈な風刺画も流行したそうで、宮廷画家と一般画家が描いたジョージ4世の肖像画が別人のような風貌になっています....!上は宮廷画家が描いたジョージ4世。芸術への支援活動は熱心な一方、大酒飲みだったため、実際はもっと太っていたところ、画家の筆によってすっきりとした姿で描かれています。

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こちらが一般画家によって描かれたジョージ4世。「クジラ王子」と呼ばれ、虚栄心に満ち、放蕩な生活で知られていた国王に対する痛烈な批判になっていました。

「ブリティッシュ・ジョークはこの時から始まっていたのか.....!」という発見。ブリティッシュ・ジョークの特徴として下記、Wikiより抜粋。

権威の批判
風刺、皮肉、嫌味を含ませ、ジョークの対象となる人、集団、組織といったものを批判する。対象に権威があればあるほど面白みが増す。
ただし、対象が権威を持つがために、ジョークは隠喩として表現されるため、対象への知識が無い場合には何を言っているのか理解できないことも多い。
アメリカ大統領をはじめ世界各国の首脳や英国王室、聖書や神もネタにされる。

19世紀以降、大英帝国が最も繫栄したといわれるヴィクトリア女王の時代

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国王は統治ではなく、君臨する存在となりました。写真が発明されたことで、印刷技術が発達し、よって国王の肖像写真が市販され、大勢の市民の目に触れるようになりました。19世紀半ばまでにニュージーランド、オーストラリア、カナダといった広大な植民地を獲得します。1850年代から1870年代のヨーロッパは「パックス・ブリタニカ」という"イギリスの平和"と呼ばれていた時代だったそうです。いち早く産業革命を成したイギリスは世界の工場となり、生産力や軍事力で他国を圧倒していったんですね。

ヴィクトリア女王のお召し物やクラウン、アクセサリーが気品に満ち溢れていて、とっても素敵ですよね!

一番ボリュームがあったウィンザー朝

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親愛の意を込めて、勝手にエリちゃんと呼んでいますがw、これは確か戴冠式の時のお写真だったかな?肖像画オンリーの表現手法からは脱却していよいよすごいことになってきました.....。どんな感想を述べようとも、稚拙な表現にしかならない気がして、もうとにかく言葉を失ってしばし見惚れてしまっていました....。わずか25歳で女王となったエリザベス2世。まだ少女と大人の間で揺れ動くような、あどけなさが写真から伝わってくるようです。

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ウィンザー朝は2度の世界大戦を経験し、肖像画における役割も変わってきています。この写真は女王がチャールズ皇太子をおんぶしているところ。公務以外でのこういった家庭的で、理想的な、母としての姿を捉えたものは従来の肖像画にはありませんでした。本来は宮廷で飾られ、一般大衆の目に触れるものではなかったためです。

"王室"という普段はお目にかかれない方々の私生活というのは、国民として気になる点ではありますよね。「女王も私たちと同じ母親であり、妻であり、女性なんだ」と感じ、親しみを持つきっかけになります。

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こちらのお写真。個人的に展示会での一番のお気に入りかもしれません......!イギリスの君主としての威厳、品位や覚悟が感じられます。それ以外にも君主としての覚悟や、エリザベス2世だけではなく、広く、暗い(ライトは撮影用に調整したものだとは思いますが)王室内も捉えることで、国を統治する女王としての孤独や葛藤といった内面の部分も滲み出てくるかのように考えてしまうのです。。

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女王の写真は、ジョン・レノンとオノ・ヨーコのセンセーショナルな写真を撮影したことで、世界的に有名な米写真家、アニー・レイボヴィッツが撮影しています。イギリス人カメラマンではなく、なぜ彼女が任されたのかは謎なのですが、まさに適任だったのでしょう。そこには視覚的には見えてこない、被写体の内面性をもむき出しにする力を感じます。

"私は一生、全力をもって、国民の皆さんの信頼に応えられるよう努めます"

これはエリザベス2世の戴冠式時のスピーチです。2児の母親として、幸せに満ちた生活でしたが、1952年2月、訪問先のケニアに父ジョージ6世の訃報が届きます。その結果、25歳の女王が誕生。父を失い、悲嘆に暮れる場合ではありません。国を統治して、国民と共に生きていく、その決断をされていたのですよね。25歳でこんな覚悟、私だったら到底できません.....!

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イギリス君主史上最長の在位記録を更新し続けているエリザベス2世。毎年クリスマスになると国民に向けてメッセージを発信しています(イギリスは地方によっても訛りの差が激しいのですが、彼女の英語は本当に綺麗で、一言一句聴き取れます)。

最後に

私はこの展示を通して

・なぜ、イギリスの女性は強いか(=男女平等社会、ジェンダー先進国)という問いに対して、古くから女性がリーダーシップを発揮し、国を統治してきた歴史があったため

・なぜ、イギリスはDiversity(多様性に富んでいるのか)という問いに対して、ヨーロッパ王室では他国との婚姻が認められていた背景があり、その姿が国民に影響を与える形となったため

・なぜ、イギリスの美術館は無料なのかという問いに対して、ステュアート朝以降の芸術推進活動が盛んになったことで、才能のある画家たちがイギリスへどんどん招かれ、王室の肖像画を描いた。また、ジョージ4世を筆頭に、芸術支援活動に熱心な人物もいたことから、国民レベルで、芸術への理解や評価が浸透していった結果であるため

という風に自分の頭で認識しました!ただ、歴史が果てしなく長い国なので、もっと遡っていったり、登場した各時代をつぶさに紐解いていくと、展示では知り得なかった発見があるかも?と思っています。

なので、王室マニアでもなんでもない私にとっては、KING&QUEEN展は入り口にすぎません。今回を機にもっと知りたい!と思ったので、英国王室を扱った映画を調べてみました(*´ω`)英国王のスピーチは観たことあるけど、あとは全然知りませんでした....。

最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました!!

本記事は主にこちらの本を参考に、執筆しております。


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