地方都市に良く見かける“ドライブイン”の謎
沼津市内から三島市内へ国道1号線をなぞるように走っていくと、ところどころ、お店の看板に印象的なワードが備え付けられているのを知っていますか?
沼津市民や三島市民であれば必ず1度は目にしたことがある看板表記。
それが「ドライブイン」です。
少年の頃からこの表現が田舎臭くて本当に嫌いでした。なぜこんなダサい表記をわざわざ記載しなければならないのか。最近でいえば、国道1号線の中郷温水池の近くにあるくら寿司や焼き肉きんぐ、オシャレな内装で有名なコナズ珈琲、そしてつい最近できたあのスターバックスにすら「ドライブイン」の表記があります。
昔からある施設ならわからないでもありませんが、令和になってもまだ昭和モータリゼーション時代の代名詞みたいなドライブインという表記をなぜわざわざ新築する建物に付けているのかまったく理解できなかったのですが、最近とあることがきっかけでこの長年の謎を解くことができました。
市街化調整区域と建築規制
とあるきっかけとは、先日の三島市移住アンバサダーの依頼状授与式のときに豊岡市長と行った意見交換会です。市長が、何か困っていることや質問などあれば言ってほしいと仰られたので、私からド直球でこの件を聞いてみたのです。
その時に初めて知ったのが、「市街化調整区域」という言葉でした。
この市街化調整区域には、一部の例外を覗いて原則的に建物を建てる事ができません。細かいことは置いておくとして、この「一部の例外」に、ドライブインが関係します。
沿道サービス施設とドライブイン
この市街化調整区域の中に例外的に建てられる施設にはいくつも種類があるのですが、その中に「沿道サービス施設」というものがあります。
沿道サービス施設
ざっくりいうと、これらの施設であれば”一定の基準を守れば市街化調整区域内でも建物を立てて良いよ"という例外条件があり、それらのうち、食堂、トイレ、喫茶コーナー、売店等を兼ね備えた自動車運転者の休憩のための施設のことをドライブインとして定義しているようです。
そしてこの”守るべき一定の基準”はそれぞれの建物の種類によって異なるのですが、ことドライブインに限って言えば、以下のような条件があるようです。
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(1) 敷地面積
ドライブインについては、1,000 平方メートル以上 10,000 平方メートル以 下であること。
(2) 建築物
ドライブイン及び自動車修理工場の用途に供する延べ面積は、200 ㎡以上である こと。
(3) 敷地の位置
申請地は、次のいずれかに該当すること
① 一般国道、県道、有料道路に接していること。
② 有効幅員6メートル以上かつ 12時間当たり交通量が 4,000台以上の県道に 準ずる市道に接していること。
(4) 駐車場
ドライブインについては、収容人員4人に1台の割合で算出した台数以上の普 通自動車が駐車できる広 さの駐車場が、敷地内に有効に配置されていること。
(5) その他
ドライブインについては、ドライブインであることを示す看板を設置すること。
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ついにたどり着きましたね!
最後のこの1文が、どんなにオシャレなレストランにも「ドライブイン」という表記を掲げなければならない根拠になっています。利用者にとってはまったくどうでもいい条件であり、表記に関して何ら効果効力を持たない無用の長物といえます。
つまりあのドライブインという看板表記は、高齢ドライバーに向けたノスタルジー集客目的でも、老害オーナーの勘違いマーケティングでもなく、ただの法的遵守による掲示だった、というわけです。
同じレストランなのに、表示がされたりされなかったりするのはなぜか?
理由は非常に単純です。それは、幹線道路をまたぐように市街化区域と市街化調整区域が断続的に設定されているからです。
たとえば先程から話題に上がっている国道1号線の三島玉川エリアですが、下記サイトの内容を見ても分かる通り、この一部のエリアだけが市街化調整区域であり、それ以外は市街化区域になっています。道路としては連続していても、用途地域としては不連続なため、このような現象が発生するのです。
その証拠に、この市街化調整区域の向こう側にある安楽亭には、ドライブインの表記はどこにも見当たりませんでした。ただ、なぜ行政がこのように不連続な形で用途地域を切っているのかは私はよく分かっていません。
さいごに
いやはや、小さな頃からずーっと長いあいだ謎だったこのドライブイン問題。この歳になってやっと解決することができて個人的にはとってもスッキリしています。
今度、日本のどこかでクルマを運転している時に「ドライブイン」の表記を見つけたら、
「ねぇ、この「ドライブイン」ってやつ、なんで書いあるか知ってる?」
などと、ウンチクのひとつでも語ってやろうと思います。