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竹島強奪70周年 韓国が死守したい「対日戦勝」の証

2022/02/01 Newleader

竹島密約

 今から70年前、1952年1月18日のこと、韓国の李承晩政権は、日本との海洋境界線を一方的に設定。竹島を自国領土として取り込みました。いわゆる「李承晩ライン」というやつです。韓国併合以前から竹島については日本領ということで国際的にも認知されていました。ただ占領期中にGHQが日韓の漁業操業分離線、「マッカーサーライン」を設定し、竹島を韓国側に入れたのですが、この時期、韓国の独島義勇守備隊と言う民兵組織が竹島を占拠、日本の艦船や漁船に機関銃を撃ちまくり多くの死者を出すという事態になります。

 しかし、この年4月のサンフランシスコ平和条約発効によってマッカーサーラインは撤廃。それを見越して韓国が先手を打って動いたわけです。韓国は占領期中の韓国漁船保護特権を日本の主権回復後も継続せよ、とGHQにねじ込んだのですが、漁業権と主権では当然主権優先なので、これは却下。で強行措置に至ったということです。

 これには日本のみならずアメリカも抗議。しかし韓国は翌53年4月から国家警察を常駐させ実効支配を開始。こうなるともう領土問題。しかも銃火を交えています。対日独立戦争の幻想をアピールして国民の支持をつなぎとめてきた韓国李承晩政権が譲歩するわけなく、日本も講和条約の確定条項を放棄するなど主権国家であることを自ら否定するのと同じです。

 日韓の会談がもたれましたが、言うまでもなく決裂。結果、第2次世界対戦終了から20年間隣国と国交がないという状態が続きます。

 と、長々と発端を書いて来ましたが、本当の迷走はここから。1965年にアメリカの肝煎りもあって、ようやくお互いの主権を認め合う日韓基本条約の締結が行われました。当然、最も揉めたのがこの竹島の帰属問題。どうにも解決の道筋が見つからず、出した答えが「棚上げ」。しかし、それはお互いの暗黙の合意付きでした。

 韓国は領土主張のためのこれ以上の行動をとらない。日本もまた年1回、書類で抗議の意を示すがことさら騒がない。この表面上、領土問題で、実力行使による抗議がない状況、つまり具体的な対立がない状況が100年続けば、国際法の慣習上、領有権は実効支配している側に移る、というものです。

 さらに基本条約と同時に結ばれた日韓漁業協定では、李承晩ラインを廃止、竹島以外のお互いの領海の確定、国連海洋法条約の対応した1999年の協定の改定では、排他的経済水域(EEZ)を設定する際、竹島は存在しないことにして、海域の中間線付近に暫定線を設定するというものでした。

 領有権、施政権については黙認、漁業権の折半で内容的には日本側の大幅譲歩。確かに「密約」にせざるを得ないです。このあたりの経緯は、韓国人研究者のロー・ダニエル氏の労作「竹島密約」に詳しく描かれています。

何のための竹島問題か

 ところが韓国側はこれでも不満だったよう。急転したのは盧武鉉政権から。2006年には、前年の島根県による「竹島の日」制定に反発し、日本の海上保安庁が日本EEZ内で行おうとした海洋調査阻止を叫び、島根県を軍事攻撃すると大統領自らが発言する始末。

 韓国では認識されていないようですが、この一連の騒ぎ方は韓国にとって大きなマイナス。密約を無視したと言うだけでなく、竹島を巡る領土紛争を表面化させてしまったことです。将来の領有権の自然承認はなくなりました。

 韓国側も外交実務関係者は認識していたようです。調査船には実力阻止すると一触即発だった際、谷内正太郎外務次官(当時)がソウルに赴き、韓国の柳明桓外交通商部第1次官と会談したときのこと。韓国側の主張があまりに硬直的なため、最後に谷内次官は「どうぞご自由に」といって席を立ったところ、柳次官は、慌てて追いかけてきて、廊下に出たところでいきなり握手。

 それを待ち構えていた報道陣が写真にとり、なんとなく和解したかのように報道。うやむやの内に日本側が見合わせることになりました。

 外交上の合理性や国益よりも、李承晩以来の政権の国内向けアイデンティティー・ポリティックスがすべてに優先しています。この問題は、次政権の李明博大統領が竹島に大統領として初めて上陸することで決定的になります。

 この韓国が勝手に領有の可能性を放棄したというロジックについて教えてくれたのは、韓国大使館勤務経験もある元外務省情報局長の岡崎久彦氏でした。そしてもう1つ岡崎氏が教えてくれた教訓がこれ、「政府はナショナリズムを自ら扇動してはならない。いざ方向転換が必要なとき後戻りができなくなる」。

 この70年間、日本海の人も住めない岩礁を巡る騒動で分かったことは、ただ1つ。政治的にナショナリズム扇動を続けた結果、合理的な交渉が不能になった国が隣にあるという面倒な事実です。

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