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良いエッセイと休日

 「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」を発売日に買いに行った。今日は埼玉県民の日で学校がない。カラオケに行って、その後本屋に行って、カフェで本を読むという最高の予定を、前の日の夜に立てた。
 自費出版本の方を前から欲しかったのだけど、家の近くに売っている本屋がなく、買いに行くにもタイミングを逃していて買えなかった。そんな時に商業出版のお知らせ。しかも、又吉蓮見松本という大好き3人が帯を飾る。「これが生活なのかしらん」を読んで期待も膨らんでいて、これを手にする日は楽しくしようと思っていた。とびきり楽しく!
 良いエッセイって、そういう力があるのだと思う。私の生活とくっついて、私の1日がつくられる力。私は読んだ次の日から、急に日記をつけだしたり、お菓子を作り出したりする。
 「これが生活なのかしらん」を手にした日もそうだった。夏休み終盤、連日猛暑日で、外に出られない日が続いていた中のある日。散歩が趣味の私は、外を歩きたくてしょうがなかった。昨日よりは涼しいよ!って外に出た。目的地は少し遠くの蔦屋書店。身の危険を感じて日傘をさして歩く。「これが生活なのかしらん」を買う。帰り道のマックで半分くらいまで読む。ブルーベリーの直売所を見つけて100円のパックを買う。歩きながら食べる。このときの、この、ブルーベリーの味。夏の暑さのせいで、ぬるくて甘ったるい。カラカラになった喉にジワッと広がる、この感じ。良いエッセイを読んだせいで、感覚がいつもより鋭くなる。見えていなかったものが見える。些細なことを尊いと思う。暑い、最悪、ブルーベリー微妙、だけでは済まされない何かになる。家に帰ってこのことを思わず日記に書いた。そういう読書体験だった。
 では、ここからは「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」を買った日の話。完璧な良い休日になったから聞いて欲しい。
GAPの真っ赤なパーカーとジーンズの格好で、私は予定通り、カラオケに行った。カラオケ館のモーニングパックで3時間。私は3時間歌い続けた。ブルーハーツ、サニーデイサービス、ミツメ、柴田聡子、スピッツ、〆のブルーハーツ。私は流行りとか盛り上げ曲とかわからないから、ヒトカラで光輝く。音程が外れていても気にせず気持ちよく歌った。歌いすぎて喉を痛め、咳払いをしながら近くの本屋へ。「唐揚げ弁当」がない、別の本屋へ。ここにもない。この辺で1番大きい本屋へ。あった!欲しかった日めくりカレンダーも一緒に購入。そんなこんなでもう1時半。カラオケのドリンクバーでたぷたぷになっていたお腹も落ち着いてきた。腹を満たしにくら寿司に行く。カウンター席に座って、びっくらポンを“やる”のボタンを押す。びっくらポンの箱が1人の客のために置いてあることに嬉しくなる。腹をいい感じに満たしたらスタバに向かう。来週が期限のドリンクチケットを持っていたのだ。チャイティーラテのグランデを注文する。グランデグランデ。席について買ったばかりの本を開く。あー私、今日やりたいこと全部やったな、と思う。
 小原晩さんの文章はすごい。想像をして、私は小原さんになって、いろんなことを感じて、いつのまにか私自身のことを考えてる。何箇所か泣いてしまった。あったかかったのにつめたくなったひいおばあちゃんを思い出して。前から海に行こうって言ってるのにその日に限って雨が降って行けていないことを思い出して。夜の散歩の気持ちよさを思い出して。
 そのままスタバで本を読み終え、顔を上げる。店は混んできていて、急いで帰る支度をする。私がいちばん赤い服を着ていた。私赤いな、と思った。それが嬉しかった。
 そして、家に帰ってnoteを書く。良いエッセイを読んだから。

欲しかった日めくりカレンダー