『春の向こう』#春弦サビ小説
コラボさせていただいた曲
『春の向こう』
作曲・くえすさん
作詞・夕凪遙さん
☆曲については、記事の後半であらためてご紹介します。
☆ヘッダーと帯は、スズムラさんにお借りしています。
『春の向こう』
「ごめん‥なさい。大事なライブさぼって」
ハルヤが頭を下げた。
「大げさだな~。大丈夫、盛り上がったから。
ハルヤの音はみんなに聴いてもらいたかったけどね。あと‥
連絡はしてほしかったかな」
ナツミはなるべく柔らかく笑ってみせた。
「うん。体が動かなかった‥
スマホを取るのにものすごく時間がかかって‥だんだん申し訳なくなって連絡するのが怖くなった」
ハルヤはもう一度頭を下げたまま床を見ている。
「前にもあって‥こういう事。気づいたらキャパ超えててクラッシュした。半年、高校休んだんだ」
「そうなんだ。知らなかったとはいえプレッシャーかけてた?
ハルヤどんどんギター上手くなるから私も気合い入っちゃって。
あんまり解ってなかったね。ゴメン」
謝られたハルヤが小さくなる。
「言ってなかったから‥ぼくのせいです」
ハルヤは今でも時々敬語を混ぜてくる。
「少し前からスクールカウンセラーに話を聞いてもらってて、休学をすすめられた‥
今も授業には出てないし、将来的には大学を辞めるつもりです」
ナツミの心臓がトクンと冷たく脈打った。
この一年間、いっしょに夢中でギターを弾いた。先のことは考えなくてよかったのに、急に胸がザワザワする。
「軽音には来れば」
「ハハ‥いいのかな」
「だって、その長い指。ギター弾かなくて何に使うのよ」
「ギターは続けようと思うけど。ナツミさんが教えてくれたんだし。この大学に来た唯一の意味」
ハルヤの目がナツミを見た。
「休学したら実家に戻ります。お金もかかるし親に心配もかけてるし、仕方ない。
立ち止まってゆっくり考えたい。自分のために自分が何をしたいか、を」
静かな深い声。ナツミとのことを今は考えられない、と言われた気がした。
「また来ます。ナツミさんと一緒にギターを弾きたいから」
しれっと言われるとむしろ辛い。
「ほんとかなぁ、信じて待つか!」
こんな時、アザトカワイイ女子なら袖をつかんで涙を出せるんだろう。
「引き払う前にまだ会えるし」
ハルヤがわずかに笑った。
いつの間にか朧月が上っていた。ハルヤはナツミを送るようにバス通りまで付いてきた。
ナツミが大きな声で歌い出した。
今日ニ人で演奏するはずだった、ナツミが作った曲だ。あどけないのに少し憂いのあるナツミの声に似合っている、とハルヤが言ってくれた歌。
すぐ隣を歩くハルヤの左手の指が、エアでコードを辿っていた。
了
(たぶん967字)
小説の最後にナツミが歌った曲という設定になっています。(あつかましくてスミマセン💦)
夕凪遙さんの歌詞を読んだ時から、とっても好きになって、
くえすさんがアップされていた楽譜をプリントして歌っていました。
歌はどうも…なので、メロディ譜を見て即興でピアノで演奏しました。
(とはいえTake8ぐらい。ミスは聴こえないフリでお願いします。)
お口直しに。安定のハーモニー🎶
編曲・見据茶(みすてぃ)さん
そして、こちらの曲には別バージョンも!
くえすさんの曲が先にあって作詞を募集されたので、
あかうまさん、Sen-singさんも作詞をされてます。
お三方の詩をジョイントして、くえすさんが作られたのがこちら。
それぞれ曲に合ってていい詩なんです。聴いてみてくださいね。
いろんなコラボができるんですね。
ほんと素晴らしい✨
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気分あがるやつ🎵