2014年、夏。フィンランドが私に幸せについて真剣に考えるきっかけをくれた。
10年前、私は新婚旅行でフィンランドを訪れました。私にとって初めての海外旅行。旅行先としてフィンランドを選んだ理由は、妻が北欧デザインの家具やインテリア、雑貨などに興味を持っていたからです。ヨーロッパの国のなかで最も日本から近い国ということもあり、渡航費が意外と抑えられる点も魅力的でした。
8月のフィンランドは、短い夏の真っただ中。からっと晴れた空と涼しい風が印象に残っています。街では、多くの人々が太陽の光を浴びながらリラックスしていました。公園には家族連れが多く、まだ歩き始めたばかりの子どもと遊ぶお父さんや、芝生に座っておしゃべりを楽しむ人たちの姿。そこにはただ、穏やかでゆったりとした時間が流れていました。
当時、私は飲食業で働いており、朝から深夜まで長時間働くことが日常でした。仕事自体は楽しく、お客様と直接接することが好きでしたが、ゆっくりと自分や家族の未来を考える時間を作ろうとせず、ただ1日1日の営業に向かい合う日々を繰り返していたように思います。
そんな生活から離れ、夏のフィンランドでのんびりと過ごす人々を姿を見つめながら、「もっと自分の時間を大切にしてもいいのかも」と考え始めました。
帰国後、フィンランドについてもっと知りたくなり、いろいろと調べているうちに、フィンランドが「世界で最も幸福な国」とされていることを知ります。(経済的な指標だけでなく、その国に住む人の「幸福度」を測る指標があることにも驚きました)
特に印象に残ったのは、『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』という本です。
「効率的な働き方」を重視し、「自分の時間」を優先することが社会的にも認められているフィンランドの価値観は、いつの間にか「働くこと」を生活の中心に置いていた私に、幸せの定義を問いかけます。
コーヒー休憩が法律で義務化されているほか、夏の長期バケーションの取得が当たり前で、仕事よりプライベートな時間や家族との時間を優先する文化がある。これらは、少なくとも私がそれまでに育んできた価値観とは大きく異なり、衝撃的でした。この本を読んで、フィンランドの人々がなぜ幸福を感じているのか、その背景を少し理解できた気がしました。
「好きな本はありますか?」と聞かれると、私は今でもこの本を紹介しています。特に「働き方」や「休み方」、「自分時間の過ごし方」などについて考えたいとき、この本を、そしてフィンランドを思い出します。
追伸
今回のnoteは、エッセイスト・旅行ライターの中村洋太さんのイベントに参加して旅行に関するnoteを書きたくなったので、書いてみました。
トラベルライターに関する質問にもたくさん答えてくださっている中村さんのnoteもぜひご覧ください!