確かめに行こう

私がピロウズで最初に聴いたアルバムはジャケ買いした「GOOD DREAMS」だった。フォークが夜空に浮かぶ、ヘンテコだけど綺麗な色彩で描かれた可愛らしい絵。

あの絵のイメージのまま、ピロウズの世界観はずっとヘンテコだけど綺麗で可愛い。整った美しさじゃなくて歪でユニークで繊細で、そこが最大の魅力だ。

例えばGOOD DREAMSの最後に収録された「Rosy Head」

ペンギンの恋は無表情
つまんない
絶妙なスパイスがない

意味なんてないようなヘンテコなフレーズなんだけど、その場面を想像するとなんだかシュールで可愛らしい。

このアルバムに出会って、意味のない創作物がこんなに魅力的なことがあるんだと知った。そして意味なんてなくても、あとから聞き手が勝手に意味をつけたり解釈したりするのも楽しい。


ピロウズに出会った当時は暮らしていた環境が悪くて、苦しくて壊れそうな日々をやり過ごしていた。だけどヘッドフォンで耳を塞いでこのアルバムをずっとリピートしている瞬間は救われてた。
他のどのアルバムよりも軽くてスッと心に入ってきてすぐ大好きになった。今でも一番好きなアルバムだ。

他にも大好きな曲、大好きなフレーズは沢山あって、例えば35周年ライブの豊洲PITでもやってくれた「TRIP DANCER」のこのフレーズ。

海を逆さにした様な空
レインコート着たまま
溺れそうになっても

憂鬱な心情をこんな風にファンタジーな歌詞にできる人がいるなんて。同じように憂鬱な気分になってもそれをひっくり返してくれそう。豊洲PITでは2曲目にこの曲をやってくれて、(1曲目から泣いてたけれど)ただ良い曲すぎて意味が分からないくらい涙が出た。


あとは重たいバラードも凄く良くて、最近は「カッコーの巣の下で」をよく聴いている。この曲はさわおさんがネグレクトの家庭で育った人に向けて書いた曲だと記憶している。

傷痕はもうただの
トレードマークだろ

同情でもなく押し付けがましさもなく、ただ一緒に悲しんで、それでもそんな傷大したことないだろ?と言ってくれているようで、それが嬉しかった。

本当はまだまだ語り足りないくらい大好きな曲やフレーズが沢山あるけどキリがないのでそれはまたどこかで。


そんな風に私はピロウズの曲のユニークさに救われたり、時には一緒に悲しい気分になったり、勝手に色んな解釈や想像で楽しんだりしてこの20年間生きてきた。
私の人生の半分だ、でもまだ半分なんだ。

ここ数年は新曲も出していないしソロがとても良いから、さわおさんがメンバーへのストレスを感じているなら正直もう解散してもいいんじゃないか、なんて思ったりもしていたけれど、35周年の豊洲PITで大泣きしてやっぱり考え方が変わった。ずっと解散しないで。こんなに沢山の良い曲があるのにもうライブでやらないなんて勿体無すぎる。



他人と意見が合わなかったり、好きなものが違ったり、世間とのギャップに苦しんだり、そんな私がピロウズのライブに行くといつも思うことがある。自分が普段感じていることやおかしいと思っていることは間違っていなかったんだと。それをこれからも確かめに行きたい。


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