「ラブワクチン」終えて
3月14日、1ヶ月半の稽古で作り上げた
舞台「ラブワクチン」の幕がおりた。
私としては、2年半ぶりの舞台。
それも2年半前までは毎日のようにお芝居のことを考えて、10年間舞台を続けてきた人間だった。
もう舞台には出ない。そう決めた2年半前から
時間は経ち環境が大きく変化した。
今回の舞台はたまたま元SODの方が主催で旗揚げを公演をするということでオファーをいただいた。
断ることも出来たけど、
私はすぐにOKの返事を出した。
2年半前に舞台をやめて久しぶりに演劇をすることの楽しみと不安が大きくて、胸がすごくどきどきしたのを覚えてる。
興味があれば素直に飛び込んでみる
セクシー女優になった時と同じ、
勢いで決めた。
初めての顔合わせ。
何となく顔見知りの人が何人かいるのかなという小さなグループの空気感と
プロの役者さんだらけで私は場違いなんじゃないかという想いですごく心を閉ざしていたのを覚えている。
もう稽古や自分の芝居だけ頑張ればいいや。
同じ場所の劇団員じゃなければ
ひとつの舞台のために集まって、
終われば何事も無かったかのようにそれぞれの人生を歩き出していくんだし。
そう思っていたところに作演・出演の友池さんが言った。
「仲良くないと芝居もしづらい。できるだけ仲良くなっていこう」…不安が増した。
そもそもセクシー女優とお芝居をすることに嫌な気持ちも持たれていないだろうか。そんなことばかり考えていた。
そうやって、
共演者と話すこともしないでいいと思っていたところに宮藤あどねちゃんが声をかけてくれた。
「写真撮ってくれませんか?」って
絶対に私よりも芸歴も長く年上の方なのに
すごく丁寧に挨拶をしてくれて、
なんだか少し心が楽になった。
帰り道は喫煙所で煙草を吸う共演者の方を待つ勇気はなくて、あどねちゃんとスタスタ猫と犬の話をしながら帰った。
初稽古。
今出てる台本のセリフは覚えなくていいと前回の顔合わせで言われていたから、
何となく台本を読み直す程度で全然覚えていかなかった。
すると稽古が始まる前から、
台本を離して声出しをする座長の岡部直弥さんが目に付いた。
驚きしかなかった、主人公でセリフも多くて
覚えなくていいって言われてもセリフを覚えてくるこの貪欲な役者魂に心が震えた。
その日の稽古終盤、吉田知生さんは自前のカメラと三脚で稽古動画を撮りさっそくグループLINEにあげていた。
自発的にこの舞台のためを思った行動をしている2人をみて、これは相当な覚悟で稽古に臨まなきゃダメだと確信はしていた。
稽古。
撮影等の仕事をしながらの稽古期間。
前の稽古から間があくと、人見知りが初期状態に戻って心を開くのが難しくなっていく。
稽古の序盤は自分のお芝居よりも
みんなとの関係性にすごく悩んでいた。
多分それがみんなにも伝わっていたのか、
同じシーンで関わる板橋康人さんや国崎恵美さん岡田竜二さん、座長の岡部さんも。
たくさんの人が話をしてくれた。
多分とっつきにくいオーラが出てたからかな、
可愛い可愛いって優しく気遣ってくれて。
その優しさに私は自分の悩みがちっぽけで馬鹿げてるということに気づいて、
心を閉ざしていたことに申し訳なさでいっぱいになった。もう人見知りは卒業しよう。優しい共演者のみなさんのことをもっと知りたい。素直にそう思えた。
そこからはセクシー女優の茉宮なぎとしてではなくて、本名の本当の私で接することが少しずつ出来て、毎日が楽しくなっていった。
いつの間にか、
稽古時間が経つのが早く感じるようになって
自分からもっと仲良くしたいと話かけにいったり、気になることをLINEしてみたり。
本当にいつの間にか、
共演者の方達を好きになって、
この舞台を成功させるにはどうしたらいいか、舞台のことばかり考えていた。
夢に共演者の人たちが出てきたことも数えられないくらい何度あった。
仕事が忙しそうな相手役の倉貫匡弘さんは
2人の関係性をリアルなものにするために
プライベートな質問をたくさんしてくれた。
倉貫さんはものすごい先輩なのに、ゆるっと柔らかい雰囲気でいつもいてくれて。
あぁ、こうゆう人あたりの良さも魅力として売れる理由なんだなと尊敬し、本当に学ばせてもらった。
ちょっとチャラそうと思っていた池田貴栄さんは、話してみたらとっても真面目でお芝居に熱い気持ちを持っている人だった。
元ジャニーズJrの後藤泰観さんは、自分の出ないシーンの稽古もしっかり見て、心にグッとくる音楽を作りながら自分のお芝居に対しても妥協がなかった。
本番の全公演録画をして、疲れている中でもみんなのためにアップロードしてくれた平野隼人さん。いつでも変わらない熱量に、どうしたらそんなに安定感のある人間になれるんだろうって思っていた。
毎日稽古場に来ていて、本番までずっとずっとみんなのことを温かく見守ってくれた大川さん。どんな悩みも全部受け止めて聞いてくださって一生感謝してもしきれないほど。
顔合わせから本番が始まる前までに、
私の気持ちは180度変わっていて
このメンバーにならどんなことも捧げられるような愛しさを感じた。
身体は疲れているはずなのに
心が豊かで、睡眠時間が短くても毎日元気だった。
みんなに会えて、みんなでお芝居ができる
あの時間が1番の栄養剤だったなって思う。
本番10公演。
あっという間だった。
全公演、空気感がどれも違って思い出したらキリがない程思い出がある。
楽しかった。本当に楽しかった。
観てくれるお客さんがいて、
大好きな共演者のみんなとこんなに素敵な時間を共有できたこと。
私は一生忘れないと思う。
もう辞めたと思っていた舞台も、
「ラブワクチン」が復帰作だったから
またやりたいと今はすごく思っている。
この舞台に立って
間違いなく私の人生が変わった。
美加「ネガティブなのは、不幸になっても傷つかないためのワクチンみたいなものなの。」
そう思っていた私が
今は未来に大きく期待している。
1年後2年後の自分がこの気持ちを忘れないで
前を向いていて欲しいな。
舞台が終わればそれぞれの人生を歩いていくんだから。稽古初期に思っていたそれは変わらないけど、
何となく俯瞰しながらそう思っていた頃と違って、
みんなの人生をこれからも応援して、
活躍している姿を自分の目でちゃんと見に行きたいなって思う。
素敵な出会いと経験に
心から、ありがとうございました。
一ノ瀬美加役/茉宮なぎ