最後に残るのは「正解のないもの」
AIが仕事を奪う!?
インターネットが日常的になってから20年、今では「AI」の話題が花盛りですね。
将来、半分近くの職業がAIに置き換えられてしまうといった予測をしている方もおられます。
「将来、就ける職業がなくなってしまうかもしれない」と考えて恐怖を抱いている人もいるかもしれません。
AIは「正解のあるもの」に強い
いろんなところで言われているものなので、今更感もありますが、AIは、「知識問題」に強いです。
つまり、「正解のあるもの」においては、人間よりも正確であり、人はそのうち太刀打ちができなくなります(今でもそう?)。
ただし、そうするためには、膨大なデータを入力する必要があります。
データ入力も機械でやっているんじゃないの?と思われた方もいるかもしれませんが、ほとんどは「人手による手入力」です。
近年のインターネットが日常になってからの文書であれば、パソコンで処理できるようなデータとして保存されているので取り込むのが容易ですが、一昔前の「ワープロで打って印刷して原稿提出」とか、「手書きの原稿しか手段がない」ものは、データすら残っていないので、手作業での入力しか選択肢がありません。
OCR(自動読み取り)なる機能もありますが、印刷が少しでも曲がっていたり、かすれがあったりすると、とたんに読み取り精度が下がります。正確な情報を入れないと、正確な答えが返ってこないので、OCRを使ったとしても、人手によるチェックや修正は必須でしょう。
また、少し専門性のあるものや、実験データなどは、パソコン処理ができるようなデータがあっても、基本的には手入力になるものと思われます。
なぜなら、実験項などを「使える形で」取り込む手法を開発するのが大変だから。専門性が高くなると、そのようなものに取り組む人も少なくなりますし、パソコンのアルゴリズムを、他の専門分野の両方に習熟している人を見つけるのも困難です。
ちなみに、私もAI用のデータ入力のお仕事を体験したことがあるのですが、これがもうとにかく地道で緻密で大変な作業です。
「この量の論文を処理するのに、これだけの時間と資金をかけなくちゃならないんだ…」と呆然としたことを覚えています。
とはいえ、資金が潤沢にある大企業ではそれらの問題もなんとかクリアできる可能性があり、「正解のある」ものに対してはAIはとてつもない力を発揮するのでしょう。
今は、ちょっと専門性の高い分野になるとお手上げだったり、変なものをデータとして覚え込ませてしまうという問題点があったりと、実はまだ発展途上のようですが、そのうち整備されていくものと思われます。
AIの弱みって何だろう?
では、「質問をしたら正解を教えてくれる」AIの弱みってあるのでしょうか?
それは、「個々人の感情や感覚に関するもの」だと思います。
例えば、心理学のデータをAIに入れたとします。
ある人が、「パートナーから離婚を突きつけられている」という悩みを抱えて、AIに相談をしました。
相談した時の入力内容は、「家事も育児も頑張ってきたし、夫が低賃金だからとパートに出て働いてもいたのに、夫は別の若い女と一緒になりたいからと家を出ていくと言います。私は悪くありませんよね!?」だとします。
この時、AIは持っているデータを元に返答します。
「あなたが普段から旦那さんに感謝の言葉を言っていましたか?普段のコミュニケーションが足りないと、心が離れていってしまいます」
このような返答をしたとして、相談者は納得して反省するでしょうか?
まずは言われたことを受け入れず、パソコン画面を閉じてしまうと思います。
(なお、この返答は、いろんな離婚劇を見てきた私が勝手に考えたものですが、案外あるあるパターンなのではないかと思います)
個々の人の心に関するものに、一律の正解はありません。それぞれ、育ってきた環境も、植え付けられた価値観も違うからです。
また、それゆえに、データ入力する人が、先入観を元に、偏ったデータを入れないとも限りません。
単一の正解がないものは、AIで解決できる日はかなり遠いのではないかと思います。
結局は、アナログが最強では
インターネットが日常になった時、「何でもかんでも調べれば出てくるから、必要なものはインターネットで楽に全部手に入る」と錯覚するような雰囲気がありました。
でも、最近の状況を見ていると、お金儲けのために人を平気で騙す発言をする人がいたり、フェイクニュースを流す人が増えて、インターネットの情報への信頼性が揺らいでいるように感じます。
また、今までは無料で閲覧できたページでも、広告を見ないと先に進めなかったり、無料では閲覧できず有料(しかもサブスクリプション)になっていたりと、「楽して正しい情報が手に入る」とはとても言えない状況になっています。
「価値のある情報は、お金を払って手に入れるべき」という考え方も存在しますね。
だから、最後は、本当にアナログ的な「対面やリアルな場での情報収集」が、一番信頼できる方法になっていくのではないでしょうか。
人と会って話す、自分で体験する。
これらの価値の高さが見直される日が来るのではないかと思っています。