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会いにいける大臣。教育インタビュー3(ジェンダー・人権・子どもの権利編)

(インタビュー2のあと)

武:ありがとうございます。最後のテーマになるのですが、個人的に強く関心を持っている「ジェンダーや性教育」について、お話したいと考えています。

最近、少年院での学習支援など、夜に街に出歩いてしまう子ども達に対しての取り組みを少しずつ始めているという背景があります。

唐鳳さん:いわゆる、非行ですね。

武:はい。実際に学習支援などを行う対象者の中には、発達障害のあるお子さんや家庭環境に悩みを抱えている子どもが含まれていたりします。また、女の子であるということによって選択肢が制限されてしまうというケースが多いということも知りました。

日本を含めたほとんどのアジア諸国では女性は男性よりも弱い立場にあります。そのため、未成年の子供の場合でも男子よりも女子はあらゆる選択肢が限られています。両親や家族との間に困りごとがある子ども達は家にいたくないという理由から夜に街へ繰り出したり、家出をしたりします。男子の場合は力仕事など比較的若いことが有利になる仕事に就けたりもするのですが、若い女の子の場合は性的な産業や一昔前で言う「JKビジネス」に誘おうとする大人に声をかけられたりします。こういったケースよりも深刻な事案も含めて、東京や地方都市では大変多いのが現状です。

そして、子ども達をあらゆる魔の手から守るためには、子ども達自信が若い時から平等な権利や正しい選択肢を知る必要があると考えています。それは人権だけでなく、性教育、文化などを含めたあらゆる知識です。

唐鳳さん:もちろんです。それは生涯教育でもあり、人権教育でもありますね。

武:はい。ただ、性教育についてを議題しようとすると、日本の人はかなり消極的になります。性に関することを話したがろうとしません。性的なものと性別に関することを混同してしまう傾向があり、親御さんも先生達も避けようとするところがあります。

唐鳳さん:貴方はジェンダー教育の考えを持っていますが、日本文化として「性別」と「セクシュアリティ」は別の言葉ではありませんか?

武:それぞれ別の単語ではありますが、いずれにせよ大人達は「性」に関して子ども達に対して話したがりません。大人は子どもと話す正しい方法を持ち合わせていないのです。

Ky(日本語通訳してくれた友人・日本での留学経験有):原因の一つに、教えてしまうことによって彼らがより詳しく知り、実行に移してしまうのではないかと恐れているということが挙げられますね。

唐鳳さん:台湾では、男女平等については話す場合、文字通り、言葉としては「性差平等待遇」を意味しています。

むしろ、私たちは日本から翻訳してこの言葉を学んだので、日本にも同じコンセプトがあると考えています。そうではないですか?

武:「男女雇用機会均等法」ですね。

唐鳳さん:これは、「性」についてではないですよね。これは性行為には関係ない、「性差」について取り上げたものです。性差に関して、違いにかかわらず平等な扱いをしましょうと言うものです。日本の場合は非常にシンプルな形ですが、台湾では「ジェンダー平等法」「ジェンダー平等教育法」「CEDAW(Convention on Elimination of All forms of Discrimination Against Women・女性差別撤廃条約)」などの多くの法律になりました。そしてそれらを日本語に翻訳する方法がわかりません。笑

そして、国際条約の存在が差別がないことを確認する方法でもあります。

武:なるほど。

唐鳳さん:あらゆる差別の排除、女性差別撤廃です。このすべてが台湾の公共サービスで12年間実施されているため、新しい法案や新しい予算項目ごとに、必ず性別・ジェンダーへの影響に関する確認と、それに伴う非常に冗長な書類を提出する必要があります。

それはどの省庁も含まれるので、経産相や労働省、その他もふくめ全てです。彼らは性別と関係がないと感じることもあるかもしれませんが、すべての仕事について性別評価を提出する必要がありました。それはGIA(Gender Impact Assessment・性別影響評価)と呼ばれます。

人々が私たちが「ジェンダー主流化」と呼んでいるアイデアを学ぶことができます。つまり、すべての公共サービスが機能する中で、彼らは差別がシステムとしてのバイアスとして進行していることを認識していくのです。
憲法報告書などで義務付けられている新しい政策決定の準備をしていくとにおいて、ジェンダーインクルージョンについて考えなければ、それは即ち、自然に既存のステレオタイプを強化してしまうことになります。

婚姻の平等性などもそうです。議会の約4割を占める女性がその実現に向けて審議しているだけでなく、17の関連するすべ手の省庁が18の市民社会リーダー達と定期的に性別間の不平等がもたらす影響やそのコストについて話し合っています。

測定するものはすべて、ジェンダーに関するダッシュボードで恒久的に測定され続けるため、プロジェクトが終了した後もすべてが追跡されていきます。国民投票と憲法裁判所の判決が公共サービスに示されると、法律化に向けて何をすべきかが判明します。義理や同情などの感情的な動きではありません。

つまり、これには変革のための理論として、予測される効果について説明していく責任を持つことをシステムとしています。国内政務、教育、または性別に関連するいくつかの省庁だけでなく、すべての17の省庁について行う必要があります。
これが、私たちが変革してきた社会システムにおいて起こるべきものでもあります。垂直的に各自治体レベルでもやっていけますが、公共サービスとしては水平的な努力が必要です。

武:昔、日本は「男女雇用機会均等法」を施行しました。法律では、変化のように見えます。しかし、実際には、非常に多くのステレオタイプがあります。現代人だったとしても、当事者である女性自身であったとしても、どこにどんなバイアスがあるかを理解することはできていないのが現状です。

唐鳳さん:法律に紐付いているわけではないですからね。

武:台湾では、すでに実社会も変わっていると思いますが、日本の場合はもっと現実社会を変えなければなりません。笑 

唐鳳さん:そうですね。台湾は大きく変わりました。

武:法律も変わっていますし、人々の考えも変化していっている印象を受けています。日本では、同性婚などの法律はまだありません。地方自治体の条例の一部が変更された程度です。

Ky:日本では女性の権利を強化したり、ポリシーによってより良いオフィス環境を作るために多くの努力を注いだりしている印象です。

唐鳳さん:たとえば、台湾には日本から踏襲した法律が長い間ありました。女性は夫の姓をとることができるが、その逆はめったにないというものです。それがまだ有効であったとき、市民はそれに対して抗議しました。多くの人々は、「事実婚」と呼ばれるものにし、婚姻制度に従わないということによって静かに抗議し、登録を回避しました。笑

これは、LGBTコミュニティがすべきことでもありました。彼らは議会レベルで承認されているものの、法律とは切り離されていました。憲法裁判所と国民投票は最終的に、立法は平等な待遇に対する人々の期待に達していないという判断を降しましたが、それまでの間、実に20年も性別のステレオタイプに対する市民的不服従として事実婚を行動で示してきました。

彼らはヘテロノーマルな人々であり、また同じ姓を名乗る方法は既にあったのです。多くの人々が実際の法律に従った婚姻が可能でした。

影響を受けるはずがないにも関わらず彼らは、「レズビアンやゲイの友人が合法的に結婚するまで私たちも結婚はしない」といった声明を出したのです。これは実話です。非常に著名なミュージシャンなどを含む多くの人々がこれを唱えていきました。そしてこのムーブメントは議会の社会的圧力になりました。それは、その名前だけでなく、実際には、例えば、意図的に性別の評価手順を持っている社会規範を変えた規制を作ることです。大臣達は選挙にすると自分たちが敗北することが分かっていたため、市民社会に耳を傾けざるをえない状況となりました。
この種のデザインは、名前の変更だけでなく社会的規範を実施するために必要なものです。この数を逆にすると、多くの人は名前が変わります。市民社会は非常に弱く、社会規範は変わりません。
規範的なヘテロノーマルな人々に支えられている市民社会運動の議題設定は、クィアコミュニティまたはLGBTコミュニティをサポートしています。非常に重要なことです。

武:私たちも見習って、自分たちの行動によって法律をも変えていくという流れを作っていかなければなりませんね。

唐鳳さん:ジェンダー主流化。若い世代の人たちは社会情勢において様々な可能性があることを理解しています。これは大事なことです。

武:年配の方々は…

唐鳳さん:伝統や慣例がありますし、パブリックな議論には抵抗を感じていることが多いですね。

別の方法もあります。それは、シンプルに他の国や管轄区が開発した既に施行されている良い法案などを元に、踏襲したりコピーしていったりすることです。結婚の平等を行った台湾のように、新しいモデルややり方があります。法律として結婚しますが、義理の家族との繋がりはありません。私たちは個人と結婚していますが、家族とは結婚していないのです。
これはアジアの文脈において非常にユニークなものです。そして非常によく考えられたものでもあります。ハイパーリンクのように単純にコピーすれば、公開討論を避けることができます。 笑

「台湾はこれを何年もやってきた。本当にうまく機能しているらしい。じゃあコピーしてみましょう。」これは簡単な方法です。率直に言って、それがCEDAWコミュニティに参加したときに台湾が行ったことでもあります。私たちは世界中のあらゆる地域の事例を参考にし、「性別影響の評価は良いアイデアだ」と理解し、そのアイデアをコピーしただけです。(笑)

Ky:日本の最高裁判所も、女性が男性のものになる権利については明言していません。
唐鳳さん:そうですよね。

もちろん。ただ代替として古いシステムを置き換えるのではなく、新しいシステムを採用するだけでは、実際にはすぐにこの代替された新しいシステムを実行してくれるのは少数の人々だけです。これは事実です。でも、これによって新しいロールモデルが作成されます。それは新しい可能性を生み出します…彼らもまた日本人です。なので、日本人の人たちにとって、彼らの存在が実行可能なロールモデルの目撃になっていきます。

アネット・ルーが副大統領になったときのことを覚えています。彼女は女性政治家のロールモデルです。ツァイ・イングウェン博士が大統領になったとき、彼女は女性政治家のロールモデルを設定しました。特に、アジアの他のすべての女性指導者とは異なり、彼女の家族は政治家ではありませんでした。彼女は政治家の娘でも政治家の妻でもありません。彼女は完全に自分自身の功績によって大統領になりました。これは本当に良いロールモデルになりました。それはある種のユニークさでもあります。
一世代前の政治家とは関係のない女性政治家はあまりいません。 1つまたは2つの例を挙げるだけで、若者は「ああ、この代替システムはそれを使用することで何らかの利点があるかもしれません」と言うのに十分です。それが社会運動が機能する方法でもあります。

武:私たちが意思表示し、行動しながらルールを変え、その新しいルールに則って動いた人たち自身がロールモデルとなっていく循環が大事ですね。

武:お時間いただき、ありがとうございました。私たちの取り組んでいるFacing the Ocean(台湾・香港・韓国・日本のシビックテッカーが集まって実施しているハッカソン)がそのきっかけにもなればいいなと思っています。

唐鳳さん:良い行動をとるとき、お互いをこれまで取り組んできた物をコピーすることはできるかもしれませんが、相互にコミュニケーションを取っていくためには、共通コミュニティを作っていく必要があります。私たちにはCode for ALLもありますね。まさしく世界中の市民活動のためのコミュニティです。アジアの国々を集めることができれば、似たような文化を持っているかもしれません。そのため、同様の問題がいくつかあり、一緒に解決していくことも可能になりますね。既にkyや貴方達のチームが沖縄で開催していましたよね?

武:はい。Facing the Oceanと名付けて、第2回は台南で行います。

唐鳳さん:UDトーク(Code for Nerimaの青木さんが開発した文字起こしツール+自動翻訳機能)を使えば、言葉の壁があっても共有できますしね。笑

武:おっしゃる通りです。アジア圏内での連携について、既にアイデアをお餅だったりしますか?

唐鳳さん:私たちは、例えば、韓国の社会課題解決プログラムと非常に密接に協力しています。定期的に訪問し、プログラム内容を交換しています。実際、1月11日の選挙直後の13日、私は彼らのチームの講師側として市民活動家の人々と協同をするためにソウルにいく予定です。
こういったやり取りの多くは、容易にコピーできるソリューションを作成するためだけではないです。コラボレーションの新しい方法を見つけることも大切です。どの製品やサービスよりもこのモデルは持ち帰りやすいです。良いアイデアには運用上の制約はありません。笑

何かを学べば、すぐに持ち帰ることができます。開催国や協力国を増やし、メンターとジャッジを増席だけで、それは拡大可能なことです。たとえば、来年、桃園で開催される毎年恒例の社会イノベーションサミットでは、今年は高雄で開催されました。社会イノベーションパートナーシップ賞は、台湾で審査され、その後シンガポールやタイから渡されると非常に具体的に述べました。

私たちはそれぞれが独自のコミュニティを持っています。一緒になって、私たちの近くで起きているイノベーションを見て、「生物圏の持続可能性、社会の進歩、包括的ビジネスを促進するための最良のパートナーシップはどれですか」と問います。

これはアジア太平洋地域に広く役立つだけでなく、これらのコミュニティのベストプラクティスを競技者だけでなく審査員の間でも自由に共有できるようにします。これも非常に重要です。例えば、LITALICOさんでも、自分たちとは一緒に動いていくのは不可能だと思っているような人達と一緒に協同していくようなアイデアがあれば参加可能です。
今年の勝者の1つは、非常に大規模な企業であるカルフール台湾と、動物福祉と権利の動物協会であるカルフールとのコラボレーションでした。彼らは、共同プロモーションとしてケージフリー卵に取り組んでいます。このプロジェクトは大成功しました。通常、カルフールと動物の権利に関する支持グループが一緒に働くとは思わないでしょう。パートナーシップの可能性が低いほど、アワードを獲得する可能性が高くなります。それについて何か考えがあれば、アワードについてもお話します。また、台湾にいらっしゃることを歓迎していますし、これらの新しいパートナーシップのアイデアももたらします。これは、他のどの製品やサービスよりも簡単にコピーできます。これが、コピーしやすいパートナーシップモデルであるモデルです。

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mamisada
シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。