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絵本美術館&コテージ 森のおうち 2泊3日滞在:作品紹介
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長野県安曇野の絵本美術館 森のおうちさんで10月7日(金)から、舘野鴻作品展「問いかける生きものたち」が開催中です。10月10日に開催されたワークショップ「たてのくんと森のおうちの森を探索しよう」に参加するため、主催の舘野さん、絵本作家の近藤えりさんと共に2泊3日間滞在しました。
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こどものせかい10月号「ハロウィンの たからもの」(至光社)を上梓されました。10月26日〜11月1日まで、神保町ブックハウスカフェにて絵本原画展開催中。
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絵本美術館 森のおうちさんは、まさに絵本に登場するようなかわいい二階建ての木のお家です。扉を開けると、目の前に舘野さんからご挨拶の看板が出迎えてくれました。この作品展は、舘野さんが2022年に上梓された本を中心とした原画展です。
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看板のすぐ右側のお部屋には、舘野さんが作(筆名:たてのひろし)、絵を私が描かせていただいた『ねことことり』 (世界文化社)の原画を全点展示しています。円形のお部屋にぐるっと表紙絵から本文、裏表紙絵まで、きれいに飾っていただきました。
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こちらのお部屋では人前式も行われるとのこと。神聖な場に初の単行本の原画を展示させていただき、その感動を噛み締めました。お客様と絵の前で記念撮影をしたり、サインを描いたり、触れ合うことができて楽しかったです。
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中央の階段を上がると、目の前には舘野さんの『しでむし』と『ぎふちょう』(偕成社)の表紙絵が!ものすごい迫力です。
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2階は左右二手に分かれてお部屋があり、まず右へ進むと、部屋手前の踊り場には舘野さんの手掛けられた本と、舘野さんのお師匠さまである熊田千佳慕さんの絵本が展示された本棚、そして壁には教科書の絵が。奥のちゃぶ台は熊田さんが実際に使用されていたものを舘野さんが受け継いだそうです。
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部屋へ進むと、そこは『つちはんみょう』 (偕成社)の原画全点が迎えてくれます。すでに何回か原画を拝見していますが、何度繰り返し見ても毎回初めて見たような新鮮な気持ちになります。
白い花は実は白くないこと、滑らかに見える表面にも産毛があること、描かれていない画面の外も想像させる構図、どうしてこんな風に描けるのか⁉︎隅々まで細部にこだわって描かれている絵は、まだまだ私には理解が及ばない物事が隠されているようで、もっと見たい!という気持ちになります。
部屋の中央に位置するガラスケース内には、絵コンテや取材ノートが並んでいます。8年かけて解明されていなかったツチハンミョウの生態に迫ったとのこと。真に対象に迫ればそのいきものならではの壮絶なドラマと生き様が見えてくる・・・舘野さんの緻密な絵からは、どんなちいさなことも見落としてはならない、実は目の前で大切な出来事が今まさに起こっているのだ、と教えてもらっている気持ちになります。
長細い形の部屋で、まるで繭のようだと思いましたが、列車の中をイメージした建築だそうで、絵の額は車窓をイメージしているそうです。
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更に部屋の奥に進むとそこは夜の世界。ちいさなかがくのとも「みかづきのよるに」(福音館書店)の原画です。ぼんやりと暗闇に浮かぶ二つの影。父と子のある夏の思い出の物語。私にはこどもはいないし、蛍のにおいも嗅いだことはないのですが、例えば温泉旅行で泊まった宿の天井の模様とか、夏祭りの帰りに浴衣の帯で蒸れた汗の感じや、花火のにおいなど、自分がこどもだった頃の出来事を思い返すと、細部までは全く覚えていないけれど、ところどころ記憶している部分があって、その時のことを思い出させるお話に切なくなります。ソフトパステルを使って指で描かれた絵は、ぼんやりとした視界の中を光で照らしたように、曖昧な記憶が断片的に鮮明に蘇る感覚と似ている気がします。
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部屋を出て反対方面へ足を進めると、舘野さんの初の小説作品となる『ソロ沼のものがたり』 (岩波書店) の原画です。小説作品ですが、ほぼ全ページに挿絵があります。美しくて愉快で悲しい。良いも悪いもそこにはなくて、あるがままを受け入れて生きているいきものたち。流されるようで抗っている、その逆もまたあるようで・・・うまく言葉にできません。舘野さんがこれまで見てきたもの、感じたこと、出会ったいきものに寄り添った愛に溢れた眼差しを感じます。挿絵がとても美しくて、花の可憐な姿には胸キュンです。舘野さんの緻密な描写はことばになっても健在で、一方挿絵はあるものを「描かない」ことに徹底しています。これが引き算の美学というのでしょうか。
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向かいには、たくさんのふしぎ「うんこ虫を追え」(福音館書店)の原画が飾られています。オオセンチコガネの生態を調査し日々奮闘するたてのくんと、共同研究者のコンドーさんとの肉体派研究日記です。知力体力を使って全力で未知の探究を楽しむ様子に、こどもたちはワクワクが止まらなくなるでしょう!失敗の連続、推察も外れ…でも諦めずに続けていたら予期せぬ大発見! 読むだけで楽しいですが、新しいことを始める若い人に勇気を与える絵本だと思います。うんこ虫というだけあって、うんこがたくさん登場しますが、淡い水彩で美しく抜けのある絵で、なんだかうんこがおしゃれに見えます笑。
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1階のお食事スペースや通路などにも絵が飾られていて、本当に盛りだくさんで見どころ満載の作品展です。会期は2023年1月24日(火)までなので、ぜひ多くの方にご来場いただけたら幸いです。絵本も会場で販売していますので、ぜひ原画展と一緒にお楽しみください。
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イベント②対談「舘野鴻 ×酒井倫子(森のおうち館長)」
11月26日(土) 13:30〜16:00(13:00 開場)
※完全予約制、イベントのお申し込みは、お電話で受付中。0263-83-5670(9:00~16:00)詳細はチラシ裏面をご確認ください。
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舘野鴻作品展「問いかける生きものたち」
会期 2022年10月7日(金)~2023年1月24日(火)
※最終日15:30閉館
会場 絵本美術館&コテージ 森のおうち
長野県安曇野市穂高有明2215-9
開館時間 9:30~17:00(最終入館は16:30、変更日あり)
※12月~2月 9:30~16:30(最終入館16:00)
休館日 木曜(G.W.期間中は無休、祝日振り替え有り)
※変更日はHPカレンダーにてご確認ください。
アクセス 車→安曇野IC(豊科IC)より約20〜30分 無料駐車場 約30台
電車+タクシー→JR大糸線の穂高駅、又は有明駅下車、タクシーで10分
JR篠ノ井線明科駅からタクシーで20分
電話 0263-83-5670
メール info@morinoouchi.com