私の手のはなし
私の手は大きい。
身長161cmと、特別背が高いわけではないが、その割に手が大きい。
もちろん、大柄な男性には負けるが、私より手が大きくて私より小柄な人には会ったことがないと思う。
長袖の下着は八分丈がぴったり、という腕は短め仕様なので、おそらく肩から指先までのトータルの辻褄は合って人並みになっているはずだ。
人体の神秘。
自分の手が大きいことに気づいたのは7歳の頃。
七五三の前撮りで着物以外にドレスも着せてもらったのだが、そのときに着けたレースの手袋の指の股の部分がどうもフィットしないのだ。
あ、私って手が大きいんだ、と気づいた。
学校で友だちと比べ合いっこしても、身長は大きい方ではなかったのに、手はやはり大きく、指相撲大会をするとクラスで一番大きい男子にも勝ち、ますます自信をつけた。
他に手が大きくて役に立ったことといえば、ピアノだ。
私は3歳から高校2年生まで、決してうまくはなかったがずっとピアノを習っていた。
高校生になり、レッスンで弾いていたとある曲。
1オクターブ以上離れたその二音に差し掛かったとき、先生が「あ、そこは届かないよね」とフォローしてくれた。
だが、それを見事に裏切り、その二音を確実に押さえることができてしまった私は、気づけば先生より手が大きくなっていた。
ちなみに、私の手の特徴にいち早く気づいたのは、母だった。
大きくなって読んだ育児日記の出産時の感想に、「指が長い子だな」と記されていたのだ。
産まれた瞬間からこの個性が輝いていたのだと思うと感慨深い。
実を言うと、私はちょっと暇なとき、自分の手を見ていることが多い。
小さくてかわいらしい手には憧れることもあるけれど、私はこの大きい手が好きだ。
たまに人様からきれいな手だと褒めていただくこともあり、それがけっこう嬉しい。
アラサーになり、私のチャームポイントは手だなと思うようになった。
それを父に言ったら、「父さんのチャームポイントは、膝が痛いこと」とよくわからない返しをされた。
60代も大変だ。