マルタ島で変態に遭った話

大学3年生。
時が過ぎるのはあっというまで、人生一の経験から3年が経過していた。
いばらの教職道を歩きつつも、どうしてもやってみたいことがあった。

留学である。

長期の留学はかなわかったため、短期でどこか行けるところはないかと探したところ、高校時代の友人がマルタ島という島に短期留学していることを知った。

マルタ島?

当時の短期留学の定番と言えば、ニュージーランド、オーストラリアが一般的で、マルタ島は知らなかった。
しかしながら「マルタ島」というワードに惹かれ、結果、約10日間留まることとなる。

マルタではホームステイで、現地の語学学校に通った。
同じような日本人が何人もいて、ホームステイ先は皆バラバラであるが、学校で会えるため、いろいろな知り合いができた。

なかでも、みゆきさんとの出会いは忘れられないものとなった。
当時わたしより10歳は上であったみゆきさんは、とてもフレンドリーできれいなお姉さんという感じで、いろいろな国へホームステイされているということだった。

みゆきさんとは、マルタ滞在中に色々な場所へ行き、本当に姉妹のようによくしていただいた。
なかでも、ローズネットクッキーが好きで「ローズ」と呼ばれていた話と、旅先でついつい国名入り磁石を買ってしまうという話を、なぜかいまでも覚えている。

そして実際、磁石を爆買いしていた。

そんなある日、夜学校のみんなで会おうという話になった。
当時のマルタでは、夜に若者が集まってお酒を飲むような場所が近くになく、その場所もホームステイ先から少し離れていた。

とりあえず行ってみるか、と、国内で使える携帯電話もなくよく歩き回っていたな、といまでは感心するが、ホームステイ先をでた2分後。

一本道。

むこうから男が真正面から歩いてくる。

あまり顔をあわせないように歩く。

近づく。

すれちがおうとする。

しながら歩いている。

しかも、話しかけられた。

猛ダッシュで駆け抜けた!!

完。

色々とありますが、まず。
どうしてそんなに開放的なのか。
まだ外も明るい。

怖くなったわたしは、ホームステイ先へ戻り、ママにその事実を伝える。

が、なんと言ったらよいのか。
とっさなことで、頭が回らなかったわたしは、電子辞書で「変態」と入力しママに見せた。

そのときの反応は覚えていないが、とりあえずその日は家に引きこもることとした。

翌朝。
学校へはバスで15分ほどであったが、海沿いを歩くのが楽しくて、朝早くに家を出て海沿いを歩いて通っていた。

そのときも、脇を通る車に乗った現地のかたから、よく声をかけられた。
とても穏やかな国で、歩いていたわたしを不憫に思って乗せてくれようとしていたのだと思うが、警戒し、毎度歩いていた。

という話を、家に帰ってからして、両親にまたぶちぎれられるわけである。

マルタは本当に海がきれいで、ヨーロッパ人のバカンス地らしいが、飛行時間も長く、学生の頃に行けてよかった。
現在はいろいろと変わっているだろうが、現地の方々にもやさしくしていただいた。

時は経ち。
みゆきさんとは約10年の時を経て、新婚旅行で向かったドイツで再会することとなる。
ご主人の転勤で、現在はドイツに住まわれている。
SNSで繋がっていたものの、連絡はとっておらず、音信不通であったが、新婚旅行でまとまった休みがとれそうであったため、突然連絡し、やっとお会いすることができたのだった。
まったく変わらないとお人柄と外見で、本当に感激した。
その話はまたしたい。

これもまたマルタのおかげである。
学生の頃の経験は本当に財産だ。
みゆきさんとは日本であったことがないため、次回は日本で会いたい。
(ローズネットクッキーを携えて)

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