怖いものについて

怖いものがいっぱいある。

まず、知らないものは怖い。これが全部の根本かもしれない。物について知らないと、使い方を間違えて、危険になるかもしれない。ここで言う物には、道具とか化学物質も、言葉や愛などの概念も含む。人について知らないと、自分の言動で傷つけてしまうかもしれない。場所について知らないと、自分の居場所に戻れなくなるかもしれない。世の中には知っていることよりも知らないことの方が圧倒的に多く、それゆえ全てを知ることなど不可能だと知っている。だから世界は怖い。

始まりは怖い。1日の始まりも、新学期の始まりも、1年の始まりも、会話の始まりも怖い。始まった後にどうなってどう終わるのか全然わからないし、始まりは何かが終わってお別れすることを意味するからかもしれない。

終わりは怖い。終わりは何かが自分の知らないところへ行ってしまうことを意味するし、終わりがあれば次に新たなものが始まってしまう。

人の多い場所は怖い。知らない人がたくさんいて、自分が彼らの目にどう映っているかわからないからかもしれない。

怒っている人は怖い。怒られているのが自分でなくても、同じ空間に怒っている人がいると萎縮してしまう。怒りを不安定なものに感じるからかもしれない。怒りに包まれて、その人が見えないように感じるからかもしれない。何に怒っているのか、どうしてそんなに怒っているのか、どうしたら怒りが鎮まるのか、理解できたら怖くなくなりそうだ。その人が怒っている理由や、怒っている時の言動の背景を知りたい。

落胆されることが怖い。誰かが自分に何か期待してくれたとして、それに応えられないと自分の価値がないと思う。自分に落胆することも怖い。過去の自分の期待に応えられなくて、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

自分が怖い。自分のことは知っているようで全然知らないからかもしれない。自分というものは常に変化していて、それをその都度理解して、自分の感情を受け止めないといけない。明日の自分が今日の自分とは違うことも怖いし、それでも同じようなことを感じて考える同一の人間であることも怖い。明日の自分は今日までの自分がして来たことを引き継がないといけない。自分のことを知らないから、どうして色んなことを上手にできないのか、どうすればいいのか、何を怖がっているのかわからなくて怖い。自分の言動が、他者にどんな影響を与えてしまうのかわからないのも怖い。

昼は怖い。星が見えないからかもしれない。

おわり

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