手乗りオオゲジ
玄関にゲジがいました。
ゲジナン地方の民にとって、ゲジは神聖な存在です。
とか言っておきながら、私は「ゲジ」と「オオゲジ」が違う種類だと知らず、この記事を「ゲジ」表記で投稿するところでした。小さいのがゲジ、でかいのがオオゲジらしいですが、模様にもゲジとオオゲジで違いがあるらしいです。
今回出会った子は、サイズと模様からオオゲジのようです。
早速、ペットボトル容器でつかまえました。でかいから入りにくい……。嫌そうにしていたオオゲジでしたが、やがて観念したように、容器の中でおとなしくなりました。
もちろん逃がすつもりではありますが、こんな狭いところに生き物を閉じ込めて、のんびりと写真を撮っているのだから、呪われても文句言えないですね。
殺人シャチ「ティリクム」の話を見て、メランコリーになっている今日この頃です。生き物と誠に仲良くなりたいならば、閉じ込めるべきではないのかもしれません。
さて、せっかくでかいゲジに出会えたのだから、これは、ずっと憧れだった手乗りゲジのチャンスです。
ゲジは滅多に人を噛むことがなく、毒も弱く、ゴキブリなどを食べる益虫であるといいます。「滅多に人を噛まない」って、実際どのくらい噛まないのでしょう。毒も弱いとは、どのくらいなのか。
それは自分の手で確かめないと分かりませんよね。
ということで、庭で初めての手乗りゲジをしました。しかしそのとき。突然、すぐ近くまでスズメバチが迫ってきました。
スズメバチが苦手な私。思わず奇声を上げながら、ゲジを持って部屋に走り帰りました。ワガママかもしれませんが、スズメバチには刺されたくないのです。
動揺してスマホを落としましたが、幸い割れませんでした。そしてなんとか、オオゲジも潰したりせずに済んだ模様です。
こういうことがあるたび、私にはペットを飼うとか子育てとか、車の運転とか壊れ物の管理とか、無理だなぁと思います。ハチなどがいてパニックになると、持っている物の大切さを忘れて放り投げてしまうんですよね。
▲スズメバチといえば、こちらの記事が深かったです。
部屋に連れ帰られたオオゲジは、困惑したように、そっと服の陰に隠れました。私は、スズメバチパニックで震えが止まらない手で、服を広げ、オオゲジを撮りました。
そういえば以前にも、でかい蜘蛛を逃がそうとして地面にしゃがみ込んだらアシナガバチが向かってきたことがあり、思わず蜘蛛を放り投げて逃げてしまいました。
ハチに敵だと思われたのか、「うまそうなもの持ってるやつ」と認識されたのか、たまたまハチが近くにいただけなのか。いずれにせよ、ハチが近づいてきたくらいで虫を放り投げるようでは、虫好きは名乗れませんね。
今回もスマホを投げてしまってスマホに申し訳ないです。しかもこのときのパニックで外にデジカメを置き忘れ、あとで降った雨がデジカメに当たった模様。無機物好きも失格ですね。
さて、部屋に放たれたオオゲジがどこかに行ってしまいそうなので、震えが止まらない手で手乗りにしようとしました。が、ゲジは手を避け続けます。手が熱いから嫌なんだと思います。
体温が上がったせいか、どんどん虫に嫌われる……。自ら近寄ってきてくれるのは、アリやゴキブリだけかも。
最近見た動画で、カエルの飼い主さんが「カエルに触れるときは手を冷やしている」と書いておられたので、私も水道で手を濡らし、少し冷やしてみました。その後、手を近づけるとオオゲジは手をハミハミして、水を飲もうとしました。
ゲジはあまり人を噛まず、毒も弱い……。とは言われても、ゲジもムカデ綱だし、立派な顎肢を持っているように見えます。オオゲジでかいし、毒が弱いからといって痛くないとは限らないし。
やっぱり私はまだ、オオゲジにハミハミされる勇気がありませんでした。スズメバチパニックで動悸が治まらないのと、こないだ仕事でケガしたところがやっと治ったばかりだったということもあり、弱気になっていました。
ということで、ティッシュに水を含ませてオオゲジにあげました。すると、手を嫌がっていたオオゲジを、手に乗せることができました。
私の手はまだ、ぶるぶる震えています。こんなに震えていると、自分が恐れているのがスズメバチなのかオオゲジなのか分からなくなってきます。これが吊り橋効果というやつですね。
虫との出会いは一期一会。特定の虫を探しても意外と見つからず、でも出会うときは突然出会ったりするんですよね。
こうしてでかいゲジと触れ合えるのは、滅多にないチャンス。なのにスズメバチパニックで、残念ながら心ここにあらず……。スズメバチに何かされたわけでもないのに、なぜ怖いんでしょう。せっかくの機会に集中できず、無念です。
少し明るいところに移動。手に乗せておいてなんですが、ゲジはぷわーっと脚を広げた姿の方が美しいですね。
ティッシュで手が隠れ気味だけど、オオゲジのサイズがなんとなく伝わる写真になっていれば嬉しいです。
やっぱり顎肢が立派ですよね〜。か細いムカデより立派に見えるくらいです。
顎肢……いわゆる毒牙。しかし牙ではなく、脚が変化したものである。なので、「噛まれる」というのとは実はちょっと違うらしい。
お顔がすごく可愛いから写したかったのですが、あまり写らず。スズメバチパニックが治まらず、正面から接写する発想がなかったことが悔やまれます。ムカデの仲間なのにカマドウマみたいに見えるのなんでだろう。
↓カマドウマ撮影回
ゲジの顔が見たい方は、画像検索でお願いします。
脚先が、なんとなく昆虫と違いますね。
多足類ってなんだか、古代生物みたいで不思議です。美脚。
見慣れてきたら、あんまり脚が広がっていないこのポーズも綺麗ですね。
けれどあまりにも神々しいこのお姿、ニンゲンの美的感覚のキャパシティをオーバーしてしまうのかもしれないですね。
いつか私たち地球人類の美的感覚が正常に戻ることを願うばかりです。だって、この子たちはずっと一緒に地球で生きてきた仲間ですもんね。
宇宙人は人型じゃなくて、我々がもっとキャパオーバーするような姿してるかも。地球外生命体を探すならば、地球上の生命体でキャパオーバーしている場合ではないですね。
益虫とか害虫とかいうのはニンゲンの勝手解釈であり、「命とは何なのか」ということがまだ何一つ分かっていないと思うんですが、まず益虫から共存を考え、多様性を見直し、「不快害虫」という言葉をこの世から消し去り、オリンピックの五輪の輪に蛾が止まっていたら、自然からの友好大使でありお告げであると考える、そういう姿勢を目指したいですね。
なんて、アシナガバチにビビって蜘蛛を放り投げ、スズメバチにビビってスマホを投げ、神聖なオオゲジをペットボトルで捕まえ、昔ベジタリアンを目指したものの数日で断念し、カラオケ中に地震にビビって仲間を置いて我先に逃げた私が言えることではありません。
とりあえずゲジでも見て癒されましょう。
「ムカデ ハンドリング」の画像検索結果も、見てるだけなら楽しいです。人の手や腕に乗っていると大きさが分かりやすくて、「こんなでかいムカデいるんだ~」ってワクワクします。
実際、巨大ムカデが目の前にいたらどうするとか、生息地と生活圏が被ったらとか、地球温暖化や外来種問題やなんやかんやで大ムカデと出くわすことになったらとか、そういう現実問題は思考の外に追いやって、ファンタジーのように眺めます。
ところで、ティッシュにも化学成分とか入っているんですかね。ティッシュに水含ませて生き物にあげて大丈夫なんでしょうか。手にも保湿成分塗ってるし。何が生物に悪いか分かりません。
このあとオオゲジを外に逃したのですが、少し遠くの地面まで置きに行ったらまた、スズメバチに絡まれるんじゃないかと気が気じゃなく……。窓のすぐ外の壁に逃してしまいました。
けどなぁ、無事地面に戻れたかなぁ……。なんか壁の上の方まで登っていったし……。
家に迷い込んだゲジは数日後に死んでいることが多いので、ゲジは繊細なイメージです。
迷いナメクジみたいに、どこかで干からびて死んでいたらどうしよう。壁にいたら目立つし、スズメバチや鳥に狙われるかも……。
オオゲジが窓付近に留まっていた場合、窓を開けた際に傷つける可能性もあるし。やっぱり、目立ちにくくて窓から遠い、草の生えた地面に下ろしてあげた方が良かったですね。
↑以前アリを逃した途端、ハエトリグモに狩られたこともありました。オオゲジの無事を祈ります。
にしても生き物ってすごいですね。私なんて、自分の指先くらいしかないスズメバチを恐れているのに、生き物たちは弱肉強食の世界で、身一つで戦っているのです。カンカン照りの日も、嵐の日も。
そう思うと、落ちこぼれの私としては、猛者が跋扈する弱肉強食の外界から、人家に逃げ込みたくなるゴキブリに親近感が沸くんですよね〜……。外界で新鮮な肉や草を食べるよりも、ゴミみたいなものを食べてでも、怖い外界から逃げたかったのかなと。
ゴキブリが実際どういう考えで入ってくるのかは知らないけど。逃げたり隠れたり、夜にカサコソ歩き回りたくなるの、分かります。
とりあえず、ゲジナン地方の者として、手乗りゲジができたことは良かったです。けど、オオゲジが怖くなくなったとしても、スズメバチを恐れているようでは一進一退ですね。
まずスズメバチを克服しないことにはどうにもならない……。っていうかまず、アシナガバチや、ミツバチでさえも怖いので。ハチ恐怖症です。克服の道のりは長そうです。
手乗りスズメバチは私には絶対無理だけど、「手乗りスズメバチ」で検索すると、やっている人がいてすごいです。
ゲジは熱い手を嫌がっている感じだったなぁ……。というか虫はみんな、熱い手が嫌そうでした。水で手を冷やすまでの間、ゲジに手を出したらずっと避けられ続けていたので、あの様子だと確かに「人を噛むことは滅多になく、ゴキブリを食べる益虫」という解釈で合っているんじゃないかなと思います。追いかけても攻撃してこず、逃げ回るだけだし。(※ムギュッとつかんだりしたら、流石に噛むと思います、多分。)
自分からトコトコ近づいてきてくれたのはアリやゴキブリくらいのもの。それも、ゴキブリ手乗り時は秋の夜だったので、こちらの体温が下がっていたためかもしれません。
ゴキブリ初齢幼虫がなぜか近づいてきたことがあった覚えもあるのですが、手が熱いとゴキブリも嫌がるんでしょうか、どうなんでしょう。
今回はハチに取り乱してしまいましたが、ハチもよく見ると可愛いものです。恐怖心が先立ってしまってなかなか……ですけどね。
ムカデも美しいですね。ゲジナン地方には三上山の大ムカデ伝説がありますから、ムカデも特別な存在です。
ではオオゲジ手乗り回はこれで終わります。最後までお付き合いいただきありがとうございました!