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短編小説5 『写真にとけこんだぬくもりの記憶』 3分で読めます

はじめに:リアルの経験 x ChatGPT x 村上春樹の文体

この短編小説は僕の書いた原文を元にChatGTPに加筆修正してもらい、さらに僕自身が加筆修正をして完成したものです。文体と作風は村上春樹というプロンプトを入れました。「僕 x ChatGPT x 村上春樹の文体・作風」を楽しんでいただけると嬉しいです。(Claude 3.5にも加筆修正してもらっています)

写真に閉じ込められたぬくもりの記憶

「なんとなく」という言葉には、不思議な重みがある。それは水の中で膨らむスポンジのように、どんどん大きくなっていって、気がつけば部屋中を占領してしまう。そんなことを考えていたら、明日の授業の準備をすっかり忘れていた。苦笑いを浮かべた僕の顔を、彼女が時折覗き込むように見ている。その視線には、まるで誰かの夢の中から覗いているような柔らかさがあった。
 
彼女と僕は、彼女が運転する車で、海を渡る長く高い橋の上を走っていた。 僕たちが向かうのは、小さな島にある美術館だと聞いている。この街も、この橋も初めて見る景色だ。そういえば、彼女にリアルで会うのも初めてだった。
 
彼女は時々前方から目を逸らし、僕の方を向いてちらほらと話しかけた。その度に車が少しだけ蛇行するものだから、「欄干だけは避けてほしい」と心の中で祈っていた。そんな時、彼女の左手の親指に小さな血豆を見つけた。それは誰かの記憶の欠片のように、確かにそこにあった。
 
その美術館は橋のたもとから少しだけ高台にあり、一本道の行き止まりに立っていた。小さな庭には、不思議なオブジェが置かれ、アントニオ・ガウディの建築を彷彿とさせる曲線と色合いが目に映る。中に入ると、普通の美術館とは少し違う雰囲気が広がっていた。作品が「展示されている」だけでなく、「生まれてくる過程」がそのままに感じられる空間だった。
 
二階へ続く螺旋階段は、僕たちを別の次元へと導くように、ゆっくりと上へ続いていた。二階の中央に大きな木のオブジェがあった。まるで誰かの心臓の鼓動のように、空気を震わせていた。海からの風が運んでくる微かな塩の匂いと木の持つぬくもりが、目に見えない糸となって絡み合う。けれども決して失われないものがそこにはあった。
 
木曜日の夕方近かっただったからだろうか、僕たち以外に来客の気配はなかった。カフェも兼ねた受付でカフェオレを頼んだ。静かに微笑む係の女性が湖のような穏やかな表情で、海に面した外のテラスまで持ってきてくれた。夕焼けが徐々に色を変え、閉館間際の静けさが深まる中、僕たちは美術館と海の間のテラスで写真を撮ってもらった。
 
その夜、スマートフォンの画面に映る写真を見つめていた時、不思議な感覚に包まれた。そこには確かに僕たちが写っているのに、同時に誰か別の人たちのようにも見えた。恋人同士かもしれないし、新婚旅行中の夫婦かもしれない。あるいは長年連れ添った老夫婦の若かりし日の姿かもしれない。その曖昧さが、逆に確かな現実として心に染み込んでくる。写真から滲み出ているのは、友人としての距離感を逸脱してしまったような親密さだった、
 
翌日、朝もやの立ち込める駅の改札口で、僕は言葉を探していた。まるで砂浜で小さな貝殻を拾うように、慎重に、でもどこか気おくれしながら。彼女に伝えたかったのは、写真にとけこんだあの不思議な感覚のことだ。「なんだか、僕たち、まるで...」 言葉が宙に浮かんで、そこで止まる。

彼女は一瞬、まるで誰かの夢の中から目覚めたような表情を浮かべた。でも、すぐにいつもの柔らかな微笑みに戻る。「当然じゃない?」という言葉は口には出さなかったけれど、その微笑みがすべてを物語っていた。それは誰かの記憶の中にあった微笑みのようでもあった。

東京行きの朝一番の新幹線の車窓から見える景色は、どこかぼんやりとしていた。でも、それは雨や霧のせいではない。僕の意識が、現実と非現実の境界線上をふらふらと漂っているからだ。カタカタという規則的な車輪の音が、まるで誰かの心臓の鼓動のように響いてくる。

その時、不意に気づいた。人は誰でも、どこかでぬくもりを求めている。それは凍えた手を温めるような、そんな直接的なものじゃない。もっと深いところで、魂そのものが誰かのぬくもりを欲している。そして同時に、誰かに自分のぬくもりを分けてあげたいと願っている。それは矛盾しているようで、実は完璧な調和なのかもしれない。

窓の外を流れていく早送りの景色を眺めているうちにに、もう一つの真実に気づいた。二つの願いが出会う時、そこには不思議な化学反応が起きる。写真に映った僕たちのような、説明のつかない親密さが生まれる。それは偶然のようで必然、必然のような偶然。その瞬間、僕たちは深いところで繋がっていた。まるで、遠く離れた二つの井戸が、地下水脈でつながっているように。

永遠というのは、案外そういうものなのかもしれない。決して色褪せることのない一枚の写真の中に、確かなぬくもりとして溶け込んでいく。それは誰にも見えないけれど、確かにそこにある。ちょうど、目を閉じても心の中で鮮やかに光を放つ夕陽のように。     
                     
エピローグ
半年が過ぎ去り、春の気配が確かに街に染み渡る頃、僕らは再びその美術館に足を運んだ。当然のことながら、彼女の指先にあった血豆は消え去っていたが、今度は僕の指に新たな血豆ができていた。昨日、うっかりドアに挟んでしまったのだ。その血豆は、何かの暗号のように感じられた。時間がループしているような、でも少しずつ形を変えながら進んでいくような。

夕陽が海に沈む光景を眺めつつ、僕の心の中で『Beautiful World』という曲が静かに流れていた。世界は確かに美しい。そして、ここは美しい世界の輪郭にある。それは、「なんとなく」という言葉の中に潜む、隠された真実の片鱗なのかもしれない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

❤️ この短編小説は友人の中川麻里さんの投稿に刺激を受け、背中を押されて誕生しました。中川さんに心から感謝いたします。

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