トーベ・ヤンソンのセクシュアリティについて考えるために(1)

「トーベ・ヤンソンとBisexualness」と題したブログを拝見して、いろいろ考えたことをツイートしました。それを整理しつつ、より多くの方にご自身で考えていただけるような情報をリストアップしてお伝えしたいと思います。

前提として、ブログ主の生 (Ubu)さんは「トーベのセクシュアリティに言及する際に決めていることがあります。」とツイートなさっていて、あくまでもご自身のご意見を述べられています。それに対して何かとやかく言いたいわけでありませんし、そもそも第三者が口出しすべきことではないですし、むしろ、基本的にはほぼ同意見です。
それでもこれを書いているのは、ムーミンやトーベ・ヤンソンのファンの方、興味をお持ちの方が、特定の記事や番組、映画など、誰かの意見だけで判断するのではなく、いろんな角度からの情報を得て、ご自身でご判断いただけるといいなと思ったからです。

最初に自己紹介をしますと、わたしはフリーランスのライターで、現在、日本のムーミン公式サイト「ムーミン春夏秋冬」を連載しております。といっても、この投稿は公式サイトや著作権管理者とはまったく関係のない、1個人の意見です。
ちなみに『ムーミンマグ物語』というビジュアル本の文章も担当しました。

まず、本国フィンランドのムーミン公式サイトが2019年のプライドマンスに合わせて作成した3本の記事。これが比較的新しい公式見解ということになります。そして、それらは3本とも、日本語に訳され、日本のムーミン公式サイトで読むことができます。本国サイトの記事すべてが日本語に訳されているわけではないので、これらの記事が選ばれたというのはとても喜ばしいことだと思います。

“I’ve fallen madly in love with a woman” – Queer themes in Tove Jansson’s life and work, part 1
「私は女性と激しい恋に落ちてしまった」  トーベ・ヤンソンの人生と仕事における同性愛 Part1

The secret message in Mymble’s name – queer themes in Tove Jansson’s life and work part 2
「トフスラン(Tofslan)」と「ビフスラン(Vifslan)」の名前に隠された秘密のメッセージ  トーベ・ヤンソンの人生と仕事における同性愛 

Part2Tove & Tooti – the love story of a century – Queer themes in Tove Jansson’s life and work, part 3
トーベとトゥーティ 世紀の愛の物語  トーベ・ヤンソンの人生と作品における同性愛Part3

リンクは英語にしましたが、本国サイトにはフィンランド語/スウェーデン語(ともにフィンランドの公用語)/英語が掲載されており、どの言語で最初に書かれて、どれが翻訳なのかはわかりません。日本語への翻訳は英語ベースだと思いますが、日本の読者に伝わりやすいようなアレンジが加えられています。ここでは細かい内容については触れませんので、ご自身でお読みいただければと思います(日本語だけでも、英語との比較でも)が、タイトルだけ見てもぱっとわかるのは、Mymble(ミムラトフスランとビフスランに置き換えられていること。
そして、何より大きいのは Queerが「同性愛」と訳されていることです。クイアという言葉は単純に「同性愛」だけを指すわけではなく、バイセクシュアル(両性愛)も含む多様なセクシュアルマイノリティを表すことは明白ですが、これは誤訳というわけではなく、「トーベの人生と作品における”同性愛“に関わる部分にスポットを当てた記事です」、という意味だろうと思います。

記事の最後も、こんなふうに結ばれています。

「トーベは同性愛者の活動家ではありませんでしたが、大胆な芸術と勇敢な人生の選択を通して、世界中の性的マイノリティの人々にインスピレーションを与え続けています。」(「トーベとトゥーティ 世紀の愛の物語  トーベ・ヤンソンの人生と作品における同性愛Part3」より引用)

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えーっと、まだまだ書きたいことがあるのですが、ちょっと時間がないので、今日はここまで。
もし、トーベのセクシュアリティや生き方という部分から興味を持ってくださった方がいらっしゃるなら、ぜひ実際に作品を読んでいただきたいなと思います。
今年はトーベがムーミンシリーズ最初の一作を発表してから75周年でした(そのあたりのことは「ムーミン75周年、最後の月に」をご参照ください)。それを記念して、ムーミンの翻訳を大きく改訂した新版が発売されています。文庫新装版というのもあって紛らわしいのですが、中身が異なりますので、これからお読みになるなら(または再読なさる方も)新版おすすめです!

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