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「人を落とすんじゃなくて、自分が上がるのよ」奈津子ママのセリフを思い出した[57/100]

新卒で入社した会社は、バリバリの営業会社だった。フロアの壁には営業成績が貼り出され、新卒の席の上にはくす玉。初受注すると割ることができる。営業成績が一目瞭然の職場において、私は劣等感と、焦燥感と、嫉妬を感じない日はなかった。

初受注した同期を横目で見ながら、「先輩に恵まれていたおかげじゃない」「引き継いだクライアントがよかったんじゃない」なんてひとりごちていた。「早く成長したいです!」と鼻息荒く社会人になった分、受注できない、表彰されない、そんな体験が積み重なるたびにプライドがズタズタだった。しかし、それがパワーになったことは間違いない。初受注に始まり、1Q、2Qと同期に遅れを取っていたが、3Q、4Qと巻き返し、1年目トータルでの表彰では新人賞をもらうことができた。

このとき、私を救った漫画がある。一条ゆかり先生の『プライド』だ。漫画の主人公たちの精神的な拠り所となるのは銀座の高級クラブオーナー、奈津子ママ。その奈津子ママは、全12巻の中で多くの名言をのこしている。その中でも下記のセリフは折に触れて思い出す、人生の指針ともなっているセリフだ。

泣いても ケンカしても 傷ついても
品性だけは悪くなっちゃだめよ
いいわね
人を落とすんじゃなくて 自分が上がるのよ

『プライド』5巻 一条ゆかり 集英社

「何であの子はうまくいくの!」
「私だって!」
そう思うことが、そのあとの人生でもたくさんあった。そのたびに、上記のセリフを思い出すために、『プライド』を読み返した。

歳をとると角が取れるとは、本当にその通りで、最近ではめっきりこの「パワーになる嫉妬」を感じることが減った。純粋に「すごいな~、私もいつか」と思えるようになった。

奈津子ママのセリフを、しばらく忘れていた。
それを、今日のさとゆみさんのエッセイで思い出した。

成功や幸せは椅子取りゲームではない。
入れ替え戦ではないから、相手を引きずり下さなくても、自分がその場に行けば椅子はある。
もっと近づいて、次は私の番と思っていれば良い。

嫉妬の育て方【さとゆみの今日もコレカラ/025】

そうか、あの人のせいで私が不幸になる、負けるなんてことは、受験や恋じゃない限り、ないんだった。

やっぱり、奈津子ママの言葉は正しい。

さて、そろそろ「人を蹴落としたくなるほど嫉妬する」経験を、したいなと思ってきた。もちろん、そんなときは奈津子ママとさとゆみさんの言葉を思い出し、ちゃんと自分の力であがる努力を愚直にしたいと思います。

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