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音楽と再会させてくれた歌の話

例年より遅れて開花した桜。
咲き始めると、あっという間に満開になっちゃいますね。

満開の桜を見上げながら、脳内では森山直太朗さんの「さくら(独唱)」(以降さくら)が、今年もヘビーローテーションされています。

さくらがリリースされたのは2003年3月5日。
もう20年以上が経過している。

その頃の私はと言えば。

日本で音楽を能動的に聴かない日々を送っていました。

日本帰国前はアメリカの小さな大学で良き師に出逢え、楽しく音楽を学んでいました。
楽し過ぎて留学前には考えもした事がなかった大学院へ進学。
一番好きなフランス印象派をワクワクしながら学び1学期だけ終えました。

そんな中。

家庭の財政状況が破綻寸前、、、というか、破綻していることを告げられました。
当時、弟は大学生。これから就活が始まる、という時期。
わが家の財政状況だと、

「私が大学院を継続するか」
「弟が大学を継続するか」

どちらかしか無理だよ、と。

え?え?

破綻していることを知っていたならば、大学院進学せずに最も有効な新卒カードを使って就職したよ…。

と、途方に暮れました。

私はとりあえず大学は卒業している(ってか、卒業しちゃった、、、新卒カード使えないまま)。
弟は今のままでは大学中退だ、、、

ならば、私、大学院諦めるわ、と決めたのです。
実は大学院辞める前に、休学しています。
休学中、日本へ一時帰国してバイトを詰めに詰めて貯金に励んでいました。
TA(Teaching Assistant)として学費免除の話も出ていたので、あー、これなら卒業できるかも…!という金額は見えました。

が、祖母が亡くなりました。
大好きな祖母で、私の帰国中にお別れができたことは、振り返ると幸せな事。

ここで問題が、お金です。
お葬式ってお金かかるんですよね。
お家にはお金がない。。。

あれ?私、お金あるわ。

と、いう訳で私が大学院継続のために貯めたお金で送ることができました。

今、振り返ると、「何だ、適材適所にお金が収まってくれているじゃん!素晴らしい!」って思えるんですけど、渦中の私はそんな風に思えなくて。

普通に絶望しました。

失意の中、ビザの関係もありバタバタと帰国。
(アメリカには日本帰国するためだけに一度戻りました、悲しかったな〜)

大学院は秋学期に入学し、
春学期を休学し、
秋学期前に退学したので、10月という何とも中途半端な時期に帰国しちゃいました。

就活シーズンは終わってる(しかも就職氷河期真っ只中)
新卒カードも持たない
何にもない私が日本に帰って来ちゃった。

とりあえずは財政破綻している家計を支えるために、バイトに明け暮れる日々。

食べて行くのに精一杯で、音楽をする余裕もなければ、したいという気持ちも無くなっていきました。

次第に聴きたい、とも思わなくなって。

気付けば音楽は私から遠くにいました。


そんな生活を2年ほど送っていた2003年の暮れ。
年末を迎えて、テレビではその年のヒット曲を集めた歌番組が複数放送されていました。

何でだか今でもよく分からないんですけど。

森山直太朗さんがさくらを歌う。

それを知ったら、どうしても聴きたいと思いました。
この年、大ヒットしていたこの歌。能動的に音楽を聴かなかった私でも知ってはいました。
でも、ただ知っていただけで、特に好きでも嫌いでもなかった。だって私は音楽を聴いても心があんまり動かなくなっていたから。

なのに。どうしても聴きたいと思った。
何でだか分からないけど。
そして、テレビの前にスタンバイしてその時を待ちました。


今でも忘れません。
歌が2番に入って直太朗さんが次の歌詞を歌った時のことを。

今なら言えるだろうか 偽りのない言葉
輝ける君の未来を願う本当の言葉

森山直太朗「さくら」

この歌詞を聴いた瞬間に涙が止まらなくなりました。
そして、こう思えました。

私の未来もきっと輝く

何の根拠もなくって。

お金もない。
スキルもない。
キャリアもない。
夢も希望もない。

無い無い尽くしの私だったのに、そう思えた。
突然、そんな風に思えました。

泣きながらさくらを聴いていたら最後にまた

さくら さくら いざ舞い上がれ
永遠にさんざめく光を浴びて

森山直太朗「さくら」

の歌詞に出逢いました。
舞い上がれ!と応援されている気持ちになれました。

舞い上がれる状況なんかじゃ決して無かったのに。

そして、何だかスッキリ浮上できたんです。
もう一度音楽をしてみよう、という気にやっとなれた。

私ね、森山直太朗さんのさくらを聴いてなかったら、音楽との距離は遠いままだったかもしれない。
いや、いつかどこか遠い未来で音楽との距離を縮める日は訪れたと思うけど、ずーっと先になっちゃったかもしれない。

やっぱりそれは少し寂しかったから出逢えて良かったな、さくらという歌に。

毎年、この季節には繰り返し聴きたくなる歌です。

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