栄冠は君に輝く

【栄冠は君に輝く】

長男は、リトルリーグから野球を始め、高校は本気で甲子園を目指す野球部に入っていました。
お弁当を３つ持って、早朝に家を出て
夜に帰宅。
大晦日と三ヶ日以外は練習。
文化祭も修学旅行も遠征で欠席。

そんな中、高2の練習中、熱中症という、まさかの原因で野球を続けられなくなりました。

失意の彼に、世界はここだけではないと知らせたくて、親が勝手に申し込み、学校の語学研修で3週間イギリスに行ったのです。

成田空港で私たちを恨むように睨み付けていた息子は、帰国すると
『イギリスに行かせて欲しい』と言いました。

日本人なのにゲームを持って来ず、部屋に引きこもらずヘタクソな英語で臆せず話に加わること、なんでも食べることを、ホームステイ先で褒められたらしいのです。

『今まで僕は、打撃、守備で評価される世界にいた。
僕そのものを認めてくれる世界があった』

頭も筋肉だったのか、単純に熱く思い込み、高校を卒業後、4年間、イギリスの大学に行きました。

野球部を辞める時の息子はどん底だったでしょう。

そんな息子の7年前の誕生日に、よりによって、夫がスキルス胃がんを告知されました。

あの時、街を彩るイルミネーションを見ながら、私たち一家はどん底に落ちました。

『どん底、絶望を知ったからこそ
伝えられることがある』

街は、もうクリスマスの準備が始まっていましたよ。

いろいろあるけれど、もがくと
何か見えてくるのかな。