『胃癌はもったいない死に方』~誹謗中傷だけではない拡散への危惧
メールをいただき、あるブログを知りました。
オフィシャルブログなるものがあるのですね。
何らかの形で著名になった方のブログであり、フォロワーも多く
大きな拡散の力を持っています。
そこに書かれていたのは
胃がんはもったいない死に方
という言葉でした
【胃がんで死ぬのはナンセンスの残酷】
以前にも、同様のことがありました。
テレビで「胃がんで死ぬのはナンセンス」という内容を放送されたことがあります。
今回のブログも、その番組も、伝えたかったのは
ピロリ菌除去の話です。
【ピロリ菌除去の話】
ピロリ菌除去は、胃がんのリスクを下げますが、
ピロリ菌を除去すれば、胃がんにならないということではありません。
ピロリ菌がいなかったから胃がんにはならないと思っていたという患者さんも希望の会には複数います。
除去したからが盲点になっていたのです。
【夫のケース】
夫は、毎年受けていたがん検診で要再検査となり、胃カメラをして、胃炎と診断されました。同時に、ピロリ菌を除去しました。
その後、何回も不調を訴えましたが、「ピロリ菌を除去すると逆流性食道炎のような症状になる」と言われ続け
果ては「バリウムも胃カメラもして、ピロリ菌を除去したのだから、あなたの心配しすぎが不調に繋がっている」と言われたのです。
そして、一年経って、余命と共にスキルス胃がんステージⅣを告げられました。
胃がんと言えば、「ストレス」「食べ物が悪かった」ことが原因であると思われてしまうことが多いのです。
肺がんがたばこを吸っていた、肝臓がんがお酒の飲みすぎが原因のように誤解されるのと同じです。
その「誤解」が、どんなにがん患者家族を苦しめるのか
を体験したからこそ、社会にこそがんを知る機会が必要だと発信をしています。
【がんになったのは怠っていたからではない】
予防という観点から、リスクをさげる行動は大切ですが、
がんになった人が【怠っていた】という誤解に繋がるような
無責任な発信は、心からやめてもらいたいのです。
【もったいない死に方】と言われることが、どんなに残酷かは、想像していただければわかっていただけるのではないかと思います。
【善意であることの危険】
問題なのは、このブロガーさんは、『善意』で発信しているということです。
きっと、いいことだと思って『教えてあげよう』と思ったんでしょう。
もう一つ問題なのは、自分でやるキットだということです。
このブログからリンクを飛ばしている先には、子宮頸がん、
大腸がんの検査キットがあります。
今回、新型コロナウィルス感染症でも検査キットについて話題になりましたが、自分で行なう検査の信頼度は疑わしいものです。
たぶん、病院に行く、検診を受けに行くことに、時間的、
多くは心理的に負担があるから、検査キットを使ってみようと思ってしまうのだと思います。
そして、検査はあくまで検査です。
【夫の後悔】
夫の第一歩は間違っていました。
要再検査となる頃、夫は胃の不調をすでに感じていたのに
すぐに胃がん検診があるから、それを受ければいいと思っていたのです。
あの時、検診を待たずに不調を受診していたら。
その後悔は消えないのです。
医療に関わることは、一見良さそうでも、専門家でない人が善意で流布することで、
命を左右してしまう危険性がある。
私が、がんを知る機会は、子どものがん教育だけではなく
大人、社会にも必要だと思って行動していることと
誰も発信者、シェアという拡散者になれてしまう今、
情報リテラシーの必要を発信しているのは、ここに理由があることをお伝えしたいと思いました
【誹謗躊躇だけではない】
このブロガーさんは、誹謗中傷とも闘うと発信しています。
もちろん、誹謗中傷はなくさなくてはなりません。
しかし、それと同じくらい
専門家ではない人が、医療情報を発信することの危険も
知っていただきたいと思っています。
善意が命を左右することがあるのだという自覚を
多くの人が知ってくださることを願います。