ショック~がん教育外部講師の言葉に感じた不安~

今年から、小学校を皮切りに「がん教育」が全面実施に向かいます。

今朝、このがん教育にがん体験者の立場で

外部講師として積極的に携わっている方の投稿が

目に飛び込んできました。

そこに書いてあった言葉に、胸が重くなりました。

【がんになっても生きられることを伝えたいという言葉】

そこには、はっきりと

『がんになっても生きられることを伝えてあげたい』と書かれていたのです。

がん治療は進んでいます。

がん=死ではありません。

それは理解しています。

でも、それが『がんになっても不安にならなくていいように』となってしまうことに、以前から疑問を感じていました。

現在でも、がんで亡くなる人はいるのです。

不安にならなくていいのは、がんの全てが死に結びつかなくなった時なのではないでしょうか。

私は、治療法の確立されていないがんで家族を亡くしています。

先日も、希少がんの患者さんが、新聞の投稿欄に

『生きていたい』と治療法への想いを綴っていました。

そういう人がいるなかで、がんになっても生きられると

学校教育で教えるのか…と、心が塞ぎました。

【胃がんは手術すれば治ると思っていた】

夫ががんになる前は、私も、得ている情報から

がんは治る時代になったのだと思っていました。

「今日、胃がんと言われてくるよ」と病院に向かった夫の背中を

胃がんなら、手術すればいいんだしと自分に言い聞かせながら見送りました。

告知を受け、治療法が定まっていないがん種があることを知りました。

自分たちにとって大きな衝撃でしたが

これは、周りからの誤解にも繋がりました。

「胃がんは治る時代なのに、どうして、そこまで放っておいたの?」

検診も受けていました

運動もかかしませんでした

お酒も飲まないし、たばこもはるか昔にやめていました

野菜を多く採る食事をしていました

それでも、世間からは

検診もあるがん種で、手遅れになったのは、何かを怠っているからだという

扱いを受けました。

【命の大切さを思ったからこそ】

私たちは、命の大切さを甘く思っていた人間ではありません。

かけがえのない命だからこそ、私は失いたくないと強く思い

世界のどこかに助けてくれる人がいるのではないかと探し求めました。

そこに欠けていたのは、科学的な視点です。

『動物実験で効果』

『○○大学教授推薦』という言葉に、私はすがりました。

今のコロナの状況も同じです。

一斉に、店頭からうがい薬がなくなってしまう。

ここに、一般の医療情報の受け止めの状況が表れていると思っています。

学校教育の中で、小学校におけるがん教育の意味は

自他の健康に意識を向け、命の大切さを認識する

生きる力を目指しているのだと思います。

大切なことだからこそ、繊細なことだからこそ

『がんを告げられ、苦悩した先に、生きている私』だけを伝えないでほしいと願うのです。


【今日は、誰かが望んでも生きられなかった明日】

私は、この言葉にも胸が痛くなります。

実際に、夫の生前、共に、授業を見学した時

夫は、この言葉に泣きました。

『生きられる時代に生きられない人は、

~できなかった人という風に伝えられるんだね』と。

嫌なことがあっても、もっと辛い人のことを思って生きなさいと

命の大切さを伝えようとしているのだと思いますが。

それを言われたら、辛いことを口に出せなくなるし

亡くなっていった人はかわいそうな人になってしまう。


旅立った人には、生きてきた日々があります。

生きてきたのです。

生きられなかったわけじゃない。


このようなことを書くと、また、過敏に反応していると言われるのだと思いますが、命の問題だからこそ、美談のために使われたくないのが本心です。

【がん教育の学びをした理由】

私は長年、教員をしていたので、このような『教育』が

ある日、上から降るように教育課程に入ってきた時

教員が何を思うか想像がついてしまいます。

型が決まっていて、外部講師をお呼びし、何時間かけて

感想を講師に送る。

マニュアルができて、こなしていくのです。

でも、教育は、その一瞬、一瞬が、かけがえのない学びです。

目の前に誰が立つかで、授業を受けた人の生きる力に差がでてしまう

とても深く、重要なことなのです。

がん教育についてのe-learningは、掛け値なしに

素晴らしい内容でした。

繊細な視点と、科学的な知識の大切さ

その上での体験談の意味が、きちんと伝わる内容でした。

がん教育に不安を感じてもいたので、私は、この学びは

大切に考え、

しっかりと学び、この教材があってよかったなとも思いました。

その学びを得ても、前述の発言になってしまうこと。

それは、『できている自分』に意味を感じているからなのではないかと

思います。

がん教育で外部講師をする方は、ぜひ、治療法が確立されずに

旅立っていく多くの人の声を聴いてください

そうすれば、簡単に『がんになっても生きられる』とは

言えなくなると思います。

そして、感動のために、亡くなった人を使わないでください

さらに、教育は、先生ごっこではありません。

人前に立って話すことの責任の重さを胸に持ってください。

教育は、やりたくてするものではない。

教育の尊さを胸に思えば、きっと、人前に立つことを

楽しみにしたりしなくなると思います。


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Romi
全国胃がんキャラバン、多くの人にがん情報を届けるグリーンルーペアクションに挑戦しています。藁をもすがるからこそ、根拠のある情報が必要なのだと思い、頑張っています。