「こんなに希望のない状況で、どうやって生きる気持ちを保ってきたの?」

ある医師に、言われたことがあります。

「こんなに希望のない状況で、どうやって生きる気持ちを保ってきたの?」

希望なんかなかったですよ。

今でも希望なんかないです。

それでも、死ぬまで生きて行かなくちゃならない。

もう私には捨てるものすらないと思っているからこそ、体当たりが出来るのかもしれません。

夫が亡くなった時も、母を火事で亡くした時も、同じことを言われました

【神様は、乗り越えられる人にしか試練は与えない】

私はこの言葉が大嫌いです。

私は乗り越えてもいないし、乗り越えたいとも思わない。

人から馬鹿にされてもいいから、大切な人を戻してほしい。

そう、いつも思っています。


父は大動脈瘤破裂で、病院に担ぎ込まれて間もなく亡くなったため

急なことに混乱している私も母も、警察の事情聴取を受けました。

「疑っているのか❢ とにかく、母に事情聴取をするのはやめてください」と警察につかみかかりましたが、

すまなそうに「決まりなんです」と言われただけでした。

母が火事で亡くなった時、同じようにすまなそうに警察が来ましたが

「事情聴取ですよね。わかっています」と冷静な私がいました。

乗り越えたんじゃなく、世の中はそんなものだと知っただけのことです。


【つかみかかった】

私には、そんなところがあります。

『あきらめない』

これは、両親から言われてきたことが私の根底にあるからだと思います。

【うらやましいと思うなら、そうなるように努力すればいい。

変えられると思うものは諦めない勇気を。

変えられないと思うものは、受け止める強さを持ちなさい】

これが、どこかの言い伝えだと知ったのは、最近のことです。


【命をあきらめたりできないから】

夫が余命とともにがんの告知を受けた時、

主治医は、きっと、私たちに何の希望もない事実を告げるのが切なくて

こう付け加えたのだと思います

『万が一、抗がん剤が効いたら手術ができるかもしれない』

この言葉に私は反応してしまいました。

『抗がん剤を効かせればいいんだ』

それが、私がフコイダン、高濃度ビタミンC点滴、血液クレンジング

ニンジンジュースと次々に手をだしてしまった理由です。


『免疫力をあげる』

『がん細胞を自滅させる』

こんなに希望を感じる言葉はありません。


【効果が示されれば、保険適応になっている】

この言葉は、とても冷たい、頭でっかちなものに思えてしまいました。

「今は保険適応になっているものだって、もともとは研究だったじゃないか」

そう思ったのです。

その時、私が知らなかったのは、臨床試験の仕組み。

患者に高い医療費を払わせたりせずに、研究は行われている。

そのことを知らず、エビデンスとか言わずに、今、目の前にいる人を

助けたいと思う心ある医師が、自費診療で命に向き合っていると思ってしまいました。

そこに、ついているのが、有名大学の教授の推薦文と

「免疫力」「天然」という、優しいフレーズ。

科学的なことをいう人は、頭のいいロボットなんだと思ってしまったのです。


【なぜ、そこから抜け出したのか】

ここには、私の性格と経験が影響しているかもしれません。

とにかく、夫の診察について行きました。

夫は、なぜか主治医の問いかけに

「大丈夫です」と答えます。

え?違うじゃないと思った時、私は黙っている性格ではありませんでした。

「嘔吐はしていないけれど、ずっとムカムカしています」

「昨日は熱がありました」

夫は私を睨みつけました。

主治医は、ほぉと言って、メモを取ります。


診察室を出た後、毎回、夫に

「静かにしてくれないかな。恥ずかしい。

黙っていてほしいから、一緒に来ないか、来るならメモを取っていてくれ」


仕方なく、メモを取るようにすると、夫と主治医の会話がキャッチボールになっていないことに気が付いたのです。

そして、メモを取るからこそ、どんなに厳しい状況かを

客観的に理解せざるを得なくもなりました。


【あ、これ、教師と同じだ❢】

私は、30年近く、教員をしていました。


メモを取りながら

医師の外来は、私が経験してきた個人面談と似ていると思ったのです。

ひとり10分と決まっている中で、個人面談をしていく。

その時、時間を気にせずに話す人がいると、とても困る。

あと、何人待っているかと思うと、気もそぞろになる。

その時に教師側として思いついたこと

『今は10分しか時間が取れないけれど、話したりないことは、別の機会を取ります』と言って時間を守ってもらうようにしました。

時間を有効に使うため、気になることがある人は、事前にメモを渡してもらうようにしました。


『同じじゃないか❢』

夫に関して、私が気づいたことはメモに書いて、先に看護師さんから主治医に渡してもらうことにしました。


どうしても理解できないことは、いつだったら、この続きを話せるか。

電話か

メールか

別の日なのか

そう具体的にたずねることにしました。


そこから得たことは、医師との会話の時間です。

会話が増えれば、キャッチボールができてくる。

会う回数が多いから、細かいことも意識してくれる。

私たちは、メモを取ることで、自分の理解の程度を認知できる。


『ある意味、ずうずうしい』

でも、面と向かっているのは、命です。

今、何かというと『モンスター』と言われます。

モンスターペアレンツ

モンスターペイシェント

大切なものを守ろうと声を上げることの、どこがモンスターなのか。

『自分がどう思われるかなんて考える余裕はなかった』

ひたすらそれだけのことです。


そして、それは今も同じです。

哀しいし、悔しいし、仲良く歩いている夫婦を見ると

どうして私はひとりなんだろうと思います。

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希望がなくちゃ生きられないわけじゃない。

死ぬまで誰もが生きる

それだけなんだけれどなと思います。


そして、もっと言われたくないことは、

「いつか、素敵な人が現れるかもしれないよ」ということ

これ、わかるかなぁ…

どんな時も、前向きで、明るくいることを望まれるのは辛いし

乗り越えなくていいし、

哀しくて当たり前なんだと思います。

「万が一、抗がん剤が効いたら」

決して医師はうそを言ったわけじゃないけれど

幻のような希望にすがってしまったから、その後が辛かった。

現実を受け止めるのは、本当に酷。

酷だからこそ、何も言わなくていいから

そっと背中をさすってくれるだけでいい。

それが、明日も生きようと思う力なんだと思っています。

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Romi
全国胃がんキャラバン、多くの人にがん情報を届けるグリーンルーペアクションに挑戦しています。藁をもすがるからこそ、根拠のある情報が必要なのだと思い、頑張っています。