大人の関係(ベーコンと白インゲン豆の煮込み)|酒と肴 その三十三
「卵が先か、鶏が先か」
昔から論じられてきた問題です。
だけどそんなことを気にしていたら、親子丼の親子関係が複雑になって食事を楽しめません。つい忘れてしまいがちですけれど、世の中答えを出せばいいことばかりじゃないのです。
また近頃は世情のせいか「正しい答え」を求める傾向が強く、素面ではしんどい日もあります。各々が主張する刺激的な、または耳をくすぐる正論風はどうにも体に合わないようでして、実の無い話、「酒が先か、肴が先か」問題に目を向け調子を整えることにしました。
酒と肴どちらが先か。体のことを考えたら、まずは海藻サラダなどを食べるのがよいのでしょう。とは言え一寸でも早く、胃の粘膜をアルコールで浸したい夜もあります。海藻勢には予めお詫びいたしますが、最初のひと口がワカメや寒天、なんか赤いやつでは盛り上がらないのが本音です。
ビールと餃子の場合さらに複雑です。このマリアージュ、交互にやることで魅力を増しますが、ジョッキが空く頃に餃子が運ばれてくる事案が多発しています。まれに、餃子は来たのにビールがまだというケースもあり、全く気が抜けません。相性はいいのにすれ違う二人、まるで現実の結婚関係のようで辛くなります。(一般論です、私の話ではありません)
予定通り実の無い話で心が落ち着きましたので、いつも通り昼酒の支度を始めます。空調で体が冷えているため、滋味あふれる「ベーコンと白インゲン豆の煮込み」を作りました。
最初に厚切りベーコンと野菜をバターで炒め、これをお通しにしてビールを開けます。味見と称して食べ・飲み・食べ・飲みを繰り返すうちに酔いが進み、酒と肴、どちらが先でもいい心持ちになりました。
大福豆が柔らかく、いい具合に煮込まれる頃にはスプリッツァーに切り替えます。チーズやバゲットもつまむ週末の午後。落ち込んだりもしたけれど、私は元気です。
それにしても不満と不安が続く今日この頃、情報も選択肢もありすぎると処理が追いつきません。そんな時ほど極端に流され、普段ならしない選択をしてしまうので注意が必要です。「正しい答え」があれば苦労しませんが、刺激的で耳をくすぐる話ほど怪しいのはご存知の通り。
あえて答えを出さない大人の関係。迷った時は急がずに、ほろ酔い気分で周りを見渡す余裕が欲しいものです。
メニューと材料
・ベーコンと白インゲン豆の煮込み(厚切りベーコン、大福豆、玉ねぎ、人参、ニンニク、バター、ローレル、塩、胡椒)