芹澤桂さんの「ほんとはかわいくないフィンランド」を読む
25年以上勤めたお堅い職場を早期退職して、現在、小学生男子を育てながら主婦をしているまめさとです。
今回の読書記録は、フィンランド人と結婚し、へルシンキで子育てしながら暮らしている芹澤桂さんのフィンランドでの日常生活や文化、社会をつづったエッセイ本「ほんとはかわいくないフィンランド」。
かつて私は1年ほどオーストラリアで暮らしていたことがあります。
その時、自分は相当な旅行好きではあるけれども、住むのはやっぱり日本がいいなあ・・・と強く感じました。
日本の細やかなサービスや空気を読んで相手をおもんばかる文化。
それを重苦しいと感じる人もいるでしょうが、私の場合は、なんだかんだ言いつつも、そういう繊細な日本が性にあっていると思い知った、貴重な体験でした。
私とは逆パターンで海外生活になじんでその地でうまく生活している人も知っています。
彼らの特徴は、順応性がありながらも自分の主張や好みがはっきりしていて、そのうえで他人にそれを強要したり迎合したりしないこと。
さらに、かなりの長期(あるいは永住的に)そのまま海外生活を続けている人というのは、その国が好きで好きで頑張って移住しました・・・というよりは、なんとなく流れでそうなって、住んでみると意外と悪くなかったのでそのまま居ついた・・・という人が多い気がします。
前置きが長くなりましたが、この本の著者、芹澤さんはまさに「流れに乗って移住した人」。
特段フィンランド好きだったわけではないのに、たまたまフィンランド人と結婚し、そのままかの地で暮らし始めた芹澤さん。
そんな彼女が書いているだけに、過剰な愛のフィルターなしで、彼女が見たままのフィンランドが紹介されています。
フィンランドといえば、他の北欧の国々と同じく、男女平等、夕方には仕事が終わり残業なし。
合理的に働き、休みは多く、労働者の権利は厳しく守られ、高福祉、かつ「世界一幸せな国」だと言われています。
しかし、それらの恵まれた状況を進んだ社会として、額面通り単純に受け取ってはいけない。
少なくともこの本を読む限り、優しく政府に守られ、能天気でハッピーに国民が暮らしているとは思いませんでした。
「世界一幸せな国」で暮らすには、それなりに努力が求められ、あるいは、不便さをあきらめたり、受容したりする精神が必要そうです。
世の中、そうそう甘い話はなく、やはりどの国も一長一短ある、そんなことを感じました。
芹澤さんのこのフィンランドエッセイシリーズはこれまで全部で4冊出版されており、どの本も興味深く読ませていただきました。
特に旦那様の旅好きはクレイジーといってもいい域にまで達しており、旅好きを自認する私も参った、と白旗をあげて全面降伏です。
そして、それに付き合える芹澤さんもパワフルすぎ。
いやー、タフな女性です。
便利でもおしゃれでもない、合理的でシンプルなフィンランド。
それなのに、なぜか豊かな生活だな・・・、と感じさせる国。
別に特別好きなわけではないのに、フィンランドに関する本の感想をこれまで2冊も書いてしまいました。
ひょっとして、魂の底で、フィンランド的なものを私が求めているのかもしれません。
本日の写真:キバナコスモス(キク科)
あちこち見ますね。