20年越しの渋谷のモボモガ
みんな人間力高過ぎるわー。noteを読み始めて感じた事だ。
覗いては文章力の高さに圧倒され、表現力にため息が出て「何故こんなに書けるのかしら。人生のどの辺で身につけたのかしら。」と首をひねった。
そして私はこんな風に書けないなぁ、とまた防衛をはるのだ。
私はずっと書くことが苦手だ。そんな私が専門学校時代、小論文の授業(だったと思う)で書いた「パンはパン屋」という文章が褒められたことがある。
内容は「パン作りにはまり大理石まで買った私がコスパや味的にやっぱり作るより買う方がいいなという結論に至りました」というしょうもない話だ。
正直先生の何に響いたのか分からないが選ばれた数人の文章がプリントされ配られた。
同じプリントに「渋谷のモボモガ」というものがあった。違うクラスの子の書いたものだった。モボモガは実在するカフェでモボモガの意味やその子にとってのモボモガの存在が書かれていたと思う。都会的な雰囲気と言葉選びがかっこよく名前もお顔も存じないがすごく洗練されたおしゃれ女子をイメージして読んでいた。
同じプリントにいる私はすごくいもっぽかった。
それから約20年後、空腹で渋谷を歩き回っていたらなんとモボモガを見つけた。一気に10代に引き戻されテンションは爆上がり、私はお店の外でキャーキャー言っていた。
うっかり見かけただけなのに。なんなら記憶もうすれていたのに「もー!!ずっと来たいと思ってたんです!!」というテンション。なんと節操のない。
ともあれ渋谷のカフェでひとりランチ。間接的にだいぶ前から知ってましたという勢いで入ったけれどすごくオシャレで席についてから少し気後れした。
あの時のおしゃれ女子は10代からここに通っていたのか。遅ればせながらやって参りました、と勝手に約束を果たしたような気分。なぜか不思議な達成感だった。
ハンバーグを頼んだ。とても美味しかった。ボリュームに驚いたのを覚えている。
渋谷なんて数年に1回に行く程度なのに。行きつけ感を醸し優雅に振る舞う私は本物の常連から見たらパーフェクトお上りさんだったと思う。
おしゃれ女子は20年後に同級生がこんな感情でモボモガにいることを想像もしないだろう。
面白い。
誰かの何かをきっかけに誰かの人生の幅が広がっていく。あの日、色々な事を思い出しながら食べたランチタイムはちょっと特別な時間だった。私のレベルが1つ上がった。
帰りの電車内はさぞ誇らしげだったろう。
レベルアップから数年が経った。今調べてみたらモボモガは名前が変わっていた。
あのおしゃれ女子はどんな暮らしをしてるんだろう。きっとかっこいい40代を生きてると思う。
多分セレブの部類にいる気がする。
私は相変わらずパンはパン屋のままだ。
でももしかしたらパンはパン屋をきっかけパン屋になった人が…。
いるわけないか。