9月、海の音がした
去年の9月頃、一人で海を見に行った。
住んでいる所からは少し遠かったので、バスと電車を乗り継いで片道1時間強。
全く計画的ではない。朝起きて、なんとなく
行きたいなと思ったから行った。
海に行くのはたぶん小学生以来。でもほとんど記憶にない。だから緊張というか、妙にそわそわした。海水浴場に着く。駐車場からはまだ見えないけど、波の音は聴こえてくる。あの階段を上れば海だ!
海は広かった。
肌寒い時期で人があまりいなかったせいか、目を閉じても聴こえるのは波の音だけ。静か。他には何も聴こえない。
防潮堤に腰をおろす。
震災の被害を受けたため、以前より高くなっている。その一番高い所から、海を見下ろした。目の前の圧倒的な自然に畏怖した。でも、不思議と無心になれる。周りの人たちも皆、何も言わずに、ただ押し寄せる波を眺めていた。
潮風が気持ちよかった。
少し冷たかったけど、かえって心が洗われるような気がした。しばらくの間、考え事もせずにぼーっとしていた。スマホも一切見ずに、ただただ海を感じていた。
そして恐ろしいことに、気づけば2時間半もぼーっとしていた。びっくりだよ。
大丈夫か?私……
さすがに帰ろうと立ち上がると、なんかパラグライダーが飛んできた。すごーい。写真撮っちゃお。
帰り際、少しだけ浜辺を歩いた。
立派な貝殻発見。せっかくだから拾って帰ろう。
最寄駅に戻り、水で綺麗に洗う。ふと鏡を見ると、潮風を顔に浴びすぎたせいか、目が真っ赤に充血していた。ひどい顔。電車に乗るのが恥ずかしいぜ。そんなことを思いつつも、洗った貝殻を耳に当ててみたら、本当に海の音がした。