AI時代のITセキュリティ市場:統合プラットフォームへの進化と主要ベンダーの戦略
AIとジェネレーティブAIの台頭により、ITセキュリティ市場ではポイントソリューションから統合プラットフォームへのシフトが進んでいます。主要ベンダーは、より包括的で効率的なセキュリティ対策を提供するために、買収や提携を通じてプラットフォームの構築を進めています。
CISOやセキュリティ担当者は、進化する攻撃手法に対応するために新たな課題に直面しています。AIを活用したランサムウェアやディープフェイクの登場により、従来のセキュリティ対策では不十分となりつつあります。一方で、SSE、SASE、ZTNAなど多岐にわたるソリューションに煩わされている企業は、包括的なプラットフォームを求めています。
企業顧客は、遠隔地やオフィスのエンドユーザー、IoTデバイス、クラウド環境などを統合的に保護するプラットフォームを期待しています。自動化、アナリティクス、AI、ジェネレーティブAIの活用が重要視されており、これに応えるために多くのベンダーが統合を進めています。
シスコの動向
シスコは、Splunkを280億ドルで買収し、AIベースのデータ分析能力を強化しました。この買収により、ネットワーキング、セキュリティ、観測可能性の各製品と組み合わせ、企業向けにフルスタックのセキュリティ保護を提供する機会を得ました。シスコのCEOであるChuck Robbins氏は、「AI革命の動力源となり、顧客がデータを活用して組織のあらゆる側面を接続し、保護する方法に革命を起こします」と述べています。
ブロードコムの戦略
ブロードコムは、VMwareを490億ドルで買収し、セキュリティ分野の主要プレーヤーとなる可能性を秘めています。エンドポイントセキュリティのカーボンブラックを保持し、シマンテックとVMwareのセキュリティツールを統合することで、SASE市場でのリーダーシップを狙っています。
パロアルトネットワークスの展望
パロアルトネットワークスは、IBMとのパートナーシップを通じてAIベースのオールインワン・セキュリティ・プラットフォームを推進しています。同社のCEOであるニケシュ・アローラ氏は、「AIがビジネスを変革し、これまでにない成果をもたらす変曲点にある」と述べ、AIを活用したセキュリティのプラットフォーム化の未来を見据えています。
マイクロソフトの優先事項
マイクロソフトは、複数のツールを6つの製品ラインに統合し、Copilot for SecurityなどのジェネレーティブAIソリューションを提供しています。同社のCEOであるサティア・ナデラ氏は、「セキュリティは技術スタックのすべてのレイヤーを支える最優先事項」と述べ、セキュリティの重要性を強調しています。
フォーティネットのアプローチ
フォーティネットは、自社でチップを製造し、独自のオペレーティングシステム(FortiOS)を持ち、ほとんどの部分で製品を自社開発しています。クラウドセキュリティ企業のLaceworkを買収し、同社のCNAPPを統合することで、フルスタックのAI主導型クラウドセキュリティプラットフォームを構築しています。
CrowdStrikeの革新
CrowdStrikeは、DSPMのリーダーであるフロー・セキュリティを買収し、AIベースのセキュリティソリューションを強化しています。同社のFalconプラットフォームは、MDRを提供するための技術的支柱として機能しており、エンドポイント保護やクラウドデータの保護に特化しています。
クラウドフレアの成長
クラウドフレアは、CrowdStrikeとの提携を通じて、クラウドネイティブのゼロトラスト保護と接続性を提供する統合ソリューションを推進しています。同社はBastionZeroを買収し、クラウドフレアOneの顧客向けにリモートアクセスを強化しています。
Zscalerの挑戦
Zscalerは、Zero Trust Exchangeを通じて、ユーザー、ワークロード、デバイスを保護するクラウドベースのプラットフォームを提供しています。新興企業AvalorとAirGap Networksを買収し、ゼロトラストのネットワークセグメンテーションを強化しています。
Netskopeの戦略
Netskopeは、ジェネレーティブAIを活用したSSEベンダーとして、CASBやDLPを提供するNetskope Oneプラットフォームを推進しています。同社はカディスカを買収し、デジタル体験モニタリングを強化しています。
Wizの急成長
Wizは、クラウドセキュリティプラットフォームを提供し、Gem Securityを買収することでリアルタイム検知と対応を強化しています。大企業向けの販売戦略を展開し、急速な成長を遂げています。
これらの動向から、セキュリティ市場は統合プラットフォームへのシフトが加速しており、AIとジェネレーティブAIの活用が鍵となっています。各ベンダーは、包括的なセキュリティ対策を提供するために買収や提携を進め、競争力を高めています。
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