Linkedinなどの公開情報を用いた人事向けAIサービス作成における注意点
LinkedInのようなソーシャルメディアで公開されている情報を用いてAIの機械学習を行う場合、日本の個人情報保護法(以下「法」)に基づき、以下の点に注意する必要があります。それぞれの観点から、法の条文を引用しつつ解説します。
1. 利用目的の明確化と通知・公表(法第17条、第18条)
注意点: 個人情報を取り扱う際には、その利用目的をできる限り特定しなければなりません。また、その利用目的を本人に通知または公表する必要があります。これにはAIの機械学習を目的として個人情報を収集する場合も含まれます。
関連条文:
第17条(利用目的の特定):「個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。」
第18条(利用目的の通知等):「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得する場合には、あらかじめ、その利用目的を公表している場合を除き、本人にその利用目的を通知し、または公表しなければならない。」
解説: LinkedInで公開されている情報を利用する際、その情報が「個人情報」に該当する場合は、機械学習の利用目的を特定し、通知・公表する義務が生じます。特にAIの機械学習目的で情報を使用する場合、その旨を公表しておくことが必要です。
ただ、あまり具体的に記載しすぎた場合、途中で利用目的の変更などが発生するケースがありますので、注意が必要です。
2. 本人からの削除申請への対応(法第29条、第30条)
注意点: 本人が自身の個人情報の利用停止や削除を求めた場合、個人情報取扱事業者はこれに対応する義務があります。LinkedInで公開されている情報も、機械学習のために収集した個人情報の一部であれば、その削除に応じる必要があります。
関連条文:
第29条(保有個人データの開示等の請求権):「本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該事業者の保有個人データについて、当該事業者が定める方法により、当該保有個人データの利用停止、消去等を請求することができる。」
第30条(保有個人データの利用停止等):「個人情報取扱事業者は、本人から、その保有個人データが法令に違反して取り扱われている場合その他の利用停止等を求められたときは、遅滞なくその利用を停止し、または消去しなければならない。」
解説: AIの学習に用いた個人情報に対し、本人が利用停止や削除を求めた場合、その請求に応じる必要があります。これはAIのモデルの再学習やデータの修正につながる可能性があるため、機械学習の実務でも重要です。
一方、匿名加工情報になった情報を用いて学習するのであれば、当該情報に限っては、本人の削除依頼に応じる必要はありません。
3. 第三者提供(法第23条)
注意点: 個人情報を第三者に提供する場合、原則として本人の同意が必要です。AIの機械学習によって生成されたモデルが個人情報を含む場合、その提供には慎重な対応が求められます。
関連条文:
第23条(第三者提供の制限):「個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。」
解説: 例えば、LinkedInの情報を用いて構築したAIモデルを他社に提供する場合、そのモデルが個人情報を含むと判断されると、事前に本人の同意を得る必要があります。ただ、大量のデータについて同意を取り直すことは現実的ではありません。それゆえ、第三者提供を行わないという前提でシステム開発を行う必要があります。
4. 匿名加工情報の利用(法第36条~第39条)
注意点: 匿名加工情報とは、特定の個人を識別できず、かつ他の情報と照合しても特定の個人を識別できないようにした情報です。AIの機械学習のためにLinkedInの情報を利用する際に、個人情報を匿名加工情報に変換することで、利用や第三者提供が可能になります。
関連条文:
第36条(匿名加工情報の作成):「個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成するに当たっては、当該匿名加工情報に含まれる記述等を用いて特定の個人を識別できないようにしなければならない。」
第37条(匿名加工情報の提供):「個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を第三者に提供するときは、当該匿名加工情報に含まれる個人に関する情報を用いて特定の個人を識別することができないことを確認しなければならない。」
解説: LinkedInの情報を匿名加工情報に変換することで、本人同意なしに機械学習に利用したり第三者に提供することが可能です。ただし、匿名加工情報の作成には適切な加工処理が必要であり、特定の個人を識別できない状態でなければなりません。
この点、どのように加工するのかについては、社内での議論が必要です。
まとめ
LinkedInで公開されている情報をAIの機械学習に用いる場合、個人情報保護法に基づき、利用目的の明確化と通知、本人からの削除請求への対応、第三者提供の制限、そして匿名加工情報の作成と利用に関する手続きを適切に行う必要があります。特に、AIモデルの構築や情報提供において、個人情報が適切に取り扱われているかを確認することが重要です。
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