2024/02/19 坂本サトル tour 2024 with 佐藤達哉「In my STUDIO2」東京公演ライブレポート
ソロデビュー25周年前夜に行われた「In my STUDIO2」ツアーのファイナル公演
■坂本サトルさんブログ
坂本サトルオフィシャルブログ「日々の営み」で、この日のことやセットリストが公開されています。松本英子さんもいらっしゃってたんですね。
■東京公演ライブレポート
2023年12月より、八戸、大阪、札幌、小樽(※小樽はソロ弾き語り)とおこなわれてきた、坂本サトルさんとキーボーディスト佐藤達哉さんによるデュオツアー「In my STUDIO2」。
そのツアーファイナルとなる東京公演が、2月19日、渋谷のライブハウス「LOFT HEAVEN」で開催されました。
東京公演にはヴァイオリニスト鹿嶋静さんが参加。そしてこの日は、サトルさんのソロデビュー曲「天使達の歌」(1999年2月20日発売)がリリース25周年を迎える前夜、つまり24周年の最後の夜ということで、サトルさんの周年をお祝いするお祭りのような特別感がありました。
客席後方の物販スペースには、JIGGER'S SON時代からファンクラブデスクを担当していた方がスタッフとしていらっしゃっていたり、さらに奥のPAブースには、JIGGER'S SONの頃から付き合いのある音響スタッフ・茅原浩二さんのお姿があったりと、サトルさんと旧知の仲のスタッフもサトルさんのアニバーサリーを見届けてくれるようで、うれしく感じました。
(茅原さんのInstagram)
セットリストは、2023年12月23日に行われた無観客配信ライブ「忘れじの2023」とほぼ同じで、配信ライブでは投げ銭特典映像だった「バトン」が加わった内容。
しかし、会場にはオーディエンスの拍手があり、歓声があり。そして目の前で演奏される音と歌声の魅力は、画面越しでは体感できないもの。
昨年末に患った風邪の咳が長引き、札幌、小樽ではノドの調子が思わしくなかったというサトルさんでしたが、この日は、中盤に少し咳こんでいたものの、歌声もギターもキレキレ、圧倒的な迫力がありました。
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開演。静さん、達哉さん、サトルさんの3人が登場。
「コーンスープ」「愛の言葉」と、サトルさんと達哉さんの息の合った演奏に、静さんのストリングスの音色が加わり、楽曲のイメージが豊かに広がっていきます。
「明日でソロデビュー25年。今日は24年の最後の夜としてやらせてもらいます」と言って演奏した「始まりの歌」は、最初のワンフレーズはマイクから離れ、ステージ前方に出て生声で歌唱。3連符のギターストロークがいつもよりスピーディーに感じられ、足踏みやフェイクも凄みを感じるほどの迫力。
25周年を迎えるにあたり、これからも前に進んでいく決意を感じられるような、素晴らしい歌声とプレイに引き込まれました。
続く「やぶれかぶれ」では、オレンジとピンクの照明が曲のムードを優しく演出し、2番から加わったストリングスが心に柔らかな余韻を残しました。
静さんが退場し、達哉さんとMC。
八戸公演(12/10)、青森での配信ライブ(12/23)、大阪公演(1/29)、札幌公演(2/3)と演奏を重ね、達哉さんとはアイコンタクトで会話できるほどの高みに達し、しかし公演のペースが空いていたため毎回フレッシュな気持ちで臨むことができて、「楽しいツアーだった」と述べていました。
周年を意識してか、「何歳までライブを続けられるか」という話題に。レジェンドギタリストの吉川忠栄さんは76歳の現在もライブを続け、さらに74歳まで自分で運転し移動していたというエピソードを話し、サトルさんも70代半ばくらいまではできるかな…とのこと。「今いる(ファンの)人はこれからも一生いると思う!」
その流れで「今日初めて坂本サトルのライブを見た人?」を尋ねると、2人ほどいらっしゃり(偶然にも共に千葉の方)、そのうちの1人は、8年ほど前に松島パークフェスティバルでサトルさんの演奏を見て、自身もギターを始めたとのこと。
その後、ことあるごとに(3回くらい)この2人に「どうだった?」と感想を求めていたのがおもしろくて、サトルさんらしいな、と思いました。
達哉さんと2人で「バトン」。胸を打つ歌声。「♪少しづつ薄めながら 命は続いてく」のあとの間奏のプレイは何度聞いても心に響きます。素晴らしかった。
静さんもステージに登場し、3人でMC。
サトルさんとの仕事で共演した様々なアーティストのライブに、サポートとして引っ張りだこの静さん。今度は喜多郎さんのワールドツアーでアジアを周る予定とのこと。サトルさんも以前、中国・深圳でライブをおこなったことがあり、その時の様子や思い出などをお話されました(PAの茅原さんも同行していたそう)。
達哉さんもまた、前々日・前日は横浜アリーナでaikoさんのライブ2days、そのほか多数のアーティストのライブに出演と多忙を極める日々。
サトルさんから「どうやって気持ちを切り替えているの?」という質問に対し、「朝からそのアーティストのTシャツを着る!」という回答。達哉さんの、サポートするミュージシャンへの愛を感じました。
静さんは「ライブで緊張したことがない。PTAで話すほうがよっぽど緊張する(言っちゃいけない言葉を言わないように気をつけないといけないから)」という発言により、サトルさんからサイコパス認定。
MCで盛り上がっていましたが、ライトダウンし、赤い照明がステージを照らして始まった「赤い月」。この日の歌声と演奏は、いつにも増して鬼気迫るものがあり、体を動かしながらプレイする静さんのバイオリン、達哉さんの力強いピアノ、そしてサトルさんのパワフルなギターと歌声、3人の音が重なり繰り出される音像が、熱狂と興奮、冷静、混沌など様々なイメージを想起させ、心の奥底から感情を呼び起こすような、苦しくなるほど圧倒的な名演でした。
静さんが退場し、達哉さんと2人に。
達哉さんのピアノ伴奏のみで「君に会いたい」。サトルさんは間奏のハープも演奏。このときサトルさんは少し咳が出て歌いづらそうだったものの、マイクとの距離や歌い方などでコントロールしており、フィジカルをテクニックでカバーする円熟味を感じさせました。
そして「木蘭の涙」では、音響を切って、歌声もピアノも生音で。ステージ前方に立ち、体をゆらゆら揺らし歌う姿は、まるで全身が楽器のようで、ボディで声を共鳴させているのが見てわかるようでした。
休憩を挟み、第2部。
達哉さんとサトルさんはTシャツに着替えて登場。後半の始まりはカバー曲から。
配信ライブ「忘れじの2023」でもお話していましたが、2023年に逝去された先輩方の歌を歌い継ぐという決意のもと、もんたよしのりさんの「ダンシングオールナイト」と、親交の深かったKANさんの「愛は勝つ」を披露。
若い頃より声がやや枯れてハスキーになった分、もんたよしのりさんの歌との相性が良いと仰っていました。達哉さんのピアノがかっこよかった!
そして、KANさんとの思い出話も。最後に会話を交わしたのは9月、KANさんが長くパーソナリティを務めた札幌のラジオ番組「ロックボンソワ」の代打パーソナリティを担当したとき。KANさんが緊急入院になってしまい打合せが電話でのやりとりとなったこと、KANさんがラジオ制作に一切手を抜かずに挑む態度に学ぶことがあったことなど、KANさんのことをお話してくれました。
「愛は勝つ」は、2016年の東北六魂祭でも共演したことがあり、「その時にKANさんに、”ジャンジャカジャーン”ってギターを弾いてほしいって言われたから、(今日も)そうやって弾きました」というサトルさん。(あぁ、KANさんが言いそう)。PAの茅原さんは、以前KANさんのライブを担当していたことがあり、KANさんと一緒にナンパに行ったことがあるというエピソードも飛び出しました。
サトルさんが「シンガーとして歌い継ぐことができる」と歌ってくれること、心からうれしく思っています。
静さんが登場し、3人で「大丈夫」。
オーディエンスとの合唱が定番となっているこの曲ですが、サトルさんの呼びかけで客電、そしてステージまで照明を落とし真っ暗に。するとオーディエンスから、聞いたことのないほど大きな声の「♪だ~いじょーうぶ」が!
サトルさんが過去のライブで、「客電を消せばみんな恥ずかしがらずに大きな声が出せるのでは?」と思いついたという通称「宇都宮方式」が功を奏し、会場全体が一体となって大盛り上がり。
興奮冷めやらぬなか、JIGGER'S SONのハイテンポなロックナンバー「カルカロドンメガロドン」が続き、佐藤達哉さんが客席まで降りて謎の踊りを見せつけ、客席からは黄色い声援も飛び出しヒートアップ!
続いて、「この歌も大切な曲。いつも新鮮な気持ちで歌っている」と「アイニーヂュー」。ギターも声もパワフル。演奏後、ギターを始めた初参加の方に、ギターピックをプレゼント。
「明日でソロデビュー25周年。それまで弾き語りなんて一度もやったことがなかった。ストリートで弾き語りをして、シンガーとして発声方法がすっかり変わってしまった。体全体を使って、体の中で声を響かせるようにならすという歌い方。でもそのおかげで、東日本大震災のときも、音響設備も何もないところでギター1本でどこでも歌うことができた」
そう言って歌った「天使達の歌」は、その当時を彷彿させるかのように、PAなしの生声、生ギターでワンコーラスを披露。2番からマイクの前で、達哉さん、静さんも加わり演奏。サトルさんの25年の歩みが歌声からにじみでているようで、とても心に残る演奏でした。
「天使達の歌」を歌いながらサトルさんがいろいろ思い返していたのは、「その当時のスタッフがずいぶん亡くなった」ということ。
2015年、サトルさんと一番関わりの深いスタッフだった小林英樹さんのお葬式で、もちろんマイクなしで「天使達の歌」を歌ったとき、とてもいい歌を歌えたと思ったのだそう。
「まだまだ頑張んないとな!」とサトルさん。
アンコールは、「1日の終わりに聞いて眠れるような曲」として制作したという「猫と踊る」。
この曲もPAなし、達哉さんのピアノ伴奏のみで、ステージ前方に出て生声で歌唱。ブルースハープも生音で聞かせました。
思ったより時間があるので、そして名残惜しいからと、ダブルアンコールとしてもう1曲演奏してくださることに。
なぜ時間が余ったのか? それはなんとこの日、第2部の冒頭でやるはずだった達哉さんのソロ演奏を忘れていたから! このとき初めて気がついたサトルさん。
達哉さんは第2部が始まった時に、サトルさんのiPadがカバー曲のページになっていたので、忘れてるな…と気がついていたものの、そっとしておいたそう。(達哉さんに謝っていました)
ダブルアンコールは「10年後の僕ら」。東日本大震災から10年を迎える2021年に制作したこの楽曲について、「東北の人だからかけた曲だと思う」と述べ、東北出身である3人の演奏で届けてくださいました。
静さんの美しいバイオリンの音色が、前に向かっていく希望をくれるようでした。
■東京公演 感想
ライブの日程を決めた時には特に周年を意識していなかったそうですが、25周年の前夜ということで、サトルさんのこれまでの歩みが歌声からにじみ出ているようで、思い出深い一夜になりました。
「天使達の歌」ができたとき、各地に赴き、音響設備のないストリートや飲食店で、ギター1本と自分の歌声だけでプロモーションライブを重ねたという25年前。そんな日々を彷彿させるかのように、この日のライブもPAなしでの歌声を披露したサトルさん。
アンプラグドで歌った「天使達の歌」は、歌声にふくよかな厚みと円熟味を増しながらも、この曲が生まれた当時の情熱や思いは変わることなく込められているように感じました。
私が最近好きなのは、サトルさんが「天使達の歌」を歌い終わった後、アウトロのギターを演奏している姿です。
歌が終わり、目をつぶりながら何かに思いを馳せるように、丁寧に、力強い音を響かせてギターをストロークしている姿は、実直な、いぶし銀のかっこよさがあって、その佇まいからもいろいろ伝わってくるものがあります。
シューイチラジオ(オフィシャルファンクラブ「サトル部」限定の配信ラジオ)に、このことについてメールしたところ、
「ギターが一番いい音で鳴るところを探しながら演奏している。そのときはお客さんも関係なく、ギターと自分だけの世界になって、一体化しているような感じ」とお話しされていました。
サトルさんがギターを弾いて歌っている姿も含めて、全身から伝わるメッセージが、「天使達の歌」の真骨頂なのではないかと思います。
これからも、サトルさんがライブで歌い続ける姿を、楽しみにしています。
■会場 渋谷LOFT HEAVEN
会場の「渋谷LOFT HEAVEN」は、渋谷駅から徒歩10分ほどの、地下にあるライブハウスでした。
ステージと客席の天井一面に、シフォン素材のカーテンがあしらわれており、照明によって様々に表情を変えていました。
ステージにはグランドビアノが鎮座。
セットリスト
2023年12月23日配信ライブ「忘れじの2023」
ライブとほぼ同じセットリストが楽しめます。