2023年5月13日坂本サトル弾き語りツアー白石公演@カフェミルトン(セットリスト・ネタバレあり)
坂本サトルさんの2023年全国ツアー。
ソロ弾き語りツアー3公演目、宮城県白石市「カフェミルトン」での、アンプラグドライブに参加しました。
カフェミルトンは、前年(2022年)には3回もライブを行い、サトルさんにとっても、ファンにとっても大切な場所。
PA(音響機器)を一切使わない、生の歌声、生のギターの音という完全アンプラグドライブを楽しめるのが、ミルトンライブの醍醐味です。
ライブレポート
※以下、ライブのセットリスト、ネタバレを含むライブレポートです。
本公演は「弾き語りツアー2023『30年後のひとり』白石公演」ですが、ほんの少し、佐藤達哉さんとのデュオツアーの内容にも触れているところがあります。ご了承のうえお読み下さい。
■ライブレポート
この日のライブは17時半を少し過ぎた、まだ明るい時間からのスタート。
ミルトンのテラスに続く、大きなガラス扉よりサトルさんが登場。
時間の経過とともに夕暮れを迎え、サトルさんの背景の大きな窓から見える空の色の変化もまた、ライブの演出の一部となったような空間でした。
「よろしくお願いします」と一礼。
今日の衣装は、黒のハットに、白地に黒のフラワープリントがあしらわれたシャツ、黒のボトムス。
はじめに、「ミルトンライブ初めての人?」と観客に問いかけ。
数名いらっしゃり、
「ミルトンライブだけ来たことがある人にときどき誤解されるんだけど。『坂本サトルといえばマイクなしの生歌でライブをする人』と思っている方もいるみたいですけど、ここ(ミルトン)だけが特別です(笑)」と、
ミルトンでのアンプラグドライブが、特別なライブであることをお話されていました。
1曲目、ミルトン恒例のオープニングテーマ「ミルトンへ行こう」。
この歌詞が、ここでのライブのすべてを表している様で、大好きな歌です。
(耳コピなので、違っているところがあるかも)
2曲目「コーンスープ」。近年のサトルさんの代表曲。
この曲は、「おもいでレストラン」というレストランでのライブベントのために書き下ろされた曲で、飲食店であるミルトンでも、歌の情景が会場の雰囲気とよく合います。
この日のサトルさんは、全体的に、目をつぶりながら、思いを込めて歌を歌われている印象でした。
「♪明日へ進むために欲しい勇気を きっとこの場所で見つけられる」というフレーズが力強く、胸に響きました。
3曲目「愛の言葉」。この曲も時々目をつぶりながら、丁寧に歌われていました。1番最後とラストの「♪ラララ~」のコーラスを観客が一緒に参加。
昨年までのライブでは声出しに遠慮がちだった観客も、この日は大きな歌声で参加しました。
MC 180度ぐるりと観客に囲まれるステージに、「正面だけじゃなく横も気にしないといけない」とぽつり呟くサトルさん。
観客より「マイクなしでもここまで(客席後方まで)歌が聞こえて感激した」との声があり、会場は温かな拍手に包まれました。
サトルさんが敬愛するミュージシャン、リクオさんと初めてきちんとお会いできたのが、ここミルトン(2012年4月えずこホールでのイベントの打ち上げ)だったそうで、その話を交えつつ、次の曲はリクオさんとの共作「タビガラス」。
(↓そのときの打ち上げの模様。2012年4月21日坂本サトルTwitter)
「タビガラス」イントロの印象的なギターリフを弾くのに、ギターのボディを支えるため片足を台の上にあげて歌う必要があるそうで、ミルトンママが煉瓦を4つ重ねた台を用意してくれました。サトルさんいわく、片足あげてギターを爪弾く姿が「かっこ良すぎてかっこ悪いよね(笑)」。
ツアーで全国を飛び回るミュージシャンの生き様を表現したような歌詞がクール。2番冒頭をささやくように歌い、Bメロで勢いよく爆発するような歌い方がかっこ良かったです。
5曲目「君に会いたい」。同時並行で行われている佐藤達哉さんとのデュオツアーでは、バラードヴァージョン(『In my STUDIO』ver.)で歌われていますが、こちらではアップテンポのオリジナルに近いヴァージョンで披露。時おり遠くを見つめながら、気持ちを込めて歌われる、会えなくなった人への思い。最後に繰り返される「♪君に会いたい」というフレーズが、切なく強く、胸に届きます。
MC ライブ前日の5月12日、気仙沼にて、2011年4月3日の東日本大震災復興イベントで集めた義援金の残りを寄付したというお話。詳細はサトルさんのブログにアップされています。
6曲目「やぶれかぶれ」。力強く温かい歌声。
人生の荒波に揉まれているとき、それでも何とか前に進もうと思えるのは、
「月明りみたいに照らしている」あの日の「お前の笑顔」があるから。
「♪やり直せるかな 思い描いた自分と違っても」
「♪いつかどこかで出会えた時に 笑い合えるように もう少しだけやってみるかな」
サトルさんの歌が温かいのは、人が人を想う優しいまなざしがあるからだと感じます。
サビの前向きなフレーズが、背中を押してくれるようです。
7曲目「4月3日に生まれて」。
「♪笑顔で立ってる君も ぎりぎりで踏ん張っている」
まるで自分のことを歌っているんじゃないかと思わせる冒頭のフレーズに、いつも心を掴まれます。
アップテンポの曲で、観客の手拍子がさらに楽曲を盛り上げます。
前半最後の曲と紹介された8曲目「赤い月」。
間奏では、演奏に没頭するように目をつぶり、体や頭を揺らしながらギターをかき鳴らすサトルさん。ギター1本、そしてPAなしとは思えないほど迫力のある響きに引き込まれます。
圧倒的なプレイと、繰り返される「♪遠くまで」というフレーズに、観客も現実から離れ、遠く別の世界へと連れて行かれるような感覚を覚えます。
演奏後は、感嘆の溜息とともに、大きな拍手に包まれました。
休憩をはさみ後半へ。
後半が始まるころにはすっかり日が沈み、外は暗く、時おり窓の外に流れる車のヘッドライトがライブの雰囲気を引き立てていました。
後半の始まりは、ミルトンママからのリクエストで、下田逸郎さんのカバー「セクシィ」。サトルさんのアルバム『プレゼント』(’14年)に収録されています。「セクシィ」の繊細で優しい歌声について、サトルさんは以前ラジオで「マイクに最大限に近づいて小さくささやくように歌っている」と仰っており、アンプラグドライブであるこの日も「小さな声で歌うので静かに聞いてね」とのこと。その分、観客も歌に集中して、曲に入り込むように聞き入っていました。ギターもフィンガーストロークで、切ない大人の雰囲気を醸し出していました。
この曲は、下田逸郎さんも歌われていますが、もともと石川セリさんに提供した曲で(’76年発売シングルのカップリング)、女性ボーカルで聴くと男性のことを、男性ボーカルで聴くと女性のことを歌っているようにも聴こえる、不思議なムードを湛えた曲です。
続いてもカバー曲。昨年12月のミルトンライブでも歌われた川村結花さんのカバー「歌なんて」。
歌の力を信じている。けれど、時々その気持ちが揺らいでしまう時がある。
この曲を聞いたとき、そんな自分を見透かされたようで、とても心に響いたと話すサトルさん。
「♪歌なんて 歌なんて なんの役に立つものか」
飾り気のないまっすぐな言葉で紡がれながら、ミュージシャンのエゴを鋭くえぐり出すようにも聞こえる歌詞が、胸に刺さります。それでも、
「♪歌がまた ふさいだ心に流れていた」
「♪歌はただ 意味など持たず そこにあった」
という帰結に、どこか救いを覚えるような歌にも思えます。
続いて「この曲は、歌の力を信じている、そんな歌」と言って歌われた「何も知らなかったよ」。’09年のアルバム『1:25pm.』に収録。
「♪隣にいたつもりだったのに 何も知らなかったよ
声も上げず涙も流さず いつも君は泣いていたんだね」
すぐ隣にいても、気がつかない悲しみがある。
悲しみに寄り添うような歌詞が心に沁み入ります。
MC 今年7月に仙台でJIGGER'S SONのライブが開催されることに触れ、今回の弾き語りツアー北海道(5/6~7)では、本当は帯広に行ってメンバーの渡辺洋一さんに会いたかったのに、「いいよいいよ」と断られた(笑)というお話。
昔の仕事仲間や著名ミュージシャンの逝去が続き、メンバーと共に歳を重ねる毎に「今年は本当にラストライブになるかもしれない」と思うようになってきたというサトルさん。JIGGER’S SONメンバーが毎年集まってライブができるそのことが、尊く奇跡的なことだと実感します。
そんなMCから、JIGGER'S SONの曲「缶ビール」。
JIGGER'S SONが初めてセルフプロデュースしたアルバム『JIGGER'S SON』(’94年)に収録された代表曲で、バンドにとっても大切な曲。
バンドが解散し(現在は再結成)、ソロとなってからも、サトルさんはライブで歌い続けてきました。
「缶ビール」をじっくり聞かせた後、そのまま途切れることなくJIGGER'S SON「素敵な日々」へ。
観客の手拍子は頭上で高らかに、幸せに満ち溢れたこの曲を盛り上げます。
楽しい!
そして14曲目「大丈夫」。サビの「♪大丈夫」を観客も合唱。
サトルさんが「もっと大きな声で!」と観客を煽ることを5~6回ほど繰り返し、割れんばかりの大合唱に。
疲労困憊のサトルさんでしたが、がんばってくれました。
ミルトンマスターからも「最高です!」の一言。
「アイニーヂュー」。
1番Bメロ「♪嫌なことがあったら…」のあと、
「♪…酔っぱらっていい気分になって ぱーっと忘れられたら楽なんだけど」の部分と、2番Bメロ「♪『君の変わりなんて…」のあと、
「♪…いくらでもいる』って 本当に言われたらさすがにちょっと落ち込むよなあ」の部分を、観客が一緒に歌うのがライブでの定番。
この日は、「このあとも歌ってみて!みんな急に歌えなくなるけど(笑)」と、続きも一緒に合唱。確かに歌詞が不安でした(笑)。
MC サトルさんが、「命の続く限り歌いたい」と宣言。(うれしい!)
そこから案の定、健康診断、そして人間ドックのお話に。
そして最後の歌(ではなかった)「天使達の歌」。
ライブで何度も聞いている曲ですが、この日は、間奏でかすかに「♪ウ~」という歌声を重ねていたり、ダン!という足踏みが入ったりと、普段とはまた違った歌い方をされていました。
ミルトンライブではアンコールなしが定番だったため、この日もそうかと思いきや、「拍手ないけどもう1曲歌っちゃうね」と、アンコール「10年後の僕ら」。
前述のMCのように、震災以降、毎年気仙沼に足を運んでいるサトルさん。気仙沼も通うたびに、どんどん新しい街並みに変わっているそうです。
それを寂しいと思う人もいるかもしれないけれど、そこで暮らす子供たち、若い人達は、新しい街で思い出を作っていく。だから、変わっていくことを悲しいと思わず、新しい10年を始めていってほしい。
この歌の最後のバースに込めた思いを述べ、「10年後の僕ら」を歌い上げました。
■打ち上げを兼ねた食事会
ライブ終演後は、こちらも恒例の打ち上げを兼ねた食事会が開催されました。この日は、私は早めに帰らなければならず、最後までいられませんでしが、ミルトンママがアップした画像の、参加者のあふれんばかりの笑顔が、とても素敵な会だったことを物語っています。
アンプラグドのライブや「生うた」を届けるということについて、マイクなしの歌唱は、ごまかしがきかず、本人にとっても決して楽なことではないそう。それでも、加工の一切ない歌声を届けるということは、すべてのシンガーにできることではなく、大切にしていきたいと、ラジオで仰っていました。
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ソロ弾き語りツアー「30年後のひとり」は白石公演がセミファイナル、
翌日5月14日八戸公演がファイナルでした。
八戸公演では、高校の同級生が客席にいらっしゃったり、シークレットゲストとしてモモさんが登場したりと、こちらもとても良いライブだったようです。
デュオツアーは大阪、東京と続いていきます。
そして6月17日、18日は青森でサトルさん主催の青森フェスイベント「HOMETOWN MUSIC LIFE2023」。
7月15日は仙台darwinでJIGGER’S SONライブ。
駆け抜け続ける2023年のサトルさん。
応援しています。
■セットリスト
■撮影タイム
ライブ終演後に撮影タイムあり。サトルさんは忘れていて、ファンの方に「撮影タイムは⁉」と声をかけていただき実施。
関連あれこれ
■2012年のえずこホールでのライブ
サトルさんのブログ『日々の営み』より。(2012年4月20日~3日)
■アルバム『プレゼント』
「コーンスープ」(弾き語り)、「君に会いたい」(弾き語り)、「アイニーヂュー」(弾き語り)、「缶ビール」(弾き語り)、「天使達の歌」(弾き語り)収録。
■アルバム『HOMETOWN MUSIC LIFE』
「タビガラス feat.リクオ」、「コーンスープ」(バンド演奏の完全盤)収録。
■ライブアルバム『In my STUDIO』
今年のライブでやった曲をだいたい収録。特設サイトには歌詞も掲載。
■2023年4月9日佐藤達哉さんとのデュオツアー仙台公演レポート
ネタバレなし
ネタバレあり