2022年12月3日 坂本サトル アンプラグドライブ♪atカフェミルトン ライブレポート
2022年3度目のミルトン・ライブ
宮城県白石市にあるライブレストラン『カフェミルトン』で開催された、坂本サトルさんの生歌・生ギターの完全アンプラグドライブ。
コロナ禍でライブを休まざるを得なかった期間を経て、ミルトンとサトルさんのライブ同時再開となった7月30日の第1回目、7月が即完売したため追加公演として9月3日に開催された第2回目、そして、そちらも完売につき追・追加公演として開催された今回のミルトンライブ。
サトルさんも初という、半年で3回目の開催となりました。
私は7月に参加して以来の、今年2度目のミルトンライブでした。
第1部
前回同様、観客は検温・手指の消毒を済ませて入場。
7月のライブより観客数を増やしているためか、前回より会場の熱気が高い印象でした。
アーティストを180度囲むような、熱っぽい雰囲気の会場のなか、サトルさん登場。
今年8月のジガーズサンライブと同様、グリーンが鮮やかなカジュアルシャツ&デニムの装い(もちろんハットも)です。
ミュージシャン然としたオーラがすごい!とっても素敵でした。
12月の19時は外も真っ暗。完全に夜のライブです。
ビールを手にしたサトルさん&観客で「乾杯!」からスタート。
「今日は自分の歌いたい歌を歌う」と宣言。
1曲目、ミルトンライブのテーマソング『ミルトンへ行こう』を歌うサトルさん。
何度経験しても、マイクなしということが信じられないほどの、迫力あるギターと圧倒的な声量、響き渡る生の歌声に驚きます。
「♪晴れた日には ミルトンへ行こう」楽器を積んで、車で南へ、南へ…。雪の青森から白石まで旅をしてきたサトルさんの姿が歌と重なります。
今回は「♪冬の日も ミルトンへ行こう」という歌詞が新たに加わり、夏~秋~冬と季節が変わるたびにミルトンでライブが開催された感動がこみ上げました。
続けて『4月3日に生まれて』。「♪君に会いに来たよ」というフレーズが、いまこのライブの観客に向けられているようで、ライブで聴くと一段と嬉しい曲。
『大丈夫』では、観客も一緒にサビを熱唱し、一体感に包まれます。もう、余計なエクスキューズは必要なし。観客も個々の判断とお互いの信頼のもとライブに参加している、そんな風に感じました。
MCでは、観客がどこから来たのか?お尋ね。
サトルさんの今年最後の一般ワンマンライブということもあり、宮城県内はもちろん、青森、静岡、東京、大阪、兵庫、北海道…、全国各地から集まっていました。
白石市という決して大きくない宮城の一都市に、遠方からもたくさんの方が足を運んでいることが、ミルトンライブの魅力を物語っています。
この季節にぴったりの曲『君と歌ううた』。’06年のラジオ番組『RABチャリティーミュージックソン』放送中に作られた楽曲で、目に見えるもの以外の感覚で表現したという雪の街の描写がすばらしく、冬の季節に聞くと、より一層の臨場感を持って、歌が心に響いてきました。
『やぶれかぶれ』。最近のライブでは必ず歌う、サトルさんの近年の代表曲。サトルさんの歌声と歌がとても合っていて、自然に歌が入ってきます。「♪やり直せるかな 思い描いた未来と違っても」「♪もう少しだけがんばってみるよ」というフレーズが、リスナーの心に前向きな余韻を残します。
続くMCでは、サトルさんが敬愛するシンガーソングライター・リクオさんのお話に。リクオさんも過去に、カフェミルトンでライブを行っているそうです。サトルさんとリクオさんが出演した「えずこホール」(大河原町)でのライブの打ち上げ会場がミルトンだったという思い出話をされ、リクオさんの楽曲のカバー『胸が痛いよ』を披露。
前半はフィンガーストロークで胸が締め付けられるような切なさを、後半はピックで力強くギターを鳴らし、エモーショナルな感情の高まりを表現しているように感じました。曲への解釈や感情がギターでも表されているんだなと、ライブならではの曲の魅力の発見がありました。
ちなみに前半では、サトルさんの一番近くの観客の方にピックを預け、後半でサトルさんが手を差し伸ばしピックを受け取っていました(最後はその方にピックをプレゼント)。こういう観客参加型の温かな雰囲気も、ミルトンライブの醍醐味だなと思います。
続けて『君に会いたい』『コーンスープ』。ともに、失くしてしまった大切な人へ思いを馳せる曲を歌い上げ、リスナーの心に感動的な余韻を残しながら、1部が終了。
1部では全曲スタンディングで演奏されていました。
第2部
インディゴカラーのGo!Go!Tシャツに着替えて登場。
「売り切れるまでGo!Go!Tシャツを着る」とおっしゃっていましたが…寒そうでした。
第2部はサトルさんも着席でスタート。
観客が落ち着くまでしばし歓談の後、「この時期はやっぱりこれを歌いたい」と『北風小僧の寒太郎』。サビの「♪ひゅうーん」のところをみんなで一緒に歌いました。楽しい。
続く『woman-「Wの悲劇」より』を皮切りに、女性シンガーのカバーが続きます。
「コロナ禍で止まってしまったイベント」として、篠原美也子さんとともに横浜О-siteで続けていた「the Meeting〜シンガーソングライターと、出会う〜」のことを紹介。
様々なミュージシャンが参加してきたこのイベントで、サトルさんが、「シンガーソングライターとして歌への向き合い方に特に感銘を受けた」と名前を挙げたのが、柴草玲さんと川村結花さんのお二人。
今回は、サトルさんの心に強く訴えかけたという川村結花さんの『歌なんて』をカバー。私は初めて聞いたのですが、これがものすごい歌でした。
「信じられないかなしみに ある日 とつぜんに出会った
信じつづけてきたもの ひび割れて粉々に壊れた
歌なんて 歌なんて なんの役に 立つものか」
冒頭からラストまで、すべてのバースに心を掴まれました。
1行1行すべての歌詞がカミソリみたいに研ぎ澄まされて鋭い。
全部のラインが刺さりました。
この歌を歌うシンガーソングライターの心情とはどんなものなのか。
サトルさんのカバーもとても素晴らしかったですが、この歌に多くの方に出会っていただきたいので、川村結花さんのオリジナルソングのリンクを貼っておきます。
『イロナキカゼ』こちらは、サトルさんが熊谷育美さんに提供した新曲のセルフカバー。サトルさんは以前からこの歌を「いつか自分でも歌いたい」と話しており、念願の初披露となりました。
ギターの弾き語りで歌う『イロナキカゼ』は、歌から立ち上がる風景が、育美さんのオリジナルとはまた少し違った印象でした。終盤、声が出ずらそうな箇所があり「キーが合わなかったのかな?」と思いましたが、後から伺ったところ「歌に入り込み過ぎてしまったから」とのこと。確かに、表情や歌声から情感が伝わってきました。いつかもう1度リベンジの歌声で聞いてみたいです。
イスから立ち上がり、スタンディングで歌う『赤い月』。ダウナーな心情を歌いながらも後半にかけて感情が爆発していく迫力がものすごく、終盤ギターの弦が切れても構わずにそのまま最後まで歌いあげ、気迫に圧倒されました。すごい歌だなと思いました。
ギターの弦を交換する際、サトルさんは「最近は昔と比べてギターの弦が切れなくなった。優しく弾いているから。楽器はなんでも、優しく弾いたときが一番いい音色がする」とお話されていました。
「やっぱりミルトンではこれを歌わないと」と『アイニーヂュー』。
”働くこと”に対するブルースとアンセム両方の魅力を持ち合わせた、サトルさんのソングライティングの真骨頂ともいえる代表曲。
「♪この僕には”あなた”が必要だ」のところで、観客一人ひとりに向かって指をさしながら「あなたが」と繰り返し伝えてくれて、うれしかったです。
今年7月、ミルトンと自身のライブのリスタートを切った際、2年半ほどライブを休んでいたため「2時間やり切れるのか」「歌唱力は衰えていないか」といった不安に苛まれ、その時のライブは成功を収めたものの、その後もライブのたびに、少しの不安がつきまとうようになってしまったと話すサトルさん。特に、ミルトンでの完全アンプラグドライブは、声量や技量など、PA(音響設備)ありのライブと比べて多大なエネルギーが必要なため、正直きつい面もある。それでも、ここで歌うことは特別なことであること、この場所を守っているミルトンママ、マスター、息子のマサヒロさんへの感謝を述べ、『天使達の歌』で本編ラストを締めくくりました。
そして、エンディングバージョンの『ミルトンへ行こう』。
「♪冬の始まりの日 ミルトンに行こう」
「♪ママは強く マスターは笑う マサヒロもいるよ」
サトルさんの、ミルトンへの深い愛情が感じられるあたたかな曲です。
今回は特に、「♪あの日々は幻だったの?」というフレーズが胸に残りました。その歌詞を聞いた瞬間、コロナ禍以前には当たり前だった日々ーー感染症のことなど何も気にせず、マスクもせず、笑顔で、歌って、声援を送って、ライブを楽しんで、食事やお酒を飲んで、密着して…ーそんな日々は幻だったの?と思えるほど、コロナ禍は長く、そんな日々が遠くなっていることが思い出され、切なくなりました。
「できるならみんなと大きな声で歌いたい」コロナ禍の日々の方が幻だったと思える日が、いつか早く訪れますようにと、祈りたくなる気持ちになりました。
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ミルトンライブの大きな特徴である、マイクやスピーカーなど機械をまったく通さない、サトルさんの生の歌声と生のギターの音色は、やはり聞こえ方・伝わり方が格別で、ミルトンでしか味わえない唯一無二のライブだなと思いました。
歌声はもちろん、歌う表情やギターを鳴らす身体の動きまで、すべてが混然一体となって、圧倒的な迫力で「歌」を伝えてきます。
「歌う」ということは身体表現なんだなと感じるほどでした。
サトルさんと観客の距離の近さゆえに、お互いに集中力が必要であり、その分没頭の度合いが違うのかもしれません。
音楽って素晴らしいな、と改めて思いました。
食事会にて
ライブが終わると、参加できる人はそのまま残ってミルトンでお食事会。おいしいお料理&お酒とともに、ファンの方々やサトルさんと、ライブの感想をはじめいろいろなお話をすることができ、とてもいい時間でした。
今回、23年前にサトルさんが『天使達の歌』の弾き語りでストリートライブをしていたときに、サトルさんの後を追いかけていた青年と、その時以来の邂逅を果たすという奇跡のような再会の場面があり、盛り上がりました。
ラジオ番組『ひとりの時間。』でのコメント
2022年12月12日放送ラジオ番組『坂本サトル ひとりの時間。』(tbc東北放送)で、ライブの翌日に収録された、サトルさんからミルトンママへのインタビューが放送されていました。
サトルさん、ミルトンママ両者にとって、今年のライブは「3回とも本当に忘れられないライブとなった」そうで、ママにとっては「27年間のミルトン営業の中でも忘れられない」ライブだったとのこと。
サトルさんから「27年の中で、東日本大震災とかより、コロナ禍が一番きつかった?」との問いかけに、ママは、「コロナでいろいろ制限されたことはもちろん厳しかったけど、それよりもっと大きな痛手だったのが、今年(2022年)3月16日にあった地震」だったと答えていました。
白石蔵王駅の近くで新幹線が脱線するなど、宮城県各地に大きな被害があった3月の地震。その時に被害を受けたミルトン前の道路も、地震から9ヵ月経ったライブ当日である12月3日に、やっと補修工事が完了したのだそう。
お店の大切な食器なども壊れてしまったりと、とても心が痛んだそうです。
今年7月のライブ再開を決めたときは、そろそろ始められるのではないかという世の中の空気感もでてきており、「すごくいいタイミングでライブを再開できてサトルさんに大感謝」とお話されていました。
サトルさんもまた「(自分も)誘われなかったら、自分からいくぞという気持ちになれなかった。いいきっかけだった。あれから動きだせた」とママに感謝を述べていました。
「困難を乗り越えて、本当によくぞ続けてこれた」と、サトルさんとミルトンママが互いに称えあっていて、お互いへの信頼とリスペクトを感じました。
カフェミルトンは、マスターとママのお眼鏡にかなったアーティストだけが出演できる場所。
サトルさんは「白石という地方の小さな場所で、こだわりの店を27年以上守り続けるのがどれほど大変なことか」と、ミルトンの存在意義を称えていました。
ラジオの最後に、サトルさんは、
「白石にカフェミルトンという光が灯っているとするならば、ママとマスター、ご家族、周りの人々がみんなでその光を守っている。自分もその守りの一人になりたい」
とお話されていたのが印象的でした。
来年もライブを予定されているとのことなので、また足を運びたいなと思います。
セットリスト
■2022年7月20日 カフェミルトンライブレポート
今年(2022年)7月に行われたミルトンライブのまめきちのライブレポートです。