坂本サトル『話す猫 』feat.松本英子 のこと
『話す猫』
2月22日。
猫の日なので、坂本サトルさんの素敵なネコの歌を。
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『話す猫』は、愛猫家のサトルさんが織りなす、猫と人間の「会話うた」。
シンガーソングライター松本英子さんをゲストボーカルに迎え、
英子さんが飼い主、サトルさんが猫の気持ちを歌っています。
サトルさんの、猫に対する愛情深いまなざしが感じられるリリック。
誰もが一度は思う「猫と話しができたらな」という願いに、
「猫は本当は話せるんだ」という意外な回答。
でも話せない理由があって…。
おとぎ話のようにファンタスティック、
それでいて現実世界とも地続きのような、
愛おしくも少し切ない世界観を、
英子さんとサトルさんの優しい歌声で作り上げています。
以下、筆者が思う、この歌の魅力を紹介します。
語り口の妙
前述のとおり、『話す猫』は、
サトルさんが猫、英子さんが飼い主で、
猫と飼い主の気持ちを歌った「会話うた」。
しかし、1番の冒頭でサトルさんは、
「♪猫はね、ほんとは話せるんだ」と歌います。
リスナーがこの曲を最初に聴いたとき、サトルさんはストーリーテラーか?それとも神様視点の第三者か?、わからない曖昧なままで登場します。
続く2番で、サトルさんが
「♪僕はね ほんとは話せるんだ」と一人称で歌うことで、
サトルさんが実は猫だったということが、
初めてリスナーに明かされる仕掛けになっています。
1番の「♪猫はね」が、
2番で「♪僕はね」に変わることで、
僕=猫ということが違和感なくリスナーに伝わるという、
実は高度な詩作テクニックが施された、
サトルさんの手腕が光るリリックです。
ハーモニーで伝わる思い
1番では、サトルさんと英子さんが交互に歌いながら、猫と飼い主それぞれの想いを吐露します。
サビも含めて、2人が一緒に歌うところは一度もありません。
「猫」と「人間」という、種の隔たりを感じさせるようです。
しかし、2番Bメロの後半、
「♪暮れてく街に灯る明かり 一緒にベランダで見てたら」のあと、
「♪1日分の澱みがすーっと」のところで初めて、英子さんとサトルさんの歌声が重なります。
この、ふたりの声が重なるときというのは、
1人と一匹がベランダに一緒に並んで同じ景色を眺めている、人間と猫の視線が重なった時間でもあります。
二人の歌声の重なりが、同時に、歌詞の中での視線の重なりにもなっています。
そして、ここから後半のサビは、ふたりのハーモニーの掛け合いに。
「♪1人と一匹は それぞれの思いの深さに気づかないまま」と、
歌詞の中ではすれ違いを歌いながらも、
サトルさんと英子さんの重なる歌声で、
本当は両者の心もまた、しっかりと重なり合っている、ということが伝わってきます。
シンプルなアコースティックアレンジ
アコースティックギターとブルースハープ、ピアノというシンプルなサウンドで構成。
ブルースハープの切ない音色が、感情を揺さぶります。
イヤホンやヘッドホンで聴いてみるとわかるのですが、
全編通じて最初から最後まで、ギターは左から、ピアノは右からと、分かれて音が出ています。
英子さんとサトルさんのボーカルの掛け合いのように、
ギターとピアノも、各々の音色で掛け合い、セッションをしているかのように聞こえます。
サトルさんのセルフライナーノート
『話す猫』は、サトルさんが、
飼っていた猫を看病していたときの経験から着想を得て作られたとのこと。
猫と最期の時間をともに過ごしながら、
少しでも長く一緒にいたいという想いが、
歌詞の最後の一行に結実していったのかもしれません。
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