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「私だったらこうしてほしい」の「私だったら」は看護師として封印、っていう話

親が子どもによく言いそうですよね。
「自分がされて嫌なことはしちゃいけない」

自分がされて嫌なことは相手も嫌なこと

これが常識として教えられてきました。
人に迷惑かけちゃいけない、とか。

でも、この言葉を看護する立場の看護師の口から聞くと、私はもやっとします。

それって個人の感想ですよね?(ひろゆき風)

例えば、

ある方のケアを考える場面で、
「私だったらこうして欲しいから、こういうケアをします」
って、なんか聞いたことないですか?
私は学生がこれを言ったら、ちょっとだけ待ってタイムを持ちます。

文章にこうやって書くとさらに違和感ありますよね。
私だったらこうして欲しいから、こういうケアをします

私がして欲しいと思うことを相手も同じように思っている、
と決めつけちゃってます。

一見、相手の立場に立って考えていて、「寄り添う看護」っぽいんですが。

これは、その人に必要な看護を考える上では邪魔になる考えです。

価値観のおしつけはしない。

「私」が今持っている価値観は、「私」が今まで生きてきた中で見てきたり人から言われたり知識として身に着けたり人生経験だったり、そういった自分の知っている範囲で成り立っています。

相手がどのように感じるか、どんなことを望んでいるか、
どんなことを大切にしているのか
ここを知らずして「寄り添う看護」は成り立ちません。

当たり前のこと言ってますが、
人は、相手も同じように思っている、と考えてしまいがちです。

でも、自分がされて嫌なことが相手も嫌だとは限らないのです。

人に迷惑をかけないように、って言われてきて、自分の嫌なことは相手に頼まないようにしようって思っていたとしても、
え、それ全然迷惑じゃないよって喜んで引き受けいれてくれる人もいます。

看護ケアを考える場面以外でも、価値観のおしつけが生まれがちなのが、多職種連携の場面です。

病棟で看護師だけの中で働いていると、あまりこの価値観の違いって看護師同士では感じる場面少ないのですが、

これが他の職種の方と一緒にチームで働く場合、
特に、在宅医療の現場で働いていると、価値観ってこうも違うのか、という場面よくありました。

この価値感の相違
お互い認めないと、多職種でけんかになります(けんかは言い過ぎか、でも近い)
そりゃ違いますよね
勉強してきたことも違うし、「これが大事」って思っていることも違う。

私が前働いていた職場(デイサービス)で、なかなか癖つよな介護士の方(男性)がいて、
「こどもは家族と一緒に食卓を囲んでごはんを食べるべきだし、なるべく手作りのものを食べるべき」
という価値観をもっていて、
いいんです、別に、間違ってる間違ってないとかではないから。

でもこの価値観を、
経口摂取が難しく胃ろうから栄養注入している1歳男児とその家族に勝手にあてはめられるとどうなるか。
ミキサー食ではなく毎食経腸栄養剤(ラコールとか)を注入している母親に対して、この価値観をもとに「もっとミキサー食を作ったほうが子どものためになる」などと諭したってことがありました。

母親は心を閉ざしましたね。
ただでさえこの子を受けとめる、障害を受け入れるまで時間がかかった母親だっただけに、
この事で、「私は出来ていないダメな母親なんだ」という自己否定感を与えてしまいました。

これはちょっと極端な例かもしれませんが。

私は大丈夫!って思っている看護師の皆様
案外これは自然と身についている思考で、癖になっているものだと思っていてください。
自分の価値観が全てではない。
あたりまえのようであたりまえに出来ていないことです。

だって、
隣にいるだんなに、「なんでこれしてくれないのかなあ。私だったらいつもしてる」とか、こどもに「宿題して、明日嫌な思いしたくないでしょ」とか、言っちゃいますよね。
これも、だんなとこどもに焦点をあてて考えているようですが、
どちらも私の価値観からくる考えです。おしつけです。
だんなにはだんなの価値観ややり方があって
こどもだって宿題しなくても平気だったりする(うちの子はね)。

日常生活ではよくある話でも、
これは思考の癖なので、看護師は特に意識しないといけないですね。

あれ、これって私の感想では?
と、ひろゆきを思い出して、ふと自分の思考を振り返る時間をもてたらなと。


でも、
これだけは間違いないのは、
さっき出てきた癖つよ介護士さんでもいえることだけど、
価値観の相違はあっても、みんなが目指すところは同じ。
「患者さんや利用者さんが今よりよりよくなるために」
ということですよね。
困らせようとかもっと悪化させよう、なんて考える人はいません。

ということで、
同じ目標のもと、ただ人によって価値観の違いがあるだけ。

その人の価値観や考え、思いを、私たち看護師は自分にあてはめて考えても、ジャッジしてもだめなのです。

これが出来る人と出来ない人では提供できるもの(ケア)に大きな差が出ると思っています。
看護師がぴんきり、私が思ってしまう理由の一つでもあります。


「わたしだったら。。。」
は、対患者さんや利用者さんのことを考える場面では、看護師としては封印しましょう。









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