小説「潜れ!!モグリール治療院~第13話 もうお金だと脳がひりつかないんだよね~」
どいつもこいつも善は急げという、ならば悪はこそこそ遠回りだ。
冒険者ギルドの大規模行軍の列を見送りながら、モグリールは皮肉っぽくそんな言葉を口にした。
非合法の闇医者で、自分で治療して借金漬けにした患者たちを組み込んだ輸送隊を率いる、いまいち信用ならない悪党、それがモグリール。私は彼の申し出を受けて、同行という形で一緒に冒険することにした。
断る理由はいっぱいあるけど、受けてもいいと思える理由もある。
例えば同行者は彼だけではない。戦闘自慢のウォードッグス、裏社会での影響力を強めるマイルズファミリー、奇跡の体現者たちことモラーダ魔術同盟といった名立たる冒険者のパーティーが、モグリールの提案した移動ルートに乗り合わせたのだ。
冒険者たちが集まってパーティーを組むのが当たり前のように、パーティー同士が共闘することも珍しくない。
もちろん冒険者同士だから、宝や手柄を求めて競い合う相手ではあるけど、本質的なところでは敵ではない。敵はあくまでも行く手を阻む大自然、数々の魔獣、それと人間を排除しようとする勢力なのだ。
だから目的地が共通していたり、自分たちだけでは手に負えない難所を抜ける時なんかに協力し合うことは普通で、今私たちが進んでいるルートは、まともな道のないゴツゴツとした巨岩だらけの難所。
ただし難所ゆえに、そもそもこんなとこを進む馬鹿はいないと亜人種たちの警戒網が薄く、同時に冒険者ギルドの100人以上での大規模行軍への対処もあるから、相手の目はそっちに向けられるだろう、っていうのがモグリールの計算。
大規模行軍は失敗に終わる。
人間は馬鹿じゃないが基本的に馬鹿だ、無意識に自分たちが一番上だと勘違いする。でも実際はそうじゃない、人間が亜人種と区別した連中、そいつらも知恵では劣らない。むしろ地の利や体格で勝る分、向こうの方が1枚も2枚も上手だ。
奴らはそう遠くない内に全滅するだろう。密林の中で、荒野で、砂漠で、沼地で、ありとあらゆる場所で待ち構えられて手痛い歓迎を受けるだろう。
どのパーティーか忘れたけど、熟練の冒険者は皮肉たっぷりな口調でそう語った。
ということは、まあそういうことなのだろう。大変なことだ。その大変なことを撒き得にして、私たちはちゃっかり進むわけだけどね。
というわけで、私たちヤミーちゃんと愉快な仲間たちは海岸線を進んでいる。
冒険者の町スルークハウゼンの目の前に広がる天然自然の大迷宮、陸路での突入経路は幾つもあるけど、海から挑む人はほとんどいない。その理由は軍艦をもものともしない海の覇者たちなんだけど、覇者たちはあくまで海を縄張りとしている。陸の縄張りはあくまで迷宮の側。
今回のような大規模行軍の時には、縄張りと縄張りの隙間となる海岸線は自然と手薄になるらしいのだ。
といっても実際にそう上手くいくとは限らないから、はっきり言って博打に等しい。
「狼のお嬢ちゃん、ギャンブルは好きかい?」
「ううん、お金が欲しかったら奪った方が早いもん」
戦闘を歩く妙に薄汚れたおじさんの問いかけに、狼毛皮の狂戦士ウルフヘズナルの美少女こと私、ヤミーちゃんは大真面目に答える。
私の生まれ育った北の最果ての限界集落、ノルドヘイムにはお金を使う習慣がない。だから賭け事でお金を増やそうなんて発想自体、私にはないわけだけど、この薄汚れたおじさんは賭け事が好きみたい。
「でもね、狼のお嬢ちゃん。ほとんどの趣味はお金を使ったら使った分、お金が無くなっちゃうだろ。でもね、不思議なことにギャンブルは、使ったお金よりも帰る時に増えてるかもしれないんだよね。銅貨1枚握りしめて出かけて、金貨を袋いっぱいにして帰ることもあるんだよ。そういう趣味は、ギャンブルだけなんだよね」
「そんなことないよ。殴るとか蹴るとかでもお金は増えるよ」
「お嬢ちゃん、それは趣味じゃなくて恐喝っていうんだよ」
おじさんと顔を見合わせて笑い合う。
多分きっとお互いに、こいつなに言ってるんだろう、って思ってるんだろうけど、それを口にしないのが大人同士の人付き合いというものなのだ。
おじさんの名前はフィッシャー・ヘリング、40歳。聞けばギャンブルでの借金を重ね過ぎて、別大陸から一獲千金を求めてやってきた。
一獲千金はもちろんギャンブル。世の中には色んな返済方法があって、例えば内臓を売るとか、ネズミにしか打ったことのない薬の実験台になるとか、悪趣味な金持ちの前で檻の中でライオンと戦わされるとか。
世の中には悪趣味な金持ちがいるもので、借金おじさんは膨れ上がった借金を全て肩代わりしてもらう代わりに、自分の命を賭けることを選んだ。
おじさんが挑んだ賭けは地衰といって、本来は航海の安全のために捧げられる生贄みたいなやつ。普段からお風呂にも入らないで薄汚い格好をして、お肉も食べないし、女の人とのいやらしいこともしない。自分の身を汚してしまうことで周りの不幸も一身に引き受けて、航海に挑む船に降りかかる厄災を肩代わりにする実に危険で運任せな賭け。
「ぼくはね、幸運をいつでも引き出せる状態に持って行ってるんだよ」
おじさんが言うには、運というのは体内に蓄えられているわけではなく空気中に漂っているそうて、天性の強運の持ち主はここぞという時に空気中の幸運を掴めてしまう。凡人は闇雲に掴んだものが幸運なのか不運なのか判別できない。おじさんも決して運がいい方ではない、運がいい人はそもそも借金を重ねない。
しかし実は誰でも幸運を掴み取る方法があって、そのためにはまず手当たり次第に不運を引き寄せる。すると空気中の不運の総量が少なくなって、幸運を掴む確率が飛躍的に跳ね上がる。
持衰は集めた不運の量が並外れているから、目の前には幸運しか漂っていない。
だから上手く帰ってこれたらお疲れさまってことで借金は帳消し、失敗したらその場で海に投げ込まれてさようなら、なんて悪趣味な金持ちだけが笑う命がけの賭けに挑めるのだ。
なに言ってんだ、こいつ?
「おじさんねえ、お金はいっぱい賭けたことあるけど賭け過ぎちゃって、もうお金だといくら賭けても脳がひりつかないんだよね。その点、命を賭けるのはいいよねー。脳がビリビリにひりつくんだよ」
もしかしたら、単に頭がおかしくなってるだけかもしれない。
「そもそも借金って返さないといけないの?」
「お嬢ちゃん、なに言ってるの?」
これを言うとみんな不思議な顔をするけど、お金を貸した人をぶちのめしたらお金を返さなくてよくなるのだ。それを咎める人がいたら、そいつもぶちのめしちゃえばいいし、それを何回か繰り返してこいつはどうにも出来ないって理解させると、踏み倒したこともなんとなく不問になるのだ。
極端な話、人間が作った法律や決まりなんて、罰する人たちよりも強い相手には通用しない。その力は単純に腕力とか技量とか、逃げ足の速さとか、あと人数とか権力とか、色々な力があるけど、とにかく強ければ無理やわがままを押し通せる。はっきり言ってやりたい放題、やっぱり強さは一番大事なのだ。
もちろん私はそういうことしないけど。借りてまでお金を欲しいと思わないし、お金はめんどくさいことを肩代わりしてくれるためのものだから、めんどくさいお願いをしてまでお金を手に入れる意味がわからない。
どう考えても、ぶん殴った方が早いもん。
「うちのヤミーちゃんは暴君だからね」
これは詐欺師で書類偽造の専門家のクアック・サルバー。ちなみにダークエルフという長命種族で美人で胸が大きい。
「あんまり真に受けない方がいいですよ、育ちが蛮族なんで」
これは普段どぶさらいをしている素材集めと発見の名手ヤーブロッコ。ちなみに借金は無い。
「最近の若い子ってみんなこうなのかなあ? ぼくの職場にもお嬢ちゃんくらいの年の女の子がいるけど、カジノで負けが込んだからって大暴れして誤魔化したんだよ」
これは借金おじさん。驚いたことに借金おじさんは仕事をしているらしい、絶対仕事なんてしてないと思ったのに。
そしてさらに詳しく話を聞くと、借金おじさんは自警団という町の治安を守る仕事をしていて、その私くらいの年の女の子も自警団と契約していて、どんな呪いでも解ける魔法の杖を手に入れるために一緒に大陸に渡ってきたのだとか。
「で、おじさんが暇つぶしにカジノに入り浸ってる間に、先に迷宮に行っちゃったんだよ。もしそれらしい子に会ったら、お金になりそうなものがあったらお土産に持って帰ってきて、って伝えておいて」
どうやら心配はまったくしていないみたい。
ということは、その子が相当腕が立つか、このおじさんが相当な人でなしかのどっちかだ。
「ちなみに背はお嬢ちゃんくらいだけど、いつも狼を連れてるから結構目立つよ」
狼連れてるのか。私、狼を毛皮にしちゃってるけど仲良く出来るのかな。出来なくても別にいいんだけど。
「大変だー! 鮫が……鮫なのかなんだかわかんねえが、とにかく危ない生き物が襲い掛かってきやがった!」
最後尾を歩くパーティー、マイルズファミリーが叫んで危険を知らせる。
借金おじさんを先頭に私たちが一斉に後ろを振り返ると、上半分が魚をそのまま地面に立たせたような雑な姿をしていて、顔はそのまま普通に鮫、本来エラがある部分で顔を90度に曲げて、二股に別れた尾びれで人間のように立っている、冗談みたいな生き物が何百もの群れを成している。
おまけにぬるっと飛び出た鱗に覆われた腕が生えていて、先端の大小の2本指で剣や槍のようなものを抱えていて、鮫というよりは半魚人、もっというと半鮫人。
ちなみに鳴き声はフカッフカッで、声は低くて野太い。
以前にも上半分が人間で下半分が魚の生き物と遭遇したけど、それよりももっと雑で大雑把な形をしてる奇妙な鮫だ。
でも強さはしっかり鮫で、早速何人かの冒険者が齧られたり、そのまま岩場の下へと突き落とされたりしている。
もちろんこちらも手練手管の冒険者たち、ただ黙ってやられるような真似はしない。
最後尾を歩いていたマイルズファミリーを巻き添えにしながら、銃弾や弓矢や爆発を伴う魔法を雨霰のように撃ち込んで、鮫たちを片っ端から吹き飛ばしていく。
マイルズファミリーは裏社会の住人たちで、冒険者とは名ばかりの犯罪組織。基本的な活動は詐欺に恐喝に麻薬の密売、あとは女衒と売春管理と人身売買。
そういう商売に手を染める者は基本的に他人から絶対に好かれない。認識としては人面獣心どころか、たまたま人間の顔をしただけのゲロくそションベンのゴミカス野郎。
だからなのか、みんな一切容赦なく攻撃を続けていて、銃弾が背中を貫通したり、鮫と一緒に吹き飛ばされたりしてもお構いなし。
手加減をすると鮫の駆逐が遅れるので仕方ないんだけど、人間たちってなんだかなあって思っちゃう。
「よし、ヤミーちゃん、俺たちはマイルズファミリーを切り離して前進するぞ」
モグリールが馬車の中に仕込んでいた箱から、一定間隔に爆薬を括りつけた鎖を取り出して、近づいてくる鮫たちの前に放り投げて、爆発を利用して隊列をふたつに分ける。もちろん後衛のマイルズファミリーと中衛より前のその他全員。
一気に駆け出す私たちを鮫は追いかけず、奇襲と負傷と流れ弾で半壊寸前のマイルズファミリーに襲い掛かる。
モグリールの奴、最初からあいつらを囮にするために後ろに置いて、徹底的に攻撃させたんだ。やっぱり信用ならない嫌な奴だ。
まあ、マイルズファミリーも熟練で腕利きの冒険者。きっとどうにか逃げ延びて、スルークハウゼンに帰還するか冒険者ギルドの大規模行軍に合流できると思う。
もし今度帰った時に生きていたら、お酒の1杯でも奢ってあげよう。誰かしらのお金で。
「おい、モグリール、警備は手薄のはずじゃなかったのか?」
「挟み撃ちにされてない時点で十分手薄だ。鮫は予想外だったけどな」
しばらく走り続けて鮫たちが追ってこないのを確認しながら、モグリールが他の冒険者に言い返す。
その様子を不思議そうな顔で眺めていると、無精髭だらけの口元をにやりと吊り上げる。
「不確定な計算と運任せで進むはずがないだろ? 亜人種、この辺りだとゴブリンとトロールの縄張りだが、今日と前後3日間は見張りがいない」
モグリールが人差し指と中指の間に銀貨を挟んで、顔の前でくるくると半回転を繰り返す。
「内通者ってやつだ。亜人種もとどのつまり人間だ、おまけに欲深さは人間以上、金でも武器でも奴隷でも、なに使っても奴らは転んでくれる。要は買収だな」
「ちょっと待てよ! それじゃ、イカサマじゃねえか!」
借金おじさんがぷるぷると身を震わせる。おじさんは命がけのギャンブルをしたいわけだから、水を差されて怒りに震えるのも不思議じゃない。
「俺はなあ、イカサマをするやつがなあ……大好きだぜえ!」
そう言って借金おじさんは笑顔で大きく口を開き、黄ばんだ歯を光らせる。
「ギャンブルはこうでなくっちゃ! 相手を出し抜くずる賢さもギャンブルの醍醐味だからね!」
借金おじさんとしてはイカサマは全然ありみたい。頭がおかしくなりすぎてて、ちっとも理解できないけど、楽しそうだからいいんじゃないかな。
意気揚々と歩く借金おじさんを先頭に、私たちは引き続き海岸線を進み続ける。
このまま海岸線を進み続けて長大な砂浜まで辿り着くと、落涙の大地と呼ばれる渇いた大地の第2迷宮と、大喰らいの砂漠と呼ばれる古代の城塞都市を埋め尽くした砂地獄の第3迷宮との境界辺り。長くて時間を奪われる厄介な密林と、荒野の下に拡がる迷路のような地下道を無視出来るのだ。
もちろん奥に進むほど踏破率が下がるから、未知の危険や常識の通じなさは増える。
気を引き締め直して岩を踏む足に力を入れ直したその時、遠くの方からシャンシャンと甲高く鳴る奇妙な音が流れてきた。
「ねえ、なんか音がするんだけど」
「そうかい? 私には聞こえないけど」
他のみんなには、まだ音が聞こえてない。私の故郷ノルドヘイムは雪に閉ざされた豪雪地帯、雪の上を静かに歩く狼や熊の足音に気づかずに眠ってたら、そのまま死に繋がるような極限の限界集落。だからノルドヘイムの民はみんな耳がよく、ついでに目もかなり利く。
「ヤミーちゃん、音の方向は分かるかい? モグリール、ヤーブロッコ、君たちは音とは反対方向に進路を修正してくれ」
クアック・サルバーが私の背中に近づきながら、自分の動きとは反対に他の冒険者たちを遠ざける。こんな場所で人工的な音が聞こえたことで、警戒心を更に1段階強める。
周囲見渡せる視覚の範囲から、障害物の向こうの聴覚の範囲まで警戒網を拡げたのだ。
耳を澄ませて音の方向を探り、そちらに向けて目を凝らすと、岩場を叩く白波の向こうで、円錐のような形をして赤や黄色のひらひらを無数に垂らした頭部に、魚の絵が描かれたひらひらした服を纏った人影が、真っ白い三角形のひらひらした紙に血を垂らしたような円を描いたものを手にして、のらりくらりと踊っている。
踊りながら呪文のような言葉を発していて、耳をその声だけに集中させて、どうにかこうにか聞き取ってみる。
「ソリャ、トントロトー、トントロト! ヤァ、トントロトントロ、トントロトントロ! エイヤー、ソリャサノ、ヨイ!」
呪文が一区切りつくと、海の中からざばぁーんと大きな音と飛沫を立てて、頭がハンマーのような形状で口をばっくりと耳元まで開いた女の姿をした怪物が現れる。怪物の後ろには先程の半鮫人たちが何匹も。
「召喚士だ! みんな気をつけて!」
私は背中に背負った熊手を取り出して、怪物たちの襲撃に備える。さっきの半鮫人たちは正直、まったく苦戦する相手ではない。でもハンマーヘッドとでも名付けて良さそうな怪物、その雰囲気は皮膚がざわつくような異様と異常さがある。
迎撃しやすいように一際大きい岩の上に上がって陣取り、波の上を文字通り両足を激しく上下させながら走ってくるハンマーヘッドを睨みつけて、一挙手一投足に注視する。
動きはかなり素早い。海の上を走ってるあたり、人間と同じ生き物とは考えてはいけないんだろうけど、それでも人間とよく似た姿で手足があって、筋肉と骨で出来ていて、要所要所に関節もある。
だから跳ぶとか殴るとかの前に現われる予備動作は人間に近い。
ハンマーヘッドの膝が曲がった瞬間に、熊手を振りかぶって背中を捻じる。あとは砲弾のように飛んでくる怪物の動きに合わせて、腕を振り抜いて熊手の軌道を怪物の頭にぶつける。
その瞬間、これまで数々の魔獣を切り捨ててきた熊手の爪が悲鳴みたいな音を立てて折れた。折れたというよりは砕けた、といった具合で、粉々になった破片が硝子のように舞って、ちょっとだけきれいだなーとか思った。
当然それほどの破壊の代償は決して小さくない。
ハンマーヘッドは頭の左半分の鎚を潰しながら、もう半分の鎚を岩に打ち下ろして、盛大に血を吐き出しながら息絶えた。
でも怪物には怪物の意地がある。息絶えながらも奪ったのは私の武器だけじゃない、私の立っている巨大な岩まで道連れに砕いて、おまけに岩場にも盛大な亀裂を刻みつけたのだ。
敵ながらあっぱれ、と言ってあげたいところだけど、私は次々に砕けて崩れる足場にもがきながら、迫りくる巨大な波の向こうで姿をくらます召喚士の背中を睨みつけたのだった。
ちなみに真っ赤な魚の絵が書いてあったので、晩ごはんは魚に決定。あとで釣っておかなきゃ。
~ ~ ~ ~ ~ ~
波にさらわれた先にあったのは、鉄を叩く音と火を噴く塔みたいなでっかい炉と真っ赤に熱された金属の町。
「ようこそ、お客人。ドワーフの隠れ里へ」
「どわーふ? それってどんな食べ物?」
塩水と砂でべちゃべちゃになった私の前に現われた男は、私の問いかけを受け止めることなく一足飛びに後ずさって、ぞろぞろと雁首並べながら警戒心を強めたのだった。
(続く)
<今回のゲスト冒険者>
フィッシャー・ヘリング
性別:男 年齢:40歳 職業:持衰(じさい)
【クラス解説】
▷安全な航海のために命を懸ける人柱。無事に帰れれば最大級の報酬を得られるが……。
【クラススキル】
☆穢れの願掛け
➡衣服を汚し肉を断って自身の不幸具合を増すことで幸運を呼び寄せる
【主要スキル】
・祈祷
➡安全な旅への祈りを捧げる
・天候好転
➡祈祷の後に天候を好転させる、稀に大失敗する
・身投げ
➡船から身を投げることで形勢を一気に好転させる
【装備】
・ボロ布(体装備)
⇨くっそ汚いボロ布同然の服、防御力には一切期待できない
ー ー ー ー ー ー
というわけでモグリール第13話です。
モグリールと合流したけど、離ればなれになっちゃった回です。
なんかヤミーちゃん、単独行動させた方が書きやすいんですよね。
フィッシャー・ヘリングは前作「彼女は狼の腹を撫でる」の登場人物で、どれくらいダメなおじさんかは2話辺りを参照してください。他の話にも出てきますけど、基本いつもダメダメです。
あとウルとシャロの登場フラグも立てておきました。出すかどうかは未定ですけど、ヤミーちゃんはある意味でウルをモデルにしてるから、そのうち出すと思います。
ちなみに色々と対照的にキャラづくりしています。
ウルが家族関係で不自由だったので、ヤミーちゃんが自由奔放で家族が揃ってるとか。
ウルが(ばあさんやレイルよりは)体格に恵まれない技巧派だったので、ヤミーちゃんは低技術高身体能力力押しとか。
ウルが狼好きでおまけにペアだけど、ヤミーちゃんは狼は討伐対象で戦利品の毛皮を纏ってるとか。
ヤミーちゃんの武器が定期的に壊れるのも、ウルが次々と武器を回収してきた裏返し的な感じだったり。
あと召喚士は某四国の端っこの県の東の端っこの奇祭を参考にしています。
あー、そりゃそりゃ。
まあ、そんな裏話をしつつ、次回へ続くです。
暑いですー。