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Aoooの1stアルバムで音楽とは何かを考え直した

2024年10月16日、Aooo(読みかたはアウー)というバンドがセルフタイトル"Aooo"を冠したファーストアルバムを世に送り出した。

彼らのことを知ったのはベースのやまもとひかるさんから。ももクロ界隈を通じて秘かに推していたやまもとひかるさんが遂にバンドを結成すると聞いたのが昨年の夏。
ソロライブやフェス出演などで徐々に露出の機会は増えていたもののなかなか直接接するタイミングがなく、1年が過ぎて遂に待望のアルバムリリースに至る。

Aoooのメンバーは各々がボカロPや大物アーティストのサポートメンバーとして音楽シーンの第一線で活躍する実力者たちで、そんな強者たちが集まったバンドが紡ぎ出す楽曲は凡庸ではない。
アルバムに先立って先行リリースされた楽曲たちが既に物凄くて、アルバムに仕上がったらどうなるのかと期待値を上げまくってリリースを待っていた。

10月15日、フラゲ日に新宿駅HMVで確保。

まずまずの整番

いち早くフラゲしたのは、アルバム発売記念フリーライブの整理券がついてきたから。
フリーライブの場所は、歌舞伎町のシネシティ広場。
東急歌舞伎町タワーの麓はシネシティ広場を望むステージ状の造形になっていて、映画のプレミアイベントなどに度々利用されている。そのステージを1stアルバムお披露目のフリーライブに使おうというのだ。ちょっとプロモーションの規模が違いすぎてびっくりする。

じつはAoooが所属するのはソニー・ミュージックエンタテインメント内に新しく立ち上げられたレーベルで、YOASOBIがレーベルメイトという。なるほど資金的なバックアップがすごいのはそういうことにつながるのだろう。

肝心の1stアルバム『Aooo』に戻ると、これがめちゃくちゃ骨太でかっこよくて、そして楽しい。メンバー4人がとにかく楽しんで作り上げた曲を楽しく演奏しているという空気感が溢れ出ている。

1曲目の『FLASH FORWARD』で、
初期衝動に溺れよう
という歌詞が象徴的だった。アルバムが初期衝動で満ちている。
"flash forward"というワードを1曲目に使っているところにも強いメッセージを感じた。メンバーそれぞれが様々なバックグラウンドを持っているが、各々の過去を振り返るのではなくこのバンドで未来を語っていこう(flash forward)というメッセージが強く響いた。

音楽性などの専門的で深いところには全く疎いので触れることが出来ないが、そういうことを全部抜きにして、ひたすら楽しいを前面に出したアルバムなのだろう。
1980年代の音楽漫画の金字塔(と勝手に崇めている)、佐藤宏之氏の「気分はグルービー」で、主人公のバンドがコンクールに落ちた後の残念会でリーダーが言ったセリフを思い出した。(記憶だけに頼っており正確なディティールは異なってるかもしれないので悪しからず)

音楽で順位をつけることが所詮ナンセンスなのであって、音楽は字の通り、音を楽しめばいいので。

簡単な言葉だけど、本質的でとても大事なことがここにあった。
音楽は、音を楽しむもの。
その言葉を完璧に実践していることが随所に滲み出ている。
そしてそのことは、ライブ当日にはっきりと目のあたりにすることになる。

10月18日
ライブ当日は微妙な天気予報がなかなか良くならず、メンバーも「晴れてくれ!!!!」とSNSで願掛けしていた。
新宿のど真ん中とはいえ、完全野外で逃げ場がない場所。
雨天決行、荒天中止という屋外イベントの定型文が貼られているが、もちろん降らないに越したことはない。

朝から仕込みが始まっていた

メンバーとファンの願いは半分ぐらい通じたようで、なんとか本降りは回避したものの待機中からパラパラと降ってくる状態。
ある意味、野外ライブの演出的にはちょうどいい按配の降りかただったのかもしれない。

それにしてもこのロケーションだけでアガる
ビジョンはサラダボウルのMVを繰り返し流していた
公道は占有できないので最前でもちょっと離れてしまう

小雨がぱらつく中、定刻19時を少し過ぎてメンバー登場。ちょっと緩めの円陣を組んで持ち場につく。
FLASH FORWARDはアルバムの1曲目にしてライブの幕開けもイメージしていたのだろう、ツミキさんのドラムが会場の空気を一気に変える。
続いてアルバムの曲順をトレースしてサラダボウル。このアルバムは繋ぎも綿密に計算されており、ライブで最高に気持ちよく流れていく。
アルバムの3曲目はイエロートイだが、疾走感で畳み掛けるなら差し替えるのもアリかと思ったらきました、青い煙。ひかるちゃん作曲で、ベースがとにかくかっこよく走ってる。

ここでMC、次の曲はクラップという前振りからイエロートイ。クラップがほんとに楽しい。
途中みんなで歌えるパートがあるので知ってる人は一緒に歌ってください、と煽られたらネオワビシイ一択。石野さんが間奏でめちゃくちゃ弾けてたのがすごかった。
Casablancaからネロリの緩急も良かった。水中少女ぐらいから再び雨が降りはじめて演出効果になっていた。
リピートはいち早く公式のライブ動画が公開されているのでまずはこちらを。映像のクオリティがこれもまためちゃくちゃ高くてびっくりする。

ここまでで随分たくさんの曲数を演っているはずだが、と我にかえった頃、この日のラストを飾るAoooの初めての曲、アパシー

結局予定の30分は大幅に延長して、アルバム収録12曲のうち10曲を披露してくれた。なんという大盤振る舞い。

ナタリーのライブレポートはこちらから。

改めてセットリスト
M-1. FLASH FORWARD
M-2. サラダボウル
M-3. 青い煙
M-4. イエロートイ
M-5. ネオワビシイ
M-6. Casablanca
M-7. ネロリ
M-8. 水中少女
M-9. リピート
M-10. アパシー

とにかく楽しい!で終始するライブ、バンドでは珍しいのではないだろうか。(打首獄門同好会やヤバイTシャツ屋さんや四星球の系譜は除く)
またライブを観たいと思ったけど、既に次回の東京(代官山UNIT)はsold out。まさかあんな小さい箱で観れるとは。。
ということでアルバム封入の先行券を使って追加公演(東京キネマ倶楽部)は当たってほしい。

音楽は音を楽しむもの、という話の補足。
ライブ後の一般的な感想として「早くどんどん売れてほしい」「すぐに大きい箱に行ってしまいそうだから今のうちに」という意見がとても多い。
確かにその通りだろう。何かのきっかけで大ブレイクしていくだけのポテンシャルは間違いなく持っている。
でも、大きくブレイクしていくことだけが彼らのFLASH FORWARDなのかとも考えてしまう。
何より今の音楽性やパフォーマンスが楽しくて、観ていて楽しそうで仕方ないので、この空気感をずっと観ていけるだけでも良いのではないだろうか、と甘い気持ちに浸ってしまう。
メジャーデビューした以上売れてなんぼ、ということもよくわかってるけど、その立ち位置だけに拘らず息の長いバンドでいてくれれば…

兎にも角にも、これからのAoooからは目が離せない。

追記
今回は有難いことに全曲動画/静止画とも撮影可。ショーケースとして捉えるとそれも十分勝算を見込んでのことだろうけど、大盤振る舞いには恐れ入った。
たくさん撮らせてもらったので拡散しなければ。

ネオワビシイが入ってないのはめちゃくちゃ楽しくてスマホ完全に仕舞ってたから。それはやむを得ない。

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