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ヨウジ試着旅①始まり

ヨウジヤマモトの服が気になったのはいつ頃だったのか。それは忘れてしまったが、最初に見た時は、全体的に黒くて、形がよく分からなくて、何と何を重ねているのか、トップスなのかボトムスなのか、長袖なのか半袖なのか、パンツなのかスカートなのか、着こなしている方々がおしゃれなのかなんなのか分からなくて、世界が遠すぎて、とにかく『よく分からない』という印象を持った。

はっきりとした興味を持ち、具体的に着てみたいと思ったのは、あきやさんの本に出てきたからである。

あれ?思ったよりシンプルな形の服もあるんだな?とか、ヨウジさんの理念がかっこいいなとか、あきやさんにそこまで言わせるヨウジヤマモトの服って何者?と思った(世界のヨウジヤマモト先生でしたすみませんでした)。

理念が今の私の状況や気分にぴったりで、今の私がこのブランドの服を着ないでどうするんだ!という気持ちにすらなった。

そこで急遽、東京へヨウジヤマモトの試着旅に出ることにした。

行く予定の店は転々した。オンラインショップでチェックをしていたら、気になる洋服が変わり、それに伴って店舗在庫が変わるので、効率よく試着ができる場所を探したのだ。

東京、上野、銀座…そして表参道と青山。

表参道〜青山は苦手オブ苦手である。なぜなら『おしゃれすぎて世界が違う!』と思っていたから。

数年前に友人が「靴の試着したいんだ〜!」とのことで、一度だけ一緒に行ったことがある。目的地はすごく高い靴屋で、床がふかふかしていて、キラッキラの靴が並んでいて、試着だけなのに、絶対買う気が無いだろう、付き添いの着物の私にまで瓶入りの飲み物(しかも水か炭酸水か選べた)をストローをさして出してくれて、当然飲みきれない量なので、残ったら持って帰っていいですよ〜と蓋を付けて持たせてくれて、いやそれだけで幾らかかっているんだ?高い靴なんてほとんど広告費なのでは?と捻くれた感想を持った記憶がある。

店員さんは優しく丁寧で、お着物素敵ですねとか、その時付けていた簪(ヨーロッパのヴィンテージのブローチを簪パーツに付けたもの)を褒めてくれたりして、これは夢…?みたいな世界だった。

表参道ヒルズにも行ったけれど、人は沢山居るし、よく分からないが何らかの熱気があり、とにかく知らない世界なので、もう二度と来ないだろうと思っていた。

そんな場所に自ら行くのか。

行く前から疲弊した。
行かなくても別に命にかかわる訳でもなし、行くのやめよう面倒だしと考えつつ、時間があればヨウジヤマモトのサイトを観た。

理念等は何も知らない、まっさらな状態で行くのもいいかもよ、読むの面倒だしと思いつつ、仕事帰りの疲れた身体を図書館に滑り込ませて、ヨウジさんの本を結構なスピードで読んだ。

読んでしまったらとうとう「行かなくては」「どんな洋服なのかこの目で見なくては」「着てみなければ」といった焦燥感や義務感が生まれてきた。洋服に対してこのような感情が生まれたのは初めてかもしれない。


久しぶりの東京。去年は「コンセプト活動」と称して郷土史をガツガツ調べていたので、東京での試着旅は約1年ぶりである。
面倒だな〜行きたくないな〜と楽しみ〜の両方の気持ちを抱えつつ、東京駅に着いた。
東京駅〜丸の内あたりは好きな空間なので、何度か来ている。まだ若干緊張していたので、江戸時代の大名屋敷が並んでいた頃や、車内で読んだ虚子の『丸の内』を思い出して、その時代に想いを馳せたりしながら歩いた。

東京駅には去年宿泊したことがあって、その時も今日着ている洋服だった。楽しかったね、ありがとうねと洋服に心の中で語りかけたりして、その時の服が今も居てくれることを心強いと思った。
けれど、去年の夏に髪型を変えたのをきっかけに、だんだんとこれらの洋服がしっくり来なくなり、卒業が近いのかもしれない、今回の試着旅は卒業旅行のようなものだろうか、とも考えた。

昼前だったので、最近ハマっているキャロットケーキが食べられる所で軽食を取ろうと入った所が、コムデギャルソンのカフェだった。そういえば去年、銀座のドーバーストリートマーケットで入ったのと同じ店名だったなと入ってから気がついた。
去年ドーバーを見た時は『何がなんだか分からん』という感想だったけれど、その日の私はジュンヤワタナベの靴とバッグを身に付けていた。
店内を見渡すと、ガールズさんがお迎えしたと言っていたアイテムがあったり、ジュンヤさんの服も勿論あって、そこに並べられているモノと同じモノを身に付けている事になんだか擽ったいような気持ちになった。思わずバッグを手に持っていたアウターで隠した。バッグの靴は素敵なのに、洋服と今日の私が相応しくないような気がしてしまったから。本当にバッグは自己紹介だった。

キャロットケーキはとても美味しかった。

このあと表参道〜青山に行くけれど、ひとまずここまで🥕