原因不明の手のふるえ(本態性振戦)を治療した話。切らない治療法、集束超音波治療(FUS)を受けて
本態性振戦を知らない人も多いと思いますが、世界で 4,100 万人の患者さんが罹患する最も一般的な運動障害です。
同じように困っている方の参考になればと思い、簡単にまとめてみました。
本態性振戦とは
ふるえは医学的には振戦と呼ばれ、身体の一部が自分の意志とは関係なく規則的に動いてしまう状態を指します。本態性とは「原因がはっきりとしない」という意味の医学用語です。聞き慣れない病名かもしれませんが、「本態性振戦」は40歳以上の4%、65歳以上の5〜14%の人に認められるとの報告もあります。
意識とは無関係に手のふるえが起こるので、飲食や会話、筆記などいろいろな場面で困る事が多い症状です。原因が不明なので、病気ではなくはっきりとした治療法が確立されてないのが現状です。
発症する年齢
一般的には、本態性振戦は 40 歳以上で発症する可能性が高く、40 歳から 50 歳の間に初期症状がみられます。
家族の本態性振戦
家族が小さい頃から本態性振戦だったのですが、中高年になってから症状が悪化し、茶碗やスプーンなどを持ったときにかなり震えるようになってしまいました。
小さいときは、字が震える程度でまだ本態性振戦という言葉も知らなかったので、本人はかなり苦労してきたと思います。
本態性振戦の治療方法は?
20201年8月現在だと、β遮断薬か手術療法があります。
手術になると、今までは高周波凝固術(RF)と脳深部刺激療法(DBS)の2種類があってどちらも頭蓋骨に小さな穴を開けるものでした。
手術なしの超音波治療
しかし、最近になってMRガイド下集束超音波治療(FUS)という切らない治療が開発されました。
ヘルメットに患者さんの頭を固定して、ふるえの原因となる神経回路の視床腹側中間核に超音波を集束させて熱凝固する方法です。
簡単にいうと、超音波で震えの原因になっている神経を焼くというものです。
ちょうど、数年前からFUSの治療が保険適用になって格安で受けられるようになりました。保険がないと300万ほどしますが、保険適用で20万前後で受けられます。(高額医療費として払い戻される。事前申請すれば全額を支払わない方法もあります。)
2019年6月に本態性振戦に対して保険収載
2020年9月にパーキンソン病の一部症状に対しFUS治療が保険適用
ちょうど、家族が受けにいったときは「すでに20人ぐらいがFUSを受けて18人が成功。残り2人は症状が変わらずか、戻った」とお医者さんから聞きました。歯医者さんや左官屋さんなどの職業の人も受けたと言っていて、職業柄、震えていると仕事ができないという場合は生活に関わるので本当に大変だと思います。
FUS(エフユーエス)を受けられるかの検査
最初の診察は、お医者さんが「かっけのテストで使う道具」で叩いたり、反応を見ました。その後、適応検査をして適応になれば手術日を決めます。
適応外になってしまった場合は、別の治療法を案内されるとのこと。
FUS治療自体は、切ったりの手術はしませんが頭に超音波を当てるので、髪の毛は剃って坊主にします。
治療は両手ではなく右手か左手のどちらか一つのみ
あと、両手が震えていても、治療は右手か左手どちらかのみしかできません。家族の場合は右手のみ治療しました。
FUSの治療中
治療中は、つきそいで手術室の前で待ってました。
手術自体は数時間で終了
治療後は後遺症もなくすぐに会話もできました。先生が道具をもって検査しましたが異常はありません。
本人曰く「手術といっても、頭をヘルメットで固定するだけで、治療中に会話もできるので怖くはない」とのこと。
字を書くテストをしましたが、見違えるような回復ぶりで本態性振戦のふるえも止まっていました。
(治療部位の周辺には一時的なむくみが生じて、ふらつき、脱力感、知覚障害が出現することもあるけど、1~3ヵ月の間に回復するそうです)
あっという間に治療できて、医療の進歩を実感しました。
入院から退院が早い
入院・退院は簡単で、一週間程度で退院できました。経過観察で数ヶ月おきに病院に行く必要はあります。
MRガイド下集束超音波治療(FUS)のある場所
このFUSの治療ができるところは非常に少ないです。
保険適用になってから、FUSの希望者がかなり増えているとのことで、今は半年から1年待ちになっていると先生がいっていました。
MRガイド下集束超音波治療(FUS)に関する記事
本態性振戦の先進医療
本態性振戦を補助する道具
いくつかサポートする道具があったので参考にのせておきます。
字を楽にかける補助器具
スプーンに取り付けられるアタッチメント