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母として守っていたつもりが、本当はむすめに守られていたという話
元夫と別れて4年ほど経った頃、交際を考えて欲しいという人が現れた。
当時の私は、仕事か家事か運転という三択しかない生活で、下心があったとしても優しい言葉に心地よく癒やされた。
そこで、何度か子どもたちを連れて一緒に会ってみた。
でも公園で鬼ごっこをしている彼のむすめへの関わり方を見ていてこれは無理だなと思った。
それは彼のむすめへに対する性的な視線が不安だということではなかったし、そういう心配が必要には感じなかった。
そのときの遊びは鬼ごっこで、彼は当時6年生のむすめには加減せず、2年生のむすこの方にことさら優しかった。
むすめは遠慮してもらうことを望んでいて、逆にむすこは遠慮なく追ってほしかったと思う。
私の目にはむすめの不満が見えていた。
彼には初めて会うむすめの性格なんてわかるわけないし、女の子の扱いがわからなかったのもあるかもしれない。
仕方がない。
今後絶対むすめとうまくいかない、と感じたのでそれ以降子どもたちを連れても一人でも会わなくなった。
きちんと一線を引いて日常会話を交わすだけの関係に戻った。
数年経って、むすめが高校生の頃、はっきりその人との関係を問われたことがあった。
そういう関係じゃないよ、と私が言ったときむすめは拍子抜けしたような表情をしてた。
もしかしたら、彼女は初めて会わされた頃からずっと心配していたのかもしれない。
私が自分の父親以外の男性と結婚するかもしれないことを。
シングルマザーでフルタイム勤務、そして実家の母に預けたくなくて、両親の手を借りずにやろうと決めたときからもうほんとに大変だった。
すごく頑張ってるから本当にちょっとした優しい言葉に弱いんだよね。
シングルの女性がころっと騙されてしまうの、本当によくわかる。
無責任な言葉だってどこかでわかってても夢を見せてくれるひとは無条件で心地いいんだよ。
むすめに余計な心配かけたなって。
最初から甘い言葉に惑わされずにやめときゃ良かったのにって後悔する日もあった。
でも当時の私はその甘い言葉にも支えられてた。
もうそれは認める。
結局、私は今も一人でパートナーを作らず子どもたちと幸せに暮らしてる。
それで良かった、と心から思っているのは、彼の言葉に矛盾があったから。
まだLINEのやり取りがあった頃、バッテリーあがりで車が動かなくなってしまった。
「頼ってくれていい」という言葉を信じて、連絡したら、「今パチンコにいてすぐ向かえない」という返事が来た。
実際彼を待っていても40分位かかるので、保険付帯のロードサービスを呼んだ対応してもらったが、これ一つとっても「いつ頼っていいの?」だった。
他にも「?」というエピソードはあったので、直感を信じて良かった。
そうでなかったら、新しいやばい荷物を自分から背負いに行っていたようなものだった。
「ああ、むすめがなつこうとしなかったから、私はそれ以上関係を進めずに済んだんだ。」
そんなことを仕事中に考えていたら、私はもしかしたらむすめを守っているつもりでむすめに守られていたのかもしれないと思い至った。
そうだったのか、とわかったら涙が溢れてしまって、トイレでしばらく泣いた。
むすめ、心配させてごめんね。
守ってくれてありがとう。
生意気だけど大好きだよ。