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【レビュー】1節 鹿島×湘南

2025年シーズン開幕戦。
鹿島としては残念ながら結果が伴わず、厳しい船出に。


〇 両チームの布陣

鹿島は伝統的な4-4-2、湘南は前が特殊な並びの3バック。今年のJリーグのトレンドっぽい、3バックは。(いや鈴木が多すぎるな)


〇 両チームの攻撃時と守備時の配置

鹿島:守備、湘南:攻撃 の配置

鹿島は慣れた4-4-2。フルコートを一番バランスよく守れる、守備の定番の配置。
一方湘南は、3-5-2っぽい感じ、もしくは7か13が1列上げて3-4-3っぽい感じに。
そして、少し前進した頃には両ウィングも上がって3-1-6にまで。

少し前進するとこうなる。


鹿島:攻撃、湘南:守備 の配置

鹿島は、左右非対称の3-4-3気味に。上の図はだいぶ綺麗に並べた方で、実際はもっと非対称。
特徴としては荒木がだいぶ内側に絞ってトップ下のような動きも。逆サイドにまで顔を出すこともしばしば。ここで出来たスペースを小池が使う感じに。
小池も小池で、内側に絞ってきてボランチのエリアに知念-柴崎-小池と3ボランチのように並ぶことも。(3番の畑がスペースを運び放題
湘南は、5-1-3-1。キーは2列目の 7 , 19 , 13 この3人に思えた。素晴らしかった。後で話す。


〇 鹿島を苦しめた湘南の守備

ロングカウンターに走る人数に、シンプルに鋭い速攻に…この辺の印象が強くて、SNSでもそれらの意見をよく見たけど、個人的に湘南が素晴らしいと感じたのは守備設計。(まだ鬼木サッカーが浸透してへん鹿島の攻撃がイマイチやったとも) 

鹿島攻撃vs湘南守備

さっき紹介した通り湘南は守備時は5-1-3-1がベース、7・19・13番の動きが素晴らしかった。(灰色の四角で囲ったユニット。以降、「2列目」と表現。)
鹿島としては噛み合わせ的に15の両脇(水色の丸)のエリアが優位に立てる場所で、使いたかったところ。ただその狙いを消したのが湘南の2列目のユニットやった。

まず鹿島の最終ラインがボールを持った時は、湘南の10・7・19・13の1、2列目がプレスをかける。ボールを持つことにあんま慣れてへん鹿島ディフェンス陣はこの時点でしんどかった。
何とかこの湘南の2列目を越えたら、湘南側は15番しかおらん真ん中のエリア。鹿島としては優位に立てるエリア。ただ、ここでそれを許さへんだのがこの2列目のユニットの働き。
この2列目は、真ん中エリアに下がってくることで、押し上げてくる湘南の最終ラインと挟んで奪うって形を何度も実現。
小池からのパスをこの位置で荒木が後ろ向きで受けて、挟み込まれて取られるって形は何度もあった。鹿島の失点シーンも、この形で失ったところからやられた。
湘南の2列目の頑張りが、鹿島の前進を苦しめた。
それを可能にさせたのが、湘南の5枚の最終ライン。
ラインを高めに維持することで後ろから前までをコンパクト化。
2列目の下がる距離を短くさせることに繋がった。
そして、最後は後ろに5枚が構える盤石さ。

鹿島の攻略

鹿島としてはさっき話したように、15の両脇(水色の丸)エリアを使いたかった。
湘南の2列目と最終ラインの挟み込みが素晴らしかったのはそうやけど、知念・柴崎はまだその位置で受けて展開するなり運ぶなりする技術や勇気がまだ足りず。
一番現実的な打開策は、水色のエリアを広げてそこでプレーしやすい広さを確保すること。
例えば、前線の選手が裏を狙う動きを見せ続けて、湘南のラインを下げて前線と間延びさせるとかも一つの方法。
ただ、優磨もレオセアラも降りて足元で受けるのを好むタイプ。チーム全体でも、この試合であんま裏を狙う動きは多くなかった。
印象的なのでも8:33のレオセアラの裏抜けと、69:41に入ったばっかの濃野が駆け引きで裏を狙ったのぐらい。濃野のランニングは2,3秒裏へ走るそぶりをしただけで、湘南は2人がつられてラインを下げた。この動きがもう少しあると、真ん中のエリアでプレーしやすかったんかな。
ただ湘南の守備も、鹿島がまだ不慣れで拙い繋ぐサッカーをしたからハマりやすかったともいえる。
ゼロックス杯の広島みたいな、裏に抜けたとこに出口を作るチームに対して、この湘南の守備がどこまで通用するのかは興味深い。

〇 湘南の攻撃

湘南の攻撃面でも、鹿島は噛み合わせの悪さで苦しんだ印象が強かった。

鹿島の4-4-2に対し、湘南の攻撃は3-5-2がベース。
少し押し込むとこんな感じに。3-1-6(!?)

湘南は、攻撃時に少しでも時間をかけたらこの陣形が完成する。
鹿島は後ろ4枚に対して、湘南は5レーンに1人ずつ。真ん中のレーンには2人おって、鹿島としては誰に誰がつけばええねん状態。
鹿島は師岡を最終ラインに下げて対応することもあった。その影響で湘南は50番の位置から運んでくって回数は左と比べて多くはなかった。(その割にここから迎えるピンチは多かった)

なら、鹿島としてはそこまで行かせやんようにするべきなんやけど、水色の四角にあるように、まず組み立ての時点で鹿島は数的不利。37と5は前に持ち運びやすいし、パスも出しやすい状態。
特筆すべきは、両ウィング(3と50)。ここは4-4-2で守るときに嚙み合わせ的に浮く場所。
特に、3(黄色い丸)は、荒木が中に絞ることが多いし、小池もボランチの位置に入ることがあるしで、右サイドが空く瞬間もあるから余計に。
鹿島が攻撃⇒守備(ネガトラ)になったときに3番にボールが渡ったら、その空いた鹿島の右サイドのスペースをぐんぐん運んでいくこともしばしば。
小池⇒荒木のパスを3・13・15・5あたりで挟んでそのままそのサイドからカウンターって場面はいくつか。(失点シーン然り。)

湘南の崩し

湘南側で印象に残った崩しはいくつか。
(1) 16:23~
(2) 32:53~
(3) 41:48~
(4) 59:32~
そのなかでも一番印象に残った、32:53~の崩しについて。

↑ まず、3から10にボールが入る。水色のエリアに注目。
↑ 7番が中に走りこむ動き。それにつられる安西。水色のエリアの50がぽっかり空いてフリーに。
(とはいえ、安西がここで7番についていくのは守備の原則として間違ってへん)
↑ フリーになった50にボールが入る。当然、安西はそこに寄せに行く。
そうなると、今度は水色のエリア(ポケット)が空く。
↑ 空いたポケットに7が侵入して、パスを受ける。
結果、折り返したボールが関川に当たってコーナーになるも、いい攻撃。

どうしても、鹿島の最終ラインと湘南の前線で数に違いがあると、安西のようにどっちにつくかみたいな、守備で後手を踏むことがこのシーンだけやなくていくつかあった。
ただ鹿島も、センバの2枚と早川の頑張りで崩されても最後の最後は割らせず、頑張って耐えとった。
失点シーンは守備の軽さを嘆くより、あの密集でドリブルを選択して見事に逆を突いていった福田(19番)を褒めたいし、あんだけ決定機を作られれば1失点は仕方がないとも。


○ 雑感

ほとんど湘南の紹介みたいになっちゃった。
鹿島としては、この試合を勝つのみを目指すのであれば、出来ることはいくつかあったと思う。
例えば、キャンプで一番効果的やった樋口知念のダブルボランチにしてみたり。
あとは荒木と師岡も左右変えるだけで好転することもあったと思う。特に、タメを作れる師岡とスペースをみて臨機応変に動く小池を右で組み合わせるとか。
荒木に関しては、小池からの縦パスを後ろ向きで受けて、そこで潰されることが多かった。
鬼木さんが去年まで率いた川崎フロンターレなら、その位置では家長があの強さでキープしてくれるから成立するんやろうけど、荒木の良さも強みもそこやない。
あとは、ツートップの片方には裏抜けができる選手を入れるとかも。この時のメンツやと師岡かな(そうなると両サイドは鈴木と荒木になっちゃう?)
ただ、知念がインタビューで「鬼木さんは変えない」って言うように、この配置は継続して行くんやろうなとは思う。
鬼木さんは、この試合に勝つのも大事やけど、それよりも長期的な視点でチーム作りを進めるのを今は大事にしとるようにみえる。
真ん中で繋ぎのキーになる柴崎を長く使う、右に荒木の形を少しでも長く使う、こうすることでこのサッカーに慣れてもらう。みたいな。

あと、鈴木優磨がビハインドの状況で72分交代したのは近年では超珍しい。
動けんくなっても鈴木優磨は行けるまで引っ張るっていう近年の状況からしたら、スパッと変えるところ、優磨であっても忖度なしな決断が出来る鬼木さんをポジティブに捉える声が多かった。
たしかに、大事なことではあるけど、この試合に関してのみで言うと、正直師岡もレオも既に居らんくなった中で優磨まで下げてしまった結果、前線でキープすることが出来んくなったって印象もあった。まあそもそもこの試合は優磨が気持ちよく前で持てた出来たシーンが少なかった。

批判みたいになったけど、鹿島が近年変わろうとして変われやんだところに鬼木さんは挑戦しとって、目先の勝利のために途中で路線を変えて中途半端な順位終わってきたここ数年の鹿島から変わろうとしとるのを感じるのが好印象。
最初は我慢することが多いやろうけど、選手もサポーターも乗り越えたいところ。
去年上位やった神戸、広島、町田なんかは非保持ハイプレス高強度が基本。
こういったチームを崩すためのプレス回避・ポゼッションに取り組むチームも出てきとる。
開幕戦から結果を残した柏に、大阪ダービーで衝撃レベルの圧勝をしたセレッソに。
ポゼッション時代にタイトルを取り合いした川崎とマリノスを、近年は非保持ハイプレス高強度の神戸・町田・広島が覇権を争っとる状況のように、歴史は循環して、またそれを覆す保持側の時代がくるかもしれやん。
そこに挑む鬼木アントラーズを引き続き応援していきたい。

次はホームでヴェルディ戦。
2023年の10月以来ホームでは負けなし。
まだまだ積み上げの段階とはいえ、負けて学べばいいってチームではない。
良い試合を期待したい。


最後に
湘南戦は2回くらい見返した。
負け試合はハイライトすら避けてきた自分からしたら考えられん。
いい勉強になったし面白い発見も多かった。
何だかんだもう明日には次の試合。しかも次はミッドウィークもある連戦。
レビューは間に合うんか。


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