20210123 ラテンの宴(エン) レコード紹介

横浜元町の"Gallery + Sushi あまね"で毎月開催している音楽ラウンジ「ラテンの宴(エン)」
そこではDJの時間とは別に、テーマを決めて音楽紹介も実施しています。
今回は「ラテンだけではなく色々なレコードが流れているんだな」とわかって欲しく色々なジャンルの音楽を紹介します


SoniaRosa /「Samba Amour」1979 Japan

 "Fei Jao Queimou (Black Beans)"
プラジル・サンパウロ出身で1970年頃に日本に渡りボサノヴァの歌手としてデビュー。ルパン三世の音楽を手がけた大野雄二と製作したアルバムより。
この時期のルパンを体験した人なら「ああっ!この感じ知ってる」となる大野節全開のメロウでポップなブラジリアンサウンド。




Barney Kessel /「Guitarra」1970 USA


 "B.J's Samba"
ジャズギターの大御所バーニー・ケッセルがイタリアにて現地のジャズマンと残した一枚。
オリジナルは1969「Kessel's Kit」だが、翌年にアメリカで出された本盤ジャケットの方が何故かよりイタリアを感じさせる。(対角線をはさんだ白と黒のバランスを見てトリミングされた写真のバランスに)
サンバリズムの曲が多いことと軽く鳴るオルガンが冬、それもクリスマス前の「寒くてもウキウキして浮き足だつ感じ」にマッチすると思っており個人的な冬の定番曲。



Jose Antonio Mendez「Canta Solo Para Enamorados」195? Mexico


"LA GLORIA ERES TU"
「フィーリン」というジャンルの立役者、ホセ・アントニオ・メンデス。
キューバ出身だがメキシコで50年代に吹き込まれた彼の代表作。
(この頃は南米のショウビスの中心はメキシコシティーとアルゼンチンのブエノス・アイレスだったとか。読みかじりの記憶では)
バイオリンとオルガン、パーカッションをバックにし、優美かつモダンに歌いあげる。
一聴して彼と判る独特の声の持ち主だが、他の同種のスペイン語の歌手と比べるとアクが少ない(巻き舌とか)せいか、
2007年ごろに日本でCD化された時にはジャズリスナーやカフェ関係者からも多く話題に上っていた記憶がある。


Rei Harakami「evaporator EP」2006 Japan

"きえたこい"
日本のテクノの文脈から出てきた、間違いなく天才的感性を持った人。
製作当時からみてもかなり型遅れな機材を特殊な使い方(サンプリング音を逆再生させる)にて紡ぎだされる音は唯一無二の世界感を作っている。おそらく世界的に見ても比肩しうるアーティストはいないのでは?と思う
生の楽器、人の声が入っていない、電子音だけのホンの数分の曲で上質な短編映画鑑賞以上の叙情性を叩きつけられる衝撃たら!
たとえ電子楽器でなく別の道具を使っても、たとえば写真やビデオカメラや筆と絵の具を使っても、同じように叙情性の土砂降りを浴びせるような表現をしてくるのではないか?なんて事を想像をしてしまう。
病気による急死は本当になんというか…言葉にならない…
ラテンの宴ではこのような音源もラウンジDJで取り込んでいます。反復の快楽、音自体の質感の面白さという観点からみれば新しい音/古い音、生楽器/電子音で区別しなくても良いじゃん!という考えからです



Adriano Viterbini「Film O Sound」2015 Italy

 "TUBI INNOCENTI"
イタリアのギタリスト、ロック寄りでかなり変態的なギター改造オタクのようです。
ワールドミュージック、ブログレッシブ・ロック、ジャズ、ブルース… と分かり易い要素を並べていくと闇鍋感は分かってもらえるかと思いますが、アルバムを通して聞くと闇鍋感に加え「とにかく俺は普通のギターの音は出さない!」という確固たる奇人の決意のような説得力を感じます。
ちなみに現時点(2021/1月)では日本語情報は殆ど無いようです。
が、本人(レーベル?)のYoutubeチャンネルには13万もの登録があるので欧州のギター改造オタク文脈では有名人なのかもしれません。
紹介した曲("TUBI INNOCENTI")は改造ギターをつかい変拍子で三味線の曲をプログレッシヴにカバーしてみたよ!みたいな変な曲です。
(この曲のYoutubeも必聴です。「とにかくマトモな事はしないぜ!」感に溢れてます。ギター上手いのですが)



かまやつひろし「我が良き友よ」1975 Japan


 "ゴロワーズを吸ったことがあるかい"
生音系のDJイベントにいっていた中年世代なら必ず聞いた事があるだろうムッシュかまやつの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」。バックはTower Of Power。
A面の曲の「下駄、手拭さげて」の世界感に相当の抵抗感があり交換条件として好きにつくった曲だそう。
「和モノ・レアグルーブ」の定番といわれたこの曲のようなものもラテンの宴ではよく鳴ってます。



Blossom Dearie「Blossom Dearie」1957 USA

 "THOU SWELL"
フランスでジャズコーラスグループ「ブルー・スターズ」(ミシエル・ルグランの姉、クリスチャンヌ・ルグランも参加)で活躍した後にアメリカに戻り録音した一枚。自身のキャリア最初期の録音。彼女の大きな魅力であるキュートな声とピアノで弾き語られる最高にラウンジーな一枚からジャズ・スタンダートなこの曲を。
ラテンの宴のテーマとして「大人はどう遊ぶ?」という事も一つ持っているので、DJとしてもこの手の音もかけるようにしてます。(カクテル・ピアノ聴きながらスシ・ニホンシュで楽しめるって日本からしか発生しえない!)



Mark Murphy 「In the MidnightMood」 1967 Germany



 "SCONSOLATO"
アメリカのジャズボーカリスト、マーク・マーフィーがドイツのSABAに残した男気ジャズ・ボーカルの名盤。
バックはケニー・クラークとフランシー・ボランを双頭リーダーとするフランシー・ボラン・オールスターズ。
当時の欧州最強楽団。(多分喧嘩も最強。あの風体だし…)
このアルバムはもちろん、マーク・マーフィー自体が「DJがジャズをかける」文化で再評価され、一番恩恵をうけたアーティストかもしれない。

ダンスフロアーでジャズを聞いた覚えがある人なら無意識的に聴いているのでは?といえるほどクラブジャズ以降では定番の人
彼のほかのアルバムでブラジリアン・フュージョン・グループ VIVA Brazilと競演した盤もクラブ・クラシックで名盤。

取り上げた曲、"SCONSOLATO"はイタリア語(?)で"侘しい"とかいうような意味らしい。非常に抑制の利いた演奏で、静かにチャチャチャ的なリズムに訥々と歌うダンディー極まりない曲。
他にもジャズ・ショーの静寂の開幕から、スイング感・幸福感を6速トップまで一気に持ってゆくような "Jump for Joy"やチンピラダンサーが嬉々として踊っていそうな光景が目に浮かぶジャズダンサー"Why and How"や"Just Give Me Time"と名曲揃い。


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