20211218 ラテンの宴(エン) レコード紹介テーマ「ウソとエロ」
横浜元町の"Gallery + Sushi あまね"で毎月開催している音楽ラウンジ「ラテンの宴(エン)」そこではDJの時間とは別に、テーマを決めて音楽紹介も実施。
今回のレコード紹介のテーマは「ウソとエロ」です。
全然ブルースじゃないのにブルースといっていたり、全然マンボじゃないのにマンボとついていたり、とにかくなんかエロい、エロの業の深さを感じる…そんな音源を紹介。
左とん平/ とん平のヘイ・ユー・ブルース (1973 Japan)
「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」。
日本の俳優・左とん平の歌手デビューシングルである。
バックはアレンジ:深町純、プロデユース:ミッキー・カーティスと豪華布陣。
団塊の世代、集団就職した人たちがフト後ろを振り返ったときに感じる侘しさ、悲しさ、この世のやるせなさを、スリコギをメタファーとして語りかける、ある年代には傷に塩を塗りこまれるくらい効いてしまう人生訓ジャズジャズファンク歌謡曲。昔からDJシーンでは有名な曲。
芸人のカンニングが2004年にカバー (?というか竹山が切れ散らかしてるだけ) したバージョンも最高。
これはブルースか?
ブルースだ!と答えるのはウソだろう。
でも、団塊の世代が日常性に埋もれ、自分を見失っちまった悲哀を歌っているのはやはりブルースかも知れない…
この曲をかけていると近所の犬が異様に吠え出す
「俺をスリコギにしちまった奴は誰だ!誰なんだ!ワン!」
そうか、お前も…
ゴールデン・ハーフ / マンボ・バカン (1974 JAPAN)
全員がハーフの女性アイドル・グループ、ゴールデン・ハーフによる軽快な歌謡ラテン・グルーヴ名曲「マンボ・バカン」。
よく「まんぼばか」の由来はこの曲ですか?ときかれますが違います。
(キレイな女の子に「お前はラテンレコードばっかりかってるキ○ガイだな。お前は今日から"まんぼばか"だ!」といわれ、「御意!仰せの通りに!」と返答したのがキッカケです)
この曲がマンボかといわれると…、マンボじゃねーし…と答えるしかない出来です。まあグルーヴィなラテン歌謡とはいえるでしょうが。
マンボじゃないマンボ、つまりウソです。
石黒 ケイ / 「Yokohama Ragtime」(1982 Japan)
今ではシティーポップの定番となってしまった感のある一枚。
横浜をテーマにした一枚。
横浜といっても、横浜在住(海の方)の人とそれ以外の人では僅かに認識のズレがあるような感じがしていて。
横浜在住(海の方)の人の思い浮かべる横浜って、横浜駅周辺やみなとみらい周辺では決してなく、関内~伊勢佐木町~福富~野毛、元町~中華街、本牧あたりの複数の場所をなんとなく横浜とまとめているような感じがします。
すくなくとも横浜駅周辺を横浜といってる人はいないんじゃないかな?
そんな意味での「横浜」をテーマにした一枚。
「横浜ホンキートンク・ブルース」なんて名曲もカバーしてる。
今回のテーマは「ウソとエロ」なので、テーマに沿った曲という「banana」
ラテンパーカスも鳴る快速調でシティーポップ直前の音でフューチャー・ファンク好きな若人にも引っかかるのでは?と。(保障はしませんが)
思わせぶりな歌詞に「バナナって何なん?何のこといってるん?」とニワカに興奮してしまう思わせブリな「スン止め」エロ曲です。
佐藤ななこ / SWEET SWINGIN'(1977 Japan)
もうジャケからオジサンたちの心をワシつかみにされてしまいます。
一枚全部最高なんですが、ラテンの宴ではA1の「グッド・タイム・スウィンギン (Good times swingin')」とかよくかけてました。
アコースティック・スイングな演奏に軽いハスキーボイスがのるこの曲は「週末の特別な時間の始まり」を宣言するのにぴったりの曲
Monica Lassen & The Sounds / La Jouissance = たわむれ (19?? Japan)
Path For Two
「モニカ・ラッセンはスウェーデンの性心理学者で、音楽による…」という大層な説明が書いてある。
ウソである。大ウソである。
こちとら、アホのように日本人ジャズの音源を聴いているのだぞ!
これ完全に日本のジャズマンが "やっつけのお仕事” でやった音やんけ!
(Discogsが作られる遥か前、そして日本人ジャズのガイド本がでる遥か前には、日本人ジャズの音源なんて二束三文だったのです。そして「どんなものがあるのか」という事すら全然判らなかったのです。ただただ、カビとホコリにまみれたレコードが詰まれ、それに突入しなけれはならなかったのです!)
自分みたいに訳わからないモノと格闘してきた人にはすぐわかるのです、
「これ、和ジャズのヤッツケ仕事のやつじゃん…」と。
「ベッドタイムを充実・豊かにさせるレコード」みたいな文句が書かれているけれども、内ジャケにはどうしようもないエロ小話みないな文が記載されているし、レコードは片面20分程度だから、そんな短い時間は逆に充実するベッドタイムには困らねーか?と。
シテル最中にはいろいろスルことがあるだろう!!!
(よい子のみんなは意味が判らなくていいからね)
と突っ込みどころ満載ながらも、幾つかの曲はラウンジミュージックとして傑出した曲があります。(ただし、任意のタイミングで「ああ~ん」とか喘ぎ声が入ります)
「Path For Two (二人の小道)」はボッサリズムに枯れた管の音が乗る非常によく出来たラウンジボッサかと(ただし喘ぎ声入り)
ちなみにこのコロムビアのエロシリーズ、「愛撫」「たわむれ」「恍惚/エクスタシー」と三部作出ていています。が、現在ではいずれも相当レアです。
んで、まんぼは3つコンプして(盤によっては2枚もっている)のですが、全然モてないので使う機会がありません…涙。
「エロレコードもっていてもモテナイぜ!」という真理をあなたに。
川原正美とエキゾティック・サウンズ / 恍惚/エクスタシー (1970 Japan)
上のモニカ・ラッセンの「エロ3部作」の3番目、川原正美とエキゾティック・サウンズ。
川原正美は日本のラテンパーカッション奏者で、本人名義の作品は少ないながらも様々な所に参加している。
本盤は本格的なラテンバンドの演奏の上に女性の嬌声が乗る構成。
…だから、片面20分程度のエロレコードって効果あるのかよ…と聞くたびにひとり胸のなかで突っ込んでしまいます…。
安田南 / Moritat (1978 Japan)
破天荒な人生を生きたといわれるジャズボーカリスト、安田南。
ボーカリストとしてのスケールの大きさ(初めて日本語でジャズスタンダードを歌える人間とも言われてという)、そのほか数々の伝説やエピソードは興味を持った各位調べてもらうとして、そんな彼女が「阿部定」について歌うという(阿部定事件も各位でしらべてね。昭和史の衝撃的なニュースです)物凄い、でも、必然かも?と思わせるテーマと歌い手の出会い。
安田南が阿部定について歌うこの曲、明るい曲調と相反する猟奇的な歌詞の対比に驚くが、作品としてはどうかときかれると「素晴しい!」といわざるを得ない気がする。
特異な才能・魅力(人間的にも女性的にも)を持っていた、そして少しだけ「世間の常識」というものが理解できなかった者同士のシンパシーを安田南は阿部定に感じていたのではないかな、と。
(こう思うのも後追い者の幻想か?大して考えずノリで歌ったのかもしれないし…)
エロスの奥深さよ…