踊らされてるの? 踊ってるの?

そこそこの年月ダンスフロアであそんできた。

(渋谷系やサバービア・スイートに価値観を育まれてきたってところから察して下さい。いい年齢のオッサンです)

そんなオッサンがフロアでガッツリ踊ってたり、クラブのバーカウンターでヒジテツを付きながらフロアを眺めていた感想です。

「ダンスミュージックといわれているが実は2種類あるんじゃない?」
音に溺れて受身的に受容するもの(受身的なモノ【A】)と
自発的に踊りに行かないと踊れないもの(自発的なモノ【B】)の二種類が、さ」

ここでの受身的・自発的という区分についてはどちらが上であるとか下であるとかを意味していない。「受身的」だから駄目、とか「自発的」だから良いという意識を意味して記述しているのではない。

ただ、単に「ダンスミュージック」という大枠のくくりだけでは隠れてしまうモノを浮かびあがらせるために使っている用語だ。

受身的な踊り【A】が適しているよ
⇒これはディスコ・ハウス・テクノ・ヒップホップ・レゲエ…等々をさしている。

強烈な低音が鳴って、1,3,5,7のオン・ビートに低音のアクセント(キック)がアサインされているダンスミュージック。ディスコ・ハウス・テクノなんかはその特徴的な低音を指して"四つ打ち"と呼ばれたりもしている。

自発的な踊り【B】な踊りが適しているよ
⇒これは例えばサルサなどのことをさしている。

強烈な低音のキックが無いので"自発的"に踊ろうとしない限り踊れない。
また"サマになる動き"をするためには少々の訓練が必要かも知れない。
ただ"強迫的な低音"が無いことは縛りが無いので、”自分から踊ろう”という志向の人(そうゆう志向の状態の時)には気持ちいい。
こうゆう状態のときには”強迫的低音”は邪魔ですらある。


もう一度書くが【A】【B】に優劣を付けるつもりはない。

ただ、ダンスミュージックのなかでも受容の仕方が違うものがあり、
それを明確に意識しているか?ということを言いたい。
(特にダンスミュージックを提供する役割を担っているDJにむけて)

自分は打ち込み系のイベントでも遊んでいたし、生音系の小箱でも遊んでいた。
そしてリズム的にメンドクサイ(訓練のない日本人には耳馴染みのないであろう)サルサやオールドラテンのレコードを集めている。
上の区分でいくと【A】でも【B】でも遊んでいた。

そんな境界を越えて遊んでいたときに見えてきたのが
「踊らされる、受動的に接する音楽」と「自ら動かないと踊れない、自発的に接しなければならない音楽」の区別があるのではないか?ということだった。

この区別を意識していないDJがブースに立つと、結構フロアーが壊滅的になる。
たとえば【B】のお客さんしかいない現場で【A】の音楽をかける。
より具体的に言うと、サルサ場で「ラテンだろ?」という浅い解釈でラテンハウスをかける。
恐らく盛り上がる雰囲気に持ってゆくことは難しいと思う。

(ただ、レッスンダンスをしている人の中には遊びを全部やってきて、たまたま今はこのシーンにいるよ、という猛者も少数いるので、そうゆう人たちが動きだすとフロアーが蠢きだす。ので、場違いな音をかけたからといって"絶対盛り上がらない"とは断言できない。ダンスフロアは"生き物"であるといわれるゆえんである)

反対に【A】のお客さんしかいないときに【B】の音楽をかける
より具体的に言うとハウスとかのビートを目当てに来ているお客さんにたいして
サルサやジャズのハードバップをかける。
まず間違いなくフロアから人が消え、バーカウンターに人があつまり「しばしご歓談を」状態になる。

ルールを知らなきゃ動けない音をルールなんか知りたくもない人に向かって提示しているのだから当然だ。

「ダンスミュージックには【A】と【B】があるよ、今のお客さんはこっちよりだな…」ということを知っているだけでも随分と処置の方向は変わってくるのではないかと思う。

自分がフロアで遊んでいて、またブースに立っていて思うことは
「人間慣れ親しんだリズム意外には反応しない」ということだ。

全く知らない現場とかにもフラリとはいってみて観察しているのだが、
上の「慣れてないリズムには興味をもたない」ってのは相当に強固な気がする。

DJのオニーチャンが「俺DJするから来てよ!是非来てよ!絶対きてよ!酒おごるから来てよ!」と強引に誘われたであろうギャル2,3人が、オニーチャンDJ開始後15分後ぐらいにはカウンターにだらしなく肘ついてスマホをっながめている、って風景を何万回も見てきた。

人間、慣れ親しんだリズムにしか反応しないのだ。

今フロアにいる人たちは「踊らされたい」のか?「踊りたい」のか?どっちだろうか。

それを把握した上で
「さてレコバックの中には何が入っていたっけ?」

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