Radioheadの話②
ぼくが高校2年の最後の日。3月の終わり。
母が夜、突然の痙攣を起こし、意識を失いました。
慌てた父と救急車を呼び、病院に運ばれ
集中治療室へ直行。
しばらくして宣告された母の病は
『脊髄小脳変性症』
というものでした。
原因は分からず、難病指定されているものでした。
治療法は、ありませんでした。
翌日になって母は意識を取り戻しましたが、
もう以前の母ではなく、数日すると一人息子であるぼくのことすら分からなくなっていました。
『お兄さん、だあれ?』
と言われたときは流石に泣きました。
実はこの時、ぼくにも異変が起きていました。
あれほど好きだった音楽が、何も聴けなくなっていたのです。
それまでどんなに好きだった曲を聴いても、以前の自分と今の自分があまりにもかけ離れていて、すごく遠くで鳴っている音楽に聞こえてしまうのです。
ぼくは困りました。
ぼくの癒しは音楽しかなかったからです。
話せる友達もいなかったし、
なぜか話してはいけないような気持ちになっていました。
そんなある時ふと、とんでもなく暗い音楽があった事を思い出しました。
そう、Radiohead『OK Computer』です。
まるでこの時を知っていたかのように、その音楽はぼくに染み込んでいきました。
(つづく)