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佐々木を見れば元気でる

今回の日刊かきあつめテーマは「#元気の出し方」だ。

元気を出したい時といえば、仕事で失敗してしまった時や人間関係がうまくいかない時など、「こんなはずじゃなかったのに」と将来が不安になって、落ち込んでいる時ではないだろうか。

そんな時は友人、特に学生時代の友人と話すことで元気をもらうようにしている。悩みを相談できなくてもいい。他愛もない話でもいい。彼らと話すことで元気だった時を思い出せるからだ。

しかし今のご時世、なかなか人に会いづらい。LINEや電話で話すことはできても、元気が出るまでには時間がかかる。もっと素早く、あの元気だった頃を思い出したい。

そんな時は佐々木に会いにいっている。彼に会うのは簡単だ、映画を見ればいい。『佐々木、イン、マイマイン』である。

俳優になるために上京したものの上手くいかず、無為な日々を過ごしていた悠二(藤原季節)は、高校の同級生・多田(遊屋慎太郎)と再会する。

多田と再会したことで、高校時代に絶対的な存在だった「佐々木」(細川岳)との日々を思い起こすようになる。そして舞台に出演することになった悠二はその舞台の内容と、佐々木と過ごした日々の記憶がリンクし始め、少しずつ前進していく。

そんなある日、悠二の携帯に佐々木から着信が入るのだが―。

佐々木はお調子者で、身体を張って盛り上げるのが得意。そのため男子には好かれるが、女子にはドン引きされるような奴だ。これだけならただのバカなのだが、家庭環境が複雑なこともあるせいか、時々急に芯を食ったことを言い出すカッコいい一面もある。
(そんな佐々木のキャラクターがよりわかる予告編もあるので、一応貼っておく)

「できるからやるんじゃない、できないからやるんだ」
「やりたいことやれよ、お前は大丈夫だから」

佐々木の言葉はそんなに大それたものではないが、佐々木が言っていることで何かパワーをもらえる気がする。


この映画は、俳優・細川岳の実在した友人をモチーフに、監督の内山 拓也が細川の話を聞いて「自分ごとに捉えられる」と感じて脚本から作ったそうだ。それだけ誰もが既視感のある人物の話なのだ。
その人物との思い出が、好感/不快によってこの映画の感想が異なってしまうとは思うが、それでも佐々木を見れば元気になれると思う。

誰しも大人になっていく過程で、将来の可能性を狭めていってしまう。だけど若い頃、学生の頃、自分の将来には無限の可能性が広がっていると思っていたではないか。色々なことが新鮮で、広がる世界に期待と高揚感を持っていたではないか。

しかしその反対に、将来は不安で恐ろしいものと考えることもできる。新しい世界が広がるたびに、怖くて虚無感に襲われる、と。

佐々木は登場人物の誰よりも、将来が不安なはずの人物だ。だからこそ彼はその将来に対する不安を一手引き受けてくれている存在だ。

バカでお調子者で、笑われる。不安なことの全てを引き受けることで、逆に友人たちに将来のポジティブな側面だけを見せようとしているのだと思う。

だから佐々木が発する言動を目の当たりにすることで、自分の中にあった、将来に対する期待感を引っ張り出し、鼓舞してくれるのだ。悠二と同じように。

元気を出したい時は、『佐々木、イン、マイマイン』を観て、佐々木に会ってみてはいかがだろうか。きっと、友人に会った時くらいの元気が出るはずだ。



文:真央
編集:彩音

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